短編集
夜遅く、静かに宿舎のドアを開ける。
流石にもうみんな眠って居るだろうと、音を立てないように靴を脱いで、リビングに入る。
「やっと帰ってきたか。」
なんで起きてるの。
早くここから離れないと。
そう思った頃には遅く、俺は既にソファの上に押し倒されていた。
「…ユンギ、ヒョン。」
「ふっ、怯えてんの?」
「…っ、」
「いいな、その顔。凄いそそる。」
そう笑ったかと思えば、唇を重ねられる。
「や、だ、退いて、ヒョン、」
「お前が俺を拒む権利なんて無いんだよ。」
そう言って、俺だけ服を全て脱がされた。
「やぁっ、ヒョン、」
「なぁ、なんで俺の言うこと守れねぇの?」
「他の男と会うなって言ってんのに、」
「しかも電話にも出ねえ。」
「俺を嫉妬させて、楽しいか?
テヒョンア。」
そう言いながら乳首を引っ掻かれる。
それだけで反応してしまう。
「あっ、違うっ、やめて、」
「ふは、感じてんの?」
「あっ、はっ、はぁっ、」
「こんな状況なのに興奮してんだ?」
にやりと笑う。
怖いはずなのに、嫌なはずなのに、これからされる事に期待してしまっている俺は、もうヒョンから逃げられない。
反応していた自身を直で触られ、快感の波に飲まれる。あと少しの所でヒョンの手の動きが止まる。
「んあっ、やぁ、ヒョ、」
「お前が愛してんのは誰だ?」
「はっ、ヒョン、だよ、」
「どのヒョン?」
「ユンギヒョ、っだけ、はっ、」
「なら俺以外の男なんて必要ないよなぁ?」
「っ、」
「答えらんねーの?」
それなら、とするりとユンギヒョンの両手が俺の首を包み、グイッと力をいれられる。
「このままお前を殺しちまおうか?」
「…っ、やめっ、」
「はは、苦しいか?テヒョンア。」
「っ、」
「俺も苦しかった。」
「お前が他の男と楽しそうにしてる度に、何回そいつ等を殺そうとしたか分からないぐらいにな。」
「俺の気持ち分かるか?」
「それほどお前を愛してんだよ。」
もうダメだ、
そう思った途端両手が離れた。