砂糖
ふわふわと誰かに頭を撫でられているような気がして、薄らと目を開けるとユンギヒョンの姿が目に入った。
「…ユンギヒョン?」
「あ、悪ぃ。起こした?」
「ううん、どうかしたの?」
「それは俺のセリフ。」
「…え?」
「何かあった?」
訳が分からず、キョトンとしたままヒョンを見つめると、ゆっくりと片方の頬を撫でられる。
「泣いた跡がついてる。」
「…へ?」
撫でられた方の頬を同じように触ると、確かに少し湿っていた。でも泣いた記憶がなくて、何も言えず黙っていると、また頭を撫でられた。
「まぁ、言いたくないなら無理に言わなくてもいいと俺は思う。」
「でもお前はいつも1人で全部溜め込んでしまう癖があるから。」
「俺は、いつも心配してんだよ。」
お前は知らないかもしれないけど、と小さく呟いたヒョン。
「知ってるよ。」
「…ん?」
「ヒョンがいつも俺の事心配してくれてるの、ちゃんと知ってる。」
俺が舞台で少しミスをしてしまったら、必ず横にいてくれて、いつもは疲れて寝てるのに元気づけようとくだらない話をしてくるし、俺がそのまま疲れて眠った時も、ずっと頭を撫でてくれてたのも知ってる。
(ジンヒョンから聞いた)
ヒョンが忙しくてジミンに悩みを相談した時、こっそりと後からジミンに聞いてたのも知ってる。(ジミンから聞いた)
「知ってんなら心配させんな。」
「ヒョンにも相談したかったけど、作業の邪魔になるかなって思って言えなくて…
ごめんなさい。」
「…あのな、テヒョン。」
「ん?」
「まず俺がお前のことを邪魔って思う訳がないだろ?それに俺、ちょっと怒ってんだからな?」
「え?」
「悩み。俺じゃなくてジミナには言えるんだなって。気を使ってるんだろうなって分かっては居たけど、俺はお前の悩みの方が気になって作業どころじゃないしさ、だから次からはちゃんと些細な悩みでも俺に話すこと。いいな?」
「はあい。ふふ、ヒョンは本当に心配性なんだから。」
「まあ、そんな事思うのはお前だけだよ。」
「へへ。」
「…で?」
「…ん?」
「なんで泣いていたんだ?」
「それがね、」
「ん、」
「俺泣いた覚えないんだ。」
「……は?」
穏やかだったヒョンの顔が一瞬で真顔になる。
「…お前、それ大丈夫か?」
「なんで?」
「だって、泣いた記憶ないってどっか悪いんじゃねえの?」
「えー?」
「病院行くか?」
「いや大丈夫だよヒョン。」
「…や、でも」
と、ヒョンが何かを言いかけたところで、リビングのドアがバーンと開いた。
「それ自然現象で起こるやつだから!!!」
「…え、皆揃ってどうしたの。」
「どうしたもこうもないよ!!!
喉乾いて水取りに来たら、リビングで甘々な雰囲気醸し出されてるし、意味わかんない会話してるしで、入れなかったこっちの身にもなってよ!!!!」
早口でジニヒョンにそう告げられる。
「…自然現象なんですか?」
「僕も前調べた事があるんですよ。
そしたら、自然現象だから心配はいらないって書いてありました。」
「ジミナも涙が出てた時があるの?」
「…へ?俺?ないよ?」
「なんで調べたの?」
「まぁ、それは…いいんだよ。
(実は自分もテヒョンが心配だったとは言えない)
取り敢えず病院とか行かなくていいですから。ね?ユンギヒョン。」
「…心配して損した。」
「えぇ〜?ヒョン酷くない?」
「ふ、嘘だよ。
お前起きたしなんか食い行くか?」
「うん!パスタ食べたい!」
「ん、行くぞ。」
2人で手を繋いでリビングを出ていった。
「「「俺ら忘れられてない?」」」