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Seesaw



あれからお互い気を使ってテヒョンは忙しい時はそっとしてくれるし、俺はちょっと時間出来たらテヒョンと出かけたりするようにしていた。

おかげで喧嘩もなくうまくやっていっていた。

そのはずなのに、また最近になって些細な口喧嘩が増え、お互いに不満が増すばかりだった。




今日も俺が作業しているのをいつもの様に後ろから見ていたテヒョンがねえ、と声をかけてくる。




「もう作業して3時間経つよ?」

「はぁ、しょうがねえだろ?」

「休憩がてら出掛けない?」

「あいつとでも行けば?」

「あいつ?」

「ジョングク。
また最近一緒にいるだろ?」

「それは!ヒョンが!」

「俺が構ってやれないから?」

「っ、」

「はぁ、そうだよな。
ジョングクならお前の事うんと甘やかしてくれるんだろうな。ジョングクなら嫌な顔せずにお前のわがままに付き合ってくれるんだろうな。」

「っ、なにそれ。」

「もういいよ、早くあいつのとこ行けば?」

「なっ、俺の事嫌いになったの、」

「はぁ、今は話しても無駄だテヒョンア。」

「ヒョン!」

「頼むから出ていってくれ、、」

「~っ!」


バタンと閉まるドアの音。
はぁ、と今日だけで何度目か分からないため息をつく。

最近口を開けば喧嘩ばかり。
愛の重さを伝えて微笑みあっていたのに
今はどっちの愛が重いかを競って喧嘩をするようになった。


まるで幼い頃に兄と近くの公園でよく遊んでいたシーソーみたいだなと鼻で笑う。

目を閉じて懐かしい記憶を呼び起こした。


「ねえ、ヒョン。
シーソーって楽しいけどさ終わりがないよね。」

「はは、そうか?」

「だって滑り台は滑ったら終わり。
ジャングルジムも登ったら終わり。
でもシーソーは終わりがないよ。」

「簡単だよ。」


『どっちかが降りたらそれで終わりだよ。』


そこから何を話したかは思い出せない。

閉じていた目を開く。


「どっちかが降りたらそれで終わり。か、」


俺とテヒョンもそうなのだろうか。

そんなことを思いながら再び作業を再開した。



それからは毎日と言ってもいいほど、うんざりするような口喧嘩を繰り返しているうちに、俺達は段々と距離ができていった。

そして今では言葉を交わすことさえしなくなった。楽しそうにジョングクと話すテヒョンを後ろから眺めている俺。その光景が当たり前すぎてもう嫉妬すらしなくなった。



「俺の方が好きだ。」

「いや俺の方が好きだもん。」


初めのような楽しさがないのなら


「ヒョン〜!」

「テヒョンア。」


あの甘くて優しい空間がないのなら


「ん、ヒョ、愛し、てるっ、」

「ん、俺、もっ、」


大好きだった幸せな時間が無いのなら


お互いを傷つけ合うだけなら


お互いを思う気持ちがないのなら


もうこの関係は危険だ。


それなら、

それなら、もう。


ちゃんと終わらせた方がいいんじゃないか?

なあ、テヒョンア。


作業室から出てゆっくりとある場所へと向かう。ある扉の前で足を止め、目の前のドアをノックすると、簡単に開いた扉。


「グク?忘れも、の」


まさか俺だとは思わなかったのだろう。驚いて固まっているテヒョンを無視して、閉め出されていまう前に部屋に入る。


「テヒョンア。」

「………何。」


くるりと振り向くと、あの時のように不安そうな目をして俺を見つめるテヒョン。

「こうやって話すのも久しぶりだな。」

「…そうだね。」

「お前がずっと俺の事避けるからさ。」

そう言うと目をそらすテヒョン。
今ぐらいは俺を見て欲しくて、自分でもびっくりするぐらい優しい声で名前を呼ぶ。

「テヒョンア。」

「っ、」

「色々ごめんな。」


俺の言葉にブンブンと横に首を降る。
俺より背が高いくせに、今は小さく見えるテヒョンの頭をポンポンと撫でた。
こいつのふわふわの髪の感触を覚えるかのように、いつもより長めに撫でる。


ゆっくりと深呼吸をして
愛おしい名前を口にする。


「なあ、テヒョンア。」

「…。」


不安そうな目をして俺を見るテヒョン。
もう一度小さく深呼吸をして
俺は先にこのシーソーから降りた。




「俺ら、別れよう。」
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