ハンター試験編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最終試験。
クラピカも、何とか一勝し合格した。
『あとは、キルアとレオリオだね!』
「オレは楽勝だけど…」
「なんだよ…
オレだって、ここまで来たんだ
何が何でも合格したる!」
『その意気、その意気!』
試合は順当に進んだ。
第六試合のレオリオ対ボドロは、前の試合のダメージを見て、レオリオが延期を申し出た。
申し出が受け入れられ、先に第七試合を行うことになった。
第七試合。
キルアVSギタラクル
初めの合図で戦闘モードに入ったキルア。
だが、それに待ったを掛けたのは、対戦相手のギタラクルだった。
「久しぶりだね、キル」
「?」
知り合い…には見えない
キルアも不思議そうな顔してる…
ギタラクルは、頭に刺さった針を一本一本外していった。
すると顔がぐにゃりと歪み、全くの別人になってしまった。 いや、本来の姿に戻った、と言った方がいいだろう。
兄貴…
確かにそう呟いたキルアは、明らかに動揺していた。
キルアの兄・イルミは、キルアが家出した後、母親から心配だから、それとなく様子を見てくるように言われていたようだ。
だが、ハンター試験を受けに来たのは、仕事でハンターの資格が必要になったから。
キルアとは、偶然一緒になったのだという。
「奇遇だね
まさか、キルがハンターになりたいと思っていたなんてね」
「別に…なんとなく受けてみただけさ」
「…そうか、安心したよ
心置きなく忠告できる」
イルミからは、異様な威圧感を感じた。
この威圧感、オーラの原因をカシスは知っている。
不安が募る。
「お前は、ハンターに向かないよ
お前の天職は、殺し屋なんだから」
イルミはさらに続けた。
熱を持たない闇人形
自身は何も欲しがらず、何も望まない
唯一
喜びを抱くのは、人の死に触れた時
「お前は、親父とオレにそう育てられた
そんなお前が、何を求めてハンターになると?」
「…確かに…ハンターになりたいと思ってる訳じゃない
だけど…
オレにだって、欲しいものくらいある」
「ないね」
「ある!
今望んでることだってある!」
「ふーん
言ってごらん、何が望みか?」
そうイルミに問われると、キルアは俯いてしまった。
今までに、こんな風に兄に口答えをしたことなんて無かった。
それ故に、自分の望みを言ってしまってもいいのだろうか?
言ってしまったら、何かが壊れてしまうのではないか? 奪われてしまうのではないか?
キルアの中で、不安が渦巻いていく。
なかなか返事をしないキルアに、イルミは口を開いた。
・
「どうした?
本当は、望みなんて無いんだろ?」
「違う!
ゴンと…友達になりたい
カシスと…もっと一緒にいたい」
『キルア…』
人殺しは、もううんざりだ
2人と友達になって、普通に遊びたい
キルアが今望んでいる事は、ほんの些細な事。
望まなくても、自然となれることだ。
だが、暗殺一家に産まれたからには、そうはいかない。
一般常識ではないのだから。
だから、イルミは無理だと言った。 いずれ、2人を殺したくなる…と。
何故なら
キルアは、根っからの人殺しだから。
胸がチクリとした
前に、キルア自身が言っていたこと
暗殺一家に産まれたんだから、そうなんだと割り切っていた
でもキルアは、そんな運命に抗(アラガ)おうと、もがいて、苦しんで……
だけど、やっぱりソレからは逃れられなくて
でも…
でもね、キルア
私は知ってるよ?
キルアが、ただの闇人形じゃないってこと
キルアの優しい手も
私は知ってるから
イルミの話に我慢できなくなったのか、怒りが爆発したレオリオが、キルアに叫んだ。
お前らは、もうダチ同士だろ! と。
『キルア』
「…」
『私もゴンも、キルアのこと大好きだし、友達だと思ってる!』
「え? そうなの?」
「ったりめーだ! バカ!」
「そうか、まいったな…
よし、2人を殺そう」
そう言うと、イルミは手に針を持ち、カシスの方へ近づいて行った。
カシスも迎え撃とうと、戦闘体勢に入る。
『! クラピカ…レオリオ』
カシスを背に庇うように前に立ち塞がる2人。
イルミもそれには、攻撃の手を下した。 仕事の関係上、ハンターの資格が必要だったからだ。
ここで彼等を殺してしまっては、自動的に落ちてしまい、キルアが合格してしまう。 しかしそれは、カシスやゴンを殺しても同じ事だということにも気付いた。
イルミの出した答えは、合格してから2人を殺すこと。
「というわけでキル
オレと戦って勝たないと、2人を助けられないよ
友達のために、オレと戦えるかい?
