ゾルディック家編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガタゴト
ガタゴト…
空は雲一つ無い快晴。 絶好のお出かけ日和だ。
青空の下。
黄色い観光バスが、山道を走って行く。
ワイワイと賑わうバスの中。
後ろから2列目の席で、紺色の髪がユラユラと揺られていた。
まさか
観光名所になっているとは…
拍子抜けもいいとこだ。
窓の外を眺めながら気になるのは、一番後ろの席に座る3人組。 明らかに、観光客ではない。
しかし、騒ぐわけでもなく、大人しくバスに揺られているので、そのままにしておく。
暫く走ると、見上げるほどの大きな扉が見えてきた。 バスは、その手前で停車した。
”黄泉への扉”とも言われているこの扉から向こうの山全てが、ゾルディック家の所有地だそうだ。
よって、観光が出来るのはここまで。
それを聞いた3人組は、守衛らしき男の人を引きずり出し、無理矢理鍵を奪い取った。
隣の小さな扉から、守衛さんの忠告も聞かず、中へ入って行ってしまった。
数分後。
中から男達の悲鳴が聞こえたと思ったら、扉が少し開き白骨となって帰ってきた。
パニックになる観光客は、急いでバスに乗り込んで行った。
「お客様~! 発車しますよ!」
『あ、行ってください
私、ここに用がありますので』
首を傾げながらも、ガイドさんもバスに乗り、発車して行った。
・
扉脇にある小さな守衛室。
テーブルには、今しがた煎れた暖かいお茶が置かれた。
カシスの前に座る、優しそうな中年の男性。 ゼブロと言い、ここの守衛をしている。
「嬉しいねェ
わざわざ訪ねてくれるなんて
あたしゃ、20年勤めてるけど、お嬢ちゃんが初めてだよ
友人としてここに来てくれたのはね」
『はぁ…』
ゼブロは、本当に嬉しそうに話した。
暗殺一家に訪れるのは、珍しいもの見たさな観光客か、さきほどの3人組のような連中だけ。
”来客”なんてものは、皆無に等しいのだろう。
カシスは、ゼブロに中へ入れてほしいと頼んだ。 しかし、ゼブロは中に入れることは出来ないと言った。
理由は、先程扉から覗かせた大きな獣の腕だ。 あれは、ゾルディック家の番犬。
家族以外の命令は絶対聞かないし、懐かない。
”侵入者は全員、噛み殺せ”
と言う、主からの命令を忠実に守っている。
だから、入れるわけにはいかない。
キルアの友達であれば尚のことだ。
その話を黙って聞いていたカシスは、冷静に疑問をぶつけた。
『ゼブロさん、あなたは何故無事なんですか?
鍵を持っているということは、中に入るんですよね?
でも、ミケは”侵入者は全員噛み殺せ”と命令されている
だけど、さっきあなたは、ミケは家族以外は絶対に懐かないと言った』
そう、矛盾が生じるのだ。
「…いいとこつくねぇ」
一口お茶を口に含むと、タネ明かしをするように、得意げな顔をした。
鍵は正門横にある侵入者用の扉の物。
そして正門には、鍵がついていないという。
「お察しの通り
ミケはこうも命令されています
”正門から入った者は、襲うな”
とね」
それを聞いて、カシスは納得をした。
――
―――
真ん前にそびえ立つ、威圧感すら覚えるほどの正門。
カシスは扉に両手を宛て、少し押してみる。
だか、扉は開くどころか動く気配すら見せない。
この扉…
「この門の正式名称は、”試しの門”」
『試しの門…?』
「1の扉は、片方2トンあります
この門さえ開けられないような輩は、ゾルディック家に入る資格無しってことです
残念ながら、お嬢さんの力では開けられませんよ」
『…と、いうことは。 コレを開けられれば、入っても良いってことですか?』
「開けられれば、の話しですがね」
ゼブロの言葉にニヤリと笑う。
「ちょ…お嬢さん!?」
カシスは扉に手を付き、扉を押し開けた。 ゆっくりと2の門が開いていく。
当然、その光景に驚愕するゼブロ。 まさか、こんな華奢な女の子が開けてしまうとは、夢にも思うまい。
そして2の扉が開くと、カシスはゼブロに振り向いた。
『ゼブロさん、色々とありがとうございました!』
ゼブロに向けた笑顔は、扉という鉄の塊によって遮られた。
「あの娘は、一体…」
・END・
12/1/27
16/4/22(修正)