ハンター試験編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
小鳥の囀(サエズ)りに目を覚ました。
夜は明け、温かな光が入り口から差し込んでいた。
「おはよ。 やっとお目覚めか?」
『キルア…おはよ』
顔を向けると、既に目覚めていたキルアと目が合った。
そして、徐々に覚醒してきた頭が、疑問を出した。
…やっと?
少し前に起きたのなら、”やっと”という表現はおかしい
だとしたら…
『キルア、いつ起きたの?』
「え? んー…多分、一時間くらい前かな~」
『その一時間、何やってたの?』
「決まってんじゃん! カシスの寝顔観察
退屈せずに済んだぜ?」
『なっ………この、変態! 普通は、起すでしょうが!!』
「別にいいじゃん、オレとお前の仲だろ?」
『”親しき仲にも礼儀あり”って言葉、知らないわけ?』
「しょうがねーじゃん
あんまりのマヌケ面で、起すの勿体なくってさ♪」
いつもの調子で言うキルアに呆れたカシスは、キルアを置いて、顔を洗いに大木からズカズカと出て行ってしまった。
すると、キルアからは小さな溜息が漏れた。
「…起こせるわけねーじゃん
あんだけ、気持ち良さそうに寝られたらさ」
毒づくも、その口元は嬉しさを噛締めたように笑っていた。
――
―――
―――――
只今をもちまして、第四次試験は終了となります。
受験生の皆さん。
速やかに、スタート地点へお戻りください。
アナウンスが島中に響き渡り、6点分のプレートを集めた受験生達が集まってきた。
合格は10名。
内、ルーキーが7名。
本当に
今年は豊作の年。
最終試験会場には、また飛行船に乗って移動となる。
着くまでの間は、各自自由時間となった。
通路を歩く4人に対し、遅れてついて行く影が一つ。
はぁ…
コレって、もしかしなくても
アレだよね……
なんで、このタイミングなのよ~…
トボトボと歩くカシスに気付いたゴンは、心配そうに声を掛けた。
「カシス大丈夫?
顔色悪いよ?」
「ホントだ
具合悪いなら、早く言えよな~」
その会話に、更に前を歩いていた2人も後ろを振り返る。
「具合が悪いなら、少し休んでおいた方がいい
直に最終試験が始まるからな」
「ちょっと見せてみろよ」
『だ、大丈夫だよ!
少し休めば良くなるし、気にしないで?』
青白い顔で言われても、説得力の欠片もない。
すると、カシスは徐(オモムロ)に右手で口元を覆った。
『…っ』
咄嗟(トッサ)にレオリオとクラピカを押し退け、どこかへ走って行ってしまった。
呆気にとられる男4人。
すると、医者であるレオリオが、真っ先にピンっときた。
「もしかして…ご懐妊か!?」
「そんなわけないだろ」
「わかんねーだろ! 四次試験で何か」
「だとしても、早過ぎる」
「マジになんなよ…冗談だ」
「四次試験は、キルアとずっと一緒だったよね、カシス」
皆、キルアを見やる。
「まさか…お前」
「オレ、そこまで手ェ出してないけど」
「…」
「おまっ…そこまでってことは、どこまで手ェ出したんだよ!
