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Seesaw


「ヒョン。」

「…。」

「本気で言ってるの?」

「…ああ。」

「ヒョンはそれでいいの?」

「うん。」

「もう俺はいらないの?」

「…。」俺にはお前が必要だ。

「もう俺の事好きじゃないの?」

「…。」めちゃくちゃ愛してる。


口を開くと本心が出てしまいそうで、最後は無言でテヒョンを見ることしか出来なかった。これ以上辛い表情をしているテヒョンを見るのが辛くて、掴まれていた腕をそっと離して、テヒョンに背を向け「今までありがとな。」そう言って部屋から出る。

終わったはずなのに、もやもやは晴れず作業もする気にならず、自分の部屋のベッドに寝転んだ。


目を閉じると浮かんでくるのは、楽しそうに笑うテヒョンばかりで、そんなテヒョンを思い浮かべながら涙が出てきそうになる。自分から終わらせたくせに。まだ未練が残っている自分を嘲笑うようにはは、と乾いた笑いが誰もいない部屋にやけに響いた。


「めちゃくちゃ好きだったな…」


そう呟いた俺の目から一筋の涙が零れ落ちた。


******


「今までありがとな。」


そう言ってパタンと音を立ててドアの向こうに消えていく背中を見つめた。
終わっちゃったの?俺達。
堪えていた涙がひとつふたつと零れ落ちた。


『テヒョンア』


昔のように優しく名前を呼んだヒョン。


『色々ごめんな。』


そう言って俺の頭を撫でてくれた温かくて大きな手。


『別れよう。』


辛そうな俺を見て、自分の方が辛いかのような表情でそう言ったヒョン。


その全てが好きだった。
本当に大好きだった。

行って欲しくなくて、引き止めて見たけれど、どうにも出来ず離れていた背中を見送ることしか出来なかった。ただ、ヒョン、一つだけ教えてほしいことがあるんです。


どうして、俺はもう必要ないって、もう俺の事は愛してないって、言葉で言わなかったんですか。
どうして、俺が好きだった優しい声で名前を呼んだんですか。
どうして、名残惜しそうに俺の頭を撫でたんですか。
どうして、辛そうな顔をしてたんですか。


どんなに考えても都合のいい答えしか浮かばず、ちょっと落ち着こうとリビングへ足を向けた。




リビングのドアを開けると、ジニヒョンが1人でバタバタと慌てた様子で、氷やらなんやらを準備していた。


「ヒョンどうしたんですか?」


「ああ!テヒョンア!ちょうど良かった!
お前にならあいつも話してくれるかも。」


「え?」


次の言葉を聞いて俺は固まった。



「ユンギが泣いててさ、」


「っ、」


「理由聞いても出ていって下さいってしか言わないんだよ?あいつ!全く!!僕の方がヒョンなのに!!って、怒ってる場合じゃなかった。」


「…ヒョンが泣いてたんですか。」


「そうそう。
あいつ滅多に泣かないから、本当に驚いちゃってさ。テヒョンアは理由知ってる?」


「知ってる、かもしれません。」


ねえ、ヒョン。
俺、期待していいの?


「なんでそんな曖昧なの?
ま、いっか。テヒョンアが行けばあいつも落ち着くだろうから。はい。」


「…え?」


「ふたり分作っといたから、
話しておいで?」


「ヒョン……もしかして、」


「さーてと!面倒臭いのはテヒョンアに押し付けちゃったから、僕は夕飯の買い物にでもジョングク連れていこうかな〜!」



そう言ってリビングから出ていったヒョン。多分、全部お見通しなんだろう。受け取ったマグカップをぎゅうっと握り、自分の部屋とは違う部屋へと足を運んだ。
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