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僕達の関係



「俺さ、ジョングクの事が好きみたい。」


お風呂から上がり、リビングに飲み物を取りに行くと何だか元気のなさそうなジミナがソファに座っているのが見えて、放っておけず隣に腰を下ろした。

「ああ、テヒョンア。」

いつもとは少し違う雰囲気が気になって、どうしたの?と尋ねれば、冒頭の台詞が聞こえるか聞こえないかの声で吐かれた。


ジミンがジョングクを好き?


ガツンと頭を殴られたかの様な衝撃を食らった。

いつもの冗談だと、そうであって欲しいと目の前のジミンの表情をちらりと盗み見するけど、いつもにも増して真剣な表情をする彼から、視線を逸らした。


本気、なんだね。


実は最近、薄々感じてはいたのだ。
もしかしたら、ジミンはジョングクの事が好きなのではないか、と。
出来れば俺の勘違いであって欲しいと願うけど、ジミンの事をよく知っている俺が、彼のことで見抜けないことは無いんだ。



だって、それだけ俺も見ていたんだ。

ジミンの事をずっと。


なんで俺が好きになった人は、いつも違う人を好きになってしまうんだろう。

1人で失恋モードに入り、返事をするのをすっかり忘れて固まっていると、少し不安そうに「…テヒョンア?」と、ジミナが俺の名前を呼ぶ声でハッとした。


「あ、ごめん。
ちょっと驚いちゃって。」


「だよね、びっくりしたよね。
でもさ、俺本当に好きみたい。」


「…そっか、」


「…引いた?」


「え?」


「だって、変じゃん?
男を好きになるなんて。」


「変じゃない。変じゃないよ。
人が人を好きになる事に変も何も無いよ。」



自分にも言い聞かせるようにそう呟く。

すると一瞬驚いた顔になり、すぐに嬉しそうに微笑んだ。


「っふ、テヒョンの癖にカッコいい事言うなよ〜。でも、ありがとね。
テヒョンアに聞いて貰えただけで、大分心が楽になったよ。」


「俺の癖にって、失礼なやつ!
…上手くいくといいね。」


「んふふ、うん。」


そう笑ったお前は輝いてた。




「あれ?ヒョン達何してるんですか?」


そこへちょうどジョングクがやってきた。



「へ!?べ、別に?ねえ?テヒョンア!」


「そうそう、ジミナが最近グクが構ってくれなくて寂しいって嘆いてただけだよ。」


「はぁ?何それ!言ってないし!
グクも気にしなくていいから!」


真っ赤になって否定してるジミナ。
そんなジミナに慣れているのか、気にしていないのか笑いながら俺の方を見てくるジョングク。


「じゃあ皆でゲームしません?
ほら、テヒョニヒョンがやってみたいって言ってたの買ってきたんですよ。」


「…あー、ごめんね。
俺今日はちょっと疲れちゃってて…
また今度誘って?」


そう言って部屋へ戻る。


ベッドに寝っ転がり、今頃2人で楽しんでるんだろうな、なんて考える。
ジミナの気持ちを知ってしまった今、
楽しくゲームなんて出来るわけがない。

はぁ、とため息をつく。

なんで、俺じゃないの。
なんで、あいつなの。
悔しくて、悲しくて、涙が溢れた。

1人で感傷的になっていると、コンコンと小さいノック音と、かちゃりと小さくドアが開く音がして、慌てて寝たふりをする。


「…ヒョン?」


俺のことをヒョンって呼ぶやつなんて、1人しかいないじゃないか。なぁジョングガ。
なんでお前が来たんだよ。
ジミンは?2人でゲームしてたんじゃないの?寝たフリをしながらそんなことを思っていると、ふわりと頭を撫でられた。


「…寝てんのか。……あれ、」


頭を撫でていた手が頬に触れられる。


なんで。

なんで、そんなに優しく触れるの。



「…俺を頼ってくれたらいいのに。」



なんでそんなに切なそうな声で話すの。

なんで、お前が泣きそうなの。













「好きだよ、ヒョン。」




なんで、キスしたの。





再びドアが閉まる音が聞こえて、ジョングクが部屋から出たことを確認してから、起き上がり溜息をつく。



「…やっぱり寝たふりだった。」


「え?」


出ていったはずのジョングクの声が聞こえ、反射的に返事をしてしまった。慌ててドアの方を見ると、ドアを背もたれにして腕を組んで俺の方を見ているジョングクがいた。


「なんで、」


「それはこっちのセリフ。
ジミニヒョンと何かあったの?」


そう言いながら、ゆっくりとこちらに近づいてくるジョングク。


「何も無いよ?」


「…嘘つき。」


「え、」


「知ってる?ヒョンって嘘をつくとき、絶対に相手の目を見ないんだ。」


「っ、」


「…まあ、どうせ教えてはくれないんでしょう?」


「…」


「…でもね、ヒョン。」


グイッと顎を上げられる。


「…俺、本気ですから。」


「本気でヒョンのこと好きですから。」


再び触れるだけのキスをされる。


「それだけは覚えてて。」


そう言って今度こそ本当に部屋を出ていった。


一気にいろんなことが起こり、どっと疲れが押し寄せてきて、もう一度ベットに頭を沈めた。


勘弁して欲しい。

俺はジミンが好きで、ジミンはジョングクが好き。そしてジョングクは俺が好き。
もう、どうすればいいのだろうか。


ジョングクの事が好きだと言ったジミンは、いつも以上に真剣な顔をしていた。
そして、その後にジョングクと話してるジミンは、本当に幸せそうな顔をしていた。
俺には見せたことのない笑顔で。
あんな顔に出来るのはきっと、ジョングクだけなんだ。


でも、俺を好きだと言ったジョングクは、今まで見てきた中で1番真剣な表情だった。ジミン程ではないけど、ジョングクだって俺の大事な弟だ。傷ついて欲しくないし、幸せになって欲しい。


俺は、出来ればジミンと幸せになりたい。
でもそうするとジョングクが傷ついてしまう。


誰も傷つけたくはないのに、そうはいかないんだろうか。


パンク寸前の俺の頭で考えても無駄だ。
今日はもう考えることをやめて、そのまま眠りについた。














「上手くいくといいね、か。
ふふ、純粋で可愛いテヒョンア。
本当の事に気付いちゃう前に、早く僕のものになってね。」


誰かに頭を撫でられた気がした。
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