このエロガキが!」
「いいじゃん、別に
それより、様子見に行かなくてもいいわけ?」
「そうだよレオリオ!」
ゴンに押されるまま、レオリオはカシスの後を追って行った。
残された2人は、というと…。
「……」
「……」
珍しいツーショットと今の会話で、空気が重くなる。
その空気を更に重くしたのはキルアだ。
「気になる?」
「何がだ?」
「オレが、カシスに何したか」
挑発的な表情で見やるキルア。
それを、真っ直ぐに見つめ返すクラピカ。
「他人の行動にとやかく言うつもりも、聞くつもりもない」
「ふ~ん
の割には、さっき妙に反応してたよね
クラピカも案外、鈍感なんだな」
そう言うと、キルアも歩き出した。
何かを考え込むクラピカに、振り返るキルア。
「安心しなよ
キス以上は、何もしてないから」
再び歩いて行くキルアに、クラピカの表情は更に複雑になった。
なんだ
この胸のモヤは…
前にも、感じた事がある
別に、あの2人が特別親しい関係になったとしても、私には関係のない事
………
この感情を、私は知っている
だが、それに気づいてもいいのだろうか…
復讐者として生きてきたクラピカには、もしかしたら縁のない感情かもしれない。 むしろ、復讐の妨げになることも。
受け入れてもいいものなのか。
戸惑う気持ちは、復讐者故なのかもしれない。
クラピカも後を追いかけると、野郎共は受験生の集まる部屋にいた。
「カシスはどうだ?」
「それがよ
大丈夫だ! の一点張りでよ」
暫く様子を見るしかないようだ。
――
―――
各々時間を潰していると、出入口からカシスが顔を出し、小声でレオリオを呼んだ。
「お、具合はどうだ?」
『…レオリオ
ちょっと、お願いがあるんだけど…』
少し恥じらうように尋ねるカシスに、レオリオは耳を傾ける。
何やら耳打ちしているようだ。
それを、遠目で見つめる3人。
「そういう事か
それじゃあ、言いづらいわけだ
ちょっと待ってろ」
レオリオは、鞄の中の薬を確認しながら何かを探しているようだ。
「お、あったぜ!
これなら効くはずだ」
『ありがとう! レオリオ!』
薬を受け取り、カシスはまた部屋を出て行った。
その様子を見ていた3人は、レオリオに訪ねた。
「レオリオ、カシスは大丈夫なの?」
「ああ、薬を渡したからな
暫くは大丈夫だろう」
「何故、今になって薬を?」
「ていうか、結局何だったんだよ
具合の悪い原因は」
次々に出る質問に、レオリオは落ち着くように言った。
「オレ達男には、一生かかっても分からねぇ事だ~ね」
「はぁ?」
「レオリオ」
「はぁ……アレだよ、アレ
女特有の毎月くる、アレだ」
「…あぁ」
「なるほど…」
「え? なに??」
そこまで言えば、ゴン以外は理解したようだ。
一方。
隣にも同じ様な部屋があり、そこにカシスの姿はあった。
窓際でタオルを枕にし、横になっていた。
『ぅ~……』
「カシス」
呻き声を上げていると、クラピカに声を掛けられた。
「大丈夫か?」
『…に見える?』
「そうだな、すまない
カシス、こちらに背を向けて寝てくれるか?」
そう言われ、疑問に思いつつも素直に背中を向けた。
クラピカは向けられたカシスの腰を、摩ったり指圧したりした。
「こうすると、多少は痛みを緩和できると本で読んだ事があるんだ」
『はは…何の本を読んでたのよ
…って、なんで知ってるの?!』
と聞くカシスに、申し訳なさそうにレオリオから聞いた事を伝えた。
カシスの怒りは、無論レオリオに向けられる。
暖かい日差しが差し込む中、穏やかな時間が流れた。
暫くクラピカの世話になっていると、眠気は自然と襲ってくる。
『クラピカ…上手だね』
「そうか?」
『うん、瞼が重たくなってきた』
「少し寝るといい
着いたら起そう」
『うん…ありがとぅ……』
「カシス?
…寝てしまったか」
薬の副作用もあり、眠りについたカシス。 その寝顔を、じっと見つめた。
顔にかかった髪を耳に掛けてやる。
”キス以上は、何もしてないから”
ふと、キルアの言葉が頭に浮かんだ。
自分が思っている以上に、カシスのことを気にしていたようだ
それを、今になって気付かされるとは…
だが、キルアの言葉や行動を掻き消す事も出来ない。
安心して眠っているカシス。
「…」
それは
突発的な行動。
つい、体が動いてしまった。
そっと
眠っている彼女に
口付けをしてしまった。
扉の影から
見られているとも知らずに…。
・END・
11/12/18
16/2/22(修正)