できないね
何故なら
お前は、友達なんかより
今この場で、オレを倒せるか倒せないかの方が大事だから
そして
もう、お前の中で答えは出ている
”オレの力では、兄貴を倒せない”
”勝ち目のない敵とは、戦うな”
オレが口すっぱくして教えたよね?」
イルミからは、かなり強いオーラがキルアに向けられている。
そして手をキルアに伸ばし、条件を突き付けた。
少しでも動いたら、戦闘開始の合図とみなす。
2人の体が触れた瞬間も同じ。
止める方法は一つだけ。
「だが…忘れるな
お前がオレと戦わなければ、大事な2人が死ぬことになるよ」
徐々に近づくイルミの指先。
……キルア
あの力を、キルアはまだ知らない
例え知っていたとしても、キルアの出す答えはきっと……同じ
暗殺一家がどんなものかは知らない
でも
キルアの…あの表情でわかる
キルアは きっと…
そうなった時は
ぐっと覚悟を決めるカシス。
張り詰めた静寂の中、キルアの出した答えは…。
「………まいった
オレの……負けだよ…イルミ」
戦闘解除を選んだ。
ほっと一安心をするイルミ。 実は、キルアを試すために2人を殺すと嘘を言ったのだ。
本当かどうかは、わからないが…。
「でも、これではっきりした
お前に
友達をつくる資格は無い」
そのあとのキルアは、抜け殻のようだった。
まるで
闇人形のように。
レオリオやクラピカが話し掛けても、返事は愚か、目も合わせない。
カシスも同様。
壁に凭(モタ)れ、一点を見つめるキルアの隣に座った。
キルア
今 何を思っているの?
何を感じているの?
私には
何も わからないよ
だけど私は、この2人の戦いを本当の意味で理解していなかったことに、この時初めて気付いた。
・
ポタポタと滴り落ちる赤い雫。
ゆっくりと倒れ込むボドロの体。
その背後には
隣にいたはずのキルアが、赤く染まっていた。
………え…?
一瞬の出来事だった。
キルアの鋭い爪が、ボドロの胸を背後から貫いていた。
会場中に、驚愕の渦が巻いた。
誰一人、声を発せられず、出て行くキルアを呼び止める者はいなかった。
カシスも一瞬の事に、何が起きたのか直ぐには理解できなかった。
無言で横を通って行くキルアに、声を掛けることも出来ないほどに。
『……っ!』
関を切ったように、カシスは走り出した。
後ろから、自分を呼ぶクラピカの声にも振り返る余裕はなかった。
勢い良く扉を開け、キルアの後を追った。
行先は明白だった。
廊下に続く赤い点。
まるで、道標の様に。
『…キルアっ!』
カシスの呼ぶ声に、キルアの足は止まった。
追い付いたカシスは、少し息を整えた。
『キルア…』
キルアは、振り向かない。
追いかけてきたのはいいが、掛ける言葉が見つからない。
何を言えばいい?
何て言葉を掛けてあげたらいい?
今のキルアの心情も分からない私が、何を言おうというのか
安っぽい慰めの言葉なんか、いらない
私は…
無力だ
この空気に似つかわしくない、柔らかな風が頬を撫でていく。
すると、キルアがくるりとこちらを向いた。
ビクリと肩を揺らすカシスを、ぐっと抱きしめた。
『!!?』
ぎゅっと、抱きしめる腕が痛いほど強くなる。
強くなるにつれ、不安が募っていく。
『キ…ルア……?』
「 」
耳元で囁くと、静かに離れていくキルア。
カシスは目を丸くして、その場から動けずにいた。
離れて行く小さな背中。
声も出せず
そのまま膝を付き、座り込んでしまった。
……キルア…
彼が残した言葉が、酷く胸に刺さった。
「…ごめん」
・END・
12/1/9
16/3/30(修正)