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僕達の関係





「…ア、テヒョンア。」




誰かに名前を呼ばれ、薄らと目を開けるとジミンの顔が近くにあった。あまりの近さに驚いて一気に目が覚める。


「え!?なにっ?」


「ふふ、寝ぼけてんの?
もう、朝だよ?起きなきゃ。」


そう言われて少し視線を逸らすと、窓から明るい光が射し込んでいた。
やばい、寝坊した?準備をしないと、と急いで起き上がろうとした。
でも、あれ?今日は確か…


「…今日ってオフじゃないっけ?」


「うん、そーだよ。」


「…え?」



ジミンの行動の意味が分からず、キョトンとした顔で見つめる。



「テヒョンアと出かけようかなって思って。」


「…ジョングクじゃなくて?」


そう言うと、一瞬嫌そうな顔をしたかと思えば、すぐにいつもの笑顔に戻った。
その表情の変化に疑いを覚えたけど、特に気にすることでもないだろうと判断し、ジミンの言葉を待った。


「今日はお前と出掛けたい気分なんだよ〜。」



抱きつきながらそう言われた。好きな人からの誘いを断れるわけなくて、「分かったから、離れて。」そう言ってジミンから離れようとすると、逆に距離を詰められてニッコリと微笑まれる。


「っ、なに?」


「んーん。早く準備してね?」


そう言って俺のおでこにチュッと唇を寄せてから、部屋を出ていった。
え?何が起こったの?

「落ち着け、俺…
いつものスキンシップじゃんか…」

口ではそう言っても、未だにドキドキする心臓を落ち着かせる為、再びベットに倒れ込み胸に手を当てゆっくりと深呼吸する。


「あれ?また寝てんの?」



クスクスと笑いながら俺に近づいてくるジミナ。急いで起き上がる。


「あ、や、これは違くて…
それより、ジミナなんか忘れ物したの?」


「ん?ああ、そうそう。
俺の運転で行くから、急いで準備しなくても大丈夫だよって伝えるの忘れてて。」


「え、そうなの?」


「うん。ちょっと遠いところに行きたくて、いい?」


「う、うん!わかった!」


「じゃあ、また後で。」



焦ってて分かったなんて返事したけど、冷静に考えたらドライブデートって事だよね?え、どうしようどうしよう。二人っきりで?え?とりあえず急いで準備しなきゃ、と部屋を出た。


洗面所に駆け込むと、いつもならまだ寝ているはずのジョングクがいた。昨日あんな事があった後で、少し気まづいな、なんて思っていると、ジョングクが俺に気づいた。


「あれ?ヒョン出掛けんの?」


「う、うん。」


「…。」


じいっと見つめられる。


「な、何?」

「目、腫れてないみたいですね。」

そう言って俺の目元に触れる。
その手つきがあまりにも優しくて、なんだか恥ずかしくなって顔を逸らそうとすると、それを許さないかのように両手で顔を包まれた。


「あんまり心配させないでくださいね。」

「…っ、分かったから、手離して…」

「ふふ、照れてます?」

「…うるさい、」

「否定しないんですか?」

「〜っ、もう!
俺出掛ける準備しないといけないから、離して!」

「ふふ、はあい。」

やっと解放されたのと同時に、洗面所にジニヒョンが入ってきた。

「あ!グガいた!ちょっと来て!」

「えっ、ちょっ、」


そのままジニヒョンに連れていかれるジョングク。一体何が起きたの?
突然の状況に驚きながらも、やっと準備出来る。そう思い鏡の前に立つ。

「っ!」

鏡を見ると、何故か顔を真っ赤にした自分の姿が映っていた。

違う、違うんだ。何に対してそう思っているのかさえ分からず、ひたすら顔の熱を鎮めるために冷たい水で、顔を何度も洗った。



やっといつもの顔色に戻った所で部屋に戻り、服を着替える。そう言えばジミンにもらったネクタイを、大事にし過ぎてあまり使っていない事をふと思い出し、折角今日一緒に出掛けるなら、と身につけた。


コンコンとノックされ、「準備出来た?」と言いながら入ってきたジミナ。「出来たよ。」と返事をしてジミンの方を見ると、俺を見て固まっている。え?何かおかしいかな?



「……可愛すぎだろ、」


何かボソリと呟いたジミナ。


「ん?どうかした?」

「あ、いや、何でもないよ、行こう。」

「?うん、っえ、ちょ、ジミン?」

「なあに?」

「あの、手、」


いつの間にか繋がれていた手を離そうとすると、更にぎゅっと握られた。


「たまにはいいでしょ?」

「や、でも、」

「ほら行くよ〜。」


手を引かれながらリビングに行くと、ジョングクと鉢合わせた。視線は顔から繋がれている手へと移動する。なんだか居心地が悪くて、咄嗟に手を離そうとすると、そうはさせないかのように、ぎゅうっと握っているジミナ。


「…仲良しですね。」

「ふふ、でしょ?」


ここでふと疑問に思った。
ジミンはジョングクが好きなはずなのに、なんで俺と手を繋いでるのを見られても、何とも思わないんだろうか。俺だったら絶対に誤解されるから嫌なのに。そんなことを2人が話してる間に思っていると、話が終わったのか玄関へと進むジミンに引っ張られる。そのまま付いていこうとすると、「ヒョン。」と俺の空いている方の手を掴まれた。


「え?なに?」


「今日の夜部屋に行ってもいいですか?」


「…へ?」


「だめ?」


「ダメじゃないけど…」


「ふふ、楽しみにしてますね。」


そう耳元で囁いて、離れていった。
いきなり積極的になったジョングクにどう対処していいか分からず、戸惑っていると、ジミナから「テヒョンア。」と呼ばれ、ハッとした。


「…なんて言われたの?」


「あ、や、何でもないよ。」


「…そう?顔赤いけど、」


「あ、はは、気のせいだよ!いこいこ!」


誤魔化すようにしてジミナの腕を引っ張った。
そうだった。ジミナはジョングクが好きなのに、こんな事されたら気になるよね。嫌だよね。俺馬鹿じゃん。好きな人を傷付けてどうするんだよ。

ジミナにはいつも笑っていて欲しいのに。

そこで俺は自分の幸せよりも、ジミンの幸せを願っているんだと言うことに気がついた。ここで悩んでいた答えが全て出た気がした。それなら、俺がするべき事は。




ジョングクに嫌われる事だ、と。
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