Seesaw
ふぅ、と深呼吸をしてコンコンと小さくノックをする。
「…誰?」
「っ、ヒョン、」
「………。」
「あの、入ってもいいですか?」
「………。」
返事無し、か。
そうだよね。もう、迷惑だよね。
もしかして、なんて期待していた自分が馬鹿みたいで、とても惨めで、未練がましくて嫌になった。
ごめんね、ヒョン。
あぁ、ジニヒョンにも謝らなくちゃ。
せっかく作ってくれたのに、渡せなくてごめんねって。意気地無しでごめんねって。そんな事を思いながら、涙で歪んでいく視界の中、くるりと背を向けた瞬間、カチャリとドアが開く音がした。
「っ!」
ばっと振り返ると、少し目の腫れたユンギヒョンが俺を見つめていた。小さい声で入れば?と言われて、俺も小さく頷いて部屋に入り、テーブルにコップを置いた。
「…んで。」
「…え?」
「せっかく、お前から離れる決心着いたのに、なんでまた俺の決心を揺らがせるような事をする訳?」
「ヒョン…?」
「一緒に居ても喧嘩ばっかりするなら、もういっその事離れて、それでお前がジョングクと幸せに笑ってるならそれでいいって。そう言い聞かせてたのに、なのに、なんで。」
「ヒョン。」
「俺達は顔を合わせれば喧嘩ばかりして、なのに、ジョングクとは笑いあっていてさ。
どっちといたら幸せかなんて、お前が1番分かってるだろ?テヒョンア。」
「…うん、分かってるよ。」
「……なら、早くあいつの所に「だから俺はユンギヒョンと居たい。」…え?」
「名前を呼ばれるだけで、嬉しくなったり、目が合うだけでドキドキしたり、同じ空間に居るだけで安心したり、わがまま言えるのも全部ユンギヒョンだけだもん。
キスだって、それ以上だってユンギヒョンじゃないと嫌だもん。
ユンギヒョンが、居ないと、嫌だよ。」
「っ、テヒョンア。」
「だから、俺から離れないでよ…。
俺、ヒョンが居ないと、」
駄目なんだよ、そう言いかけた所でぎゅうっと大好きな香りに包まれた。
「…ヒョン?」
「また喧嘩して、お前を傷付けるかもしれない。作業が優先になってお前に寂しい思いをさせてしまうかもしれない。お前との時間だって忙しい時は作れるか分からない。そんな俺でもお前は必要としてくれるのか?」
「うん、傷付いても、寂しくて悲しくても、俺はそれ以上にヒョンの事愛してるから。俺はヒョンじゃないとダメだから。俺にはヒョンが必要なの。」
「…テヒョンア。」
「でも、もし、ヒョンがもう俺の事必要ないなら……悲しいけど、俺は、「無いわけないだろ」っ、」
「俺だって泣くぐらいお前のこと愛してんだよ。」
「っ、」
「なぁ、さっきの別れようって言葉取り消してもいい?」
「ふふ、取り消すも何も俺が認めてないから無効だよ?」
「ふは、生意気だな。」
「そんな俺も好きでしょう?」
「ああ、めちゃくちゃな。」
「っ!!
俺だって、めちゃくちゃ好きだもん。」
「うん、知ってる。」
「うー、意地悪。」
「そんな俺も?」
くそ、ニヤニヤしながら聞いてる。
「…大好きですよーだ。」
「ふ、可愛い。」
そう言って甘い甘いキスをされた。
久しぶりのキスで気持ちよくて、くちびるが離された時に、もっと、と強請ってしまったが最後。雄の目をしたユンギヒョンにベッドに押し倒され、深いキスをされた。
もう何度絶頂を迎えたか分からない。
朦朧となる意識の中、うっすらと目を開けると、興奮しながらも俺を愛おしそうに見つめるユンギヒョンが居た。
「ユンギヒョン、」
「…ん、?」
「大好き、」
「っ!くそ、、っふ、」
お腹にじんわりと温かいものが注がれているのを確認して俺は目を閉じた。ああ、起きたらエッチの時に俺だけが見れるユンギヒョンの雄の目も好きだって伝えなきゃ。そんな事を思いながら意識を飛ばした。
おまけ
「……は?今なんて?」
「え?だから、エッチする時のヒョンの獲物を捕らえた雄みたいな目が好きだなって。」
「…誘ってんの?」
「え?や、ちが、」
「…テヒョンア。」
「う、ずるい、」
「…いい?」
「優しくしてね?」
「もちろん。」
そう言って、離れていた分を埋めるかのようにお互い求めあった。
「あれ?ジニヒョン何してんの?」
「訳あって部屋に入れないんだ。」
「え?なんで?」
「あの、「テヒョニヒョンとユンギヒョンがイチャコラしてやがるんですよ。」」
「ああ、そういう事なんだ。
ってなんでグクが怒ってる訳?」
「だって、この肩幅野郎が下手にお節介しなきゃ今頃は俺がテヒョニヒョンとああなってるはずだったのに。」
「いや…それは、「それは無いだろ。」
(そんなにズバッと言っちゃうの!?)」
「はあ?」
「お前じゃなくて俺がなるんだよ。」
「あはは、ふざけるのは顔と身長だけにしてくださいよ。」
「あ?死にてぇのか?」
「あの、ジミナもグクも落ち着いて…?」
「あはは、落ち着いてますよヒョン。
俺はこんなやつと違って大人ですから?」
「は、年齢だけでしょう?
あと精神年齢も見た目も俺の方がずっと大人ですけど?」
「あーお前老けてるもんな。可哀想に。」
部屋に戻れない上に、2人の喧嘩に巻き込まれるソクジンであった。
fin.
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