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交わらない視線





『愛してたよ…』

あれから1週間も経っているというのに、
そう呟いたテヒョンの声が耳から離れずにいる。

あの時俺がお前にちゃんと愛を伝えてたら
お前の気持ちに気づけてたら
お前のあとを追いかけていたなら
もっと違う未来が待っていたのだろうか。

2人が一緒に居るのを見るのが辛くて、ろくに食事もせず自分の部屋に閉じこもることが増えた。ナムジュニヒョンやソクジニヒョン、ホソギヒョン、グクが心配してご飯を持って訪ねてくることはあったけど、食欲ないからとだけ返事をして、そのままベットに潜り込んだ。


今日もまたいつもの様に部屋に戻り、ベットに寝転んでいると、コンコンとノック音が聞こえてきた。順番的にナムシュニヒョンだろうか。はい。と短く返事をする。


「……俺。」


聞こえるか聞こえないかで言ったであろうその声が俺の耳に届くのに時間はかからなかった。急いでドアを開けると、薄らと泣いた跡があるテヒョンが立っていた。聞きたいことは沢山あったけど、とりあえず中に招き入れ2人でベットに腰をかけた。


「テヒョンア、何かあったの?」

「ふふ、お前相変わらずだね。」

「え?」

「俺の心配より自分の心配して?
もう何日ご飯食べてないの?」

「…あ、」

「好きなの買ってきたから、食べて?」

「ん、ありがと、」

テヒョンが自分の部屋に居る事に安心したのか何なのかは分からないけど、いきなり食欲が湧いて、テヒョンが買ってきてくれたものを物凄いスピードで口の中へ詰め込んだ。やっぱり俺はこいつがいないと駄目なんだな。そんなことを思っていると、俺の様子を嬉しそうに見ていたテヒョンがゆっくりと口を開いた。


「あのね、俺、振られちゃった。」

「……え?」


今、なんて?


「ユンギヒョン、さ、気付いてたって。」

「何、に?」


ドクドクと心臓が音を立てる。


「俺が、違う人を好きだって事に。」

「違う人を好きって言うよりは、
その人が特別すぎるって言った方が正しいのかな?」

「…は、?え、?」


正直夢だと思った。
こんなにうまい話がある訳が無い。
だって、そんな、事って。
慌てている俺を他所に話を続ける。

「ユンギヒョンの事も好きなのに、その人の存在が俺の中で大きすぎて、俺も食事が喉を通らなかった。」

「…え、?」


言われてみればテヒョンも少し痩せた気がする。
痩せた頬に手を当てると、ニッコリと微笑んだ。


「俺ね、お前のことが好きだよ。」

「…ほんと、に?」

「うん。本当に。お前はどう思ってる?」

「俺、は、」

「うん。」


…伝えていいのだろうか。
でももう後悔はしたくない。


「愛してるよ。テヒョンア。」


初めて本人に届けられた気持ちは、ちゃんと伝わったのだろうか。ゆっくりとテヒョンの顔を見ると、嬉しそうに微笑んでいた。

「俺も、愛してるよ。ジミナ。」

そう言ったテヒョンは俺が今までに見た中で1番綺麗だった。堪らず抱きしめると、勢いがよすぎてベットに倒れ込むテヒョン。

笑い合いながら交わった視線の中には、今まで1番幸せそうな笑みを浮かべている自分が映っていた。


fin.
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