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短編集

「ユンギヒョン!今日も作業室?」


「おう、今日も来るか?」


「え!いいの!?」


「好きにすれば。」


「やった!また後で連絡します!」


「おー。あ、アレクも一緒に持ってきてくんね?」


「アレクですね、わかりました!」



そんな会話を聞いてしまった。
ヒョン昨日は部屋に居るって言ってたよね?
しかも"アレ"って何?なんで2人だけが通じあってるわけ?なんてモヤモヤしながら、そんな俺とは正反対にルンルンしているヒョンの隣に腰を掛ける。



「最近ユンギヒョンと仲良いですね。」


「…そう?」


「昨日は部屋に居るって言ってたよね?」


「居たけど、ヒョンが来てって言ったから。」


「俺が呼んでも来ないくせに。」


「だってお前ただセックスしたいだけだろ?」


やけに棘のある言葉にイラッとした。
でもここで怒ってしまうと喧嘩になるだけだと、1度深呼吸をして口を開いた。



「好きな人とひとつになりたいのは当然じゃないですか。」


「まだ俺のこと好きで居てくれたんだ。」


「…どういう意味ですか。」


「ジミナの事が好きなのかと思ってたよ。」


「はぁ?俺、ヒョンと付き合ってるのに?」


「付き合ってる人と好きな人が必ず同じじゃなければならないなんて誰が決めたの?そもそも俺まだお前の恋人だったの?てっきり性処理の道具として扱われてるのかと思ってた。あ、それともジミナの事を大切にしすぎてまだ手を出してない感じ?だからその欲を俺で発散してるって事?」


「ねぇ、ヒョンは何が言いたいわけ。」


「俺にとってはユンギヒョンの方がお前よりよっぽど恋人みたいだよ。」


「はぁ?」


「俺のことを1番に考えてくれるし、俺の事を大切にしてくれる。常に優しいし、甘やかしてくれる。」


「なに、ユンギヒョンともヤったんですか?」


「…はは、いいねそれ。今日してみようか。
誰かさんと違ってユンギヒョンは作業の合間に俺の悩みを聞いてくれたり、眠れない時に抱き枕代わりになって一緒に眠ったりしてただけだから、まだ繋がったことは無かったんだよね。」


「え?」


「俺が悩んでた事も、眠れなかったのもお前は知らなかったろ?」


「そんなこと言わなかったじゃないですか。
ジミニヒョンなら、」


続きを言いかけて口を閉じた。



「うん、お前が好きなジミニヒョンなら可愛く素直に甘えてただろうね。残念ながら俺はジミニヒョンじゃないんだ。ごめんな。」


「ちが、」


「俺はユンギヒョンの所に行くから、お前はジミニヒョンにでも性処理してもらったら?」


「待って、」


そう言って歩き出したヒョンが立ち止まり俺の方を振り返った。


「ああ、そうだったね。
ごめん大事なこと伝えてなかった。」


「…やだ。」


「ジョングク、俺たち「聞きたくない。」別れ「黙って。」…。」


「…俺、別れませんから。」


「でも、俺は別れたから。」


「ふざけんのも大概にしてください。」


「うん、その言葉そのままおまえに返すよ。」



そう言って出て行こうとしたヒョン腕を掴んだ。するといつものヒョンからは想像出来ないような物凄い力で振りほどかれた。

そんなヒョンの行動に驚いていると、振り返り俺を映したその瞳は何故かすごく悲しそうな悲しそうだった。

そしてそのままなにも言うことも出来ず、部屋から出ていったヒョン。バタンと閉まったドアの音と共に俺たちの関係も本当に終わったかのような気がして、急いで自分もこの場所から飛び出そうとすると、丁度部屋に入ってこようとしていた人とぶつかり、その人の上に覆いかぶさるようにして倒れてしまった。
それだけなら良かったものの、あろう事か唇同士が触れてしまった。ジミニヒョンと。


「っん、」


「わ!ごめんなさい!」


その瞬間横から視線を感じた。まさかと思い顔を上げると、テヒョニヒョンが立っていた。ジミニヒョンも気付いたみたいで、急いで俺の下から離れテヒョニヒョンに近づいていった。


「あ、や、テヒョンア、これは事故で…」


「ふふ、なんで俺に言い訳すんの?」


「え、だって、誤解されたくないもん。」


「ふふ、俺ら別れたんだ。
だから誤解も何も無いよ?
それに、ジミナの事は嫌いにならないから安心して。」


「…え?」


「じゃあ俺行くね。」


そう言って俺の方は一切見ずに行ってしまった。そんなヒョンの背中を見つめている俺に「今のどういう事?」とジミニヒョンが声を掛けてきた。ジミニヒョン事"は"という事は俺の事はもう嫌いになったの?そう思うと一気に我慢していた涙が溢れてきた。


「え、ちょ、ジョングガ!?」


再び部屋に戻り、ジミニヒョン持ってきてくれた水を飲んで、少し落ち着いて来たところで、さっきあった出来事を途切れ途切れになりながらも話した。すると一言。


「お前、最悪だな。」


「っ、」


「てか、テヒョンアも頼るなら俺にすればいのに、そしたらすぐにでも抱いてやるのに…」


「…はい?」


「ああ、ごめん心の声漏れた。
でも急がないと本当にユンギヒョンに取られるぞ?多分ユンギヒョンは本気だから。」


「…どういう事ですか。」


「あの人がただの弟にそこまでする?
作業の邪魔をされるのが一番嫌いなのに、作業中に悩みを聞いてあげたり、この時期だとパジャマさえ暑苦しくて嫌がるのに抱き枕代わりになってあげたり。しないだろ?」


「確かに…」


「だからお前と別れたってテヒョンアから言われれば、さすがのユンギヒョンでも手を出す可能性はとても高いってわけだよ。」


「…。」


「それでもいいの?」


「…でも、テヒョニヒョンはそれを望んで「馬鹿野郎!!」え?」


「あいつがそれを望んでるならお前に黙ってユンギヒョンとしてるだろうし、それ以前にお前は振られてんだよ!いくら優しくされても身体まで許さなかったのは、お前のことをまだ好きだからだろ?

それにお前は目ぇついてんのか?さっきの俺らの光景を見たアイツの顔ちゃんと見たか?今にも泣き出しそうな顔を。

今頃どこかで誰かさんとの思い出に浸って、一人で泣いてるんじゃない?
あいつはお前じゃないとダメなんだよ。
だから、早く行ってやれ。」


「っ、行ってきます。」


俺はある場所に向かって走り出した。
俺たちの思い出の場所はあそこしかない。


はぁ、はぁ、と息を切らしながら辿り着いたのは俺がヒョンに想いを告げて、2人が結ばれた場所。

「…居た。」

息を整えながら愛おしい後ろ姿に一歩一歩歩み寄っていく。段々近づいていくにつれて、ヒョンの肩が上下に動いているのが分かった。
…もしかして泣いてるの?
そう分かった瞬間ヒョンを後ろから抱きしめた。喧嘩をしているだとか、嫌われているだとか、振られたなんて関係なしに勝手に体が動いた。


「っ!?グガ?」


「うん、」


「なんで、ここに、」


「ヒョンを迎えに。」


「な、に、俺ら別れたじゃん。」


「うん、だからもう1回告白しに来た。」


「…え?」


「俺はヒョンじゃないとダメなんです。
さっきも不意の事故でジミニヒョンと唇が重なったけど、ヒョンとするキスみたいにドキドキしなかった。俺がキスしたいのも抱きたいのも、ときめくのも傷付くのも、全部ヒョンだけなんだよ。もう、ヒョンは俺のことなんか好きじゃないかもしれない。だから、片思いでもいいから、ヒョンの事好きでいても良いですか?」



「……だめ。」


「っ、」


「好きだけじゃだめ。
愛してくれないとだめ。」


「っ!ヒョン、愛してます。
世界で1番誰よりもヒョンを愛してます。」


「ん、」


「ヒョンもう1回俺にチャンスをくれますか?」


「…次はないからね。」


「っはい、」


「あー、もうなんで泣くの。」


「嬉しくて…」


「ふふ、相変わらずだなぁ、」


そう言って笑うヒョンはとても幸せそうな顔をしていた。





「そう言えばユンギヒョンが言ってたアレクってなんですか?」


「あぁ、ブラックサンダーだよ。」


「…へ、?」


「ほら、あのチョコのお菓子。」


「なんでそれなんですか?」


「なんかブラックサンダーを必ずアレクサンダーって言うから、それを略してアレク。」


「紛らわしいですね。」


「ふふ、でしょ?
だからユンギヒョンかアレクって言ったら無条件でブラックサンダーあげてね。
そう言えば、俺持っていかなきゃだった。」


「…。」


「渡したらすぐお前の所に来るから!ね?」


「ん、待ってます。」


2人で宿舎に帰っている途中で泣き疲れたからコンビニでアイスでも買おうと思って入ったら、大きい袋に小分けで入ってるブラックサンダーかあって爆笑しながらユンギヒョンへのお土産として購入した。アイスを食べながら辺りも暗く人影もないため、手を繋いで宿舎に戻る。



袋入りのアレクをみて大興奮したユンギヒョンが居たのは言うまでもない。




fin.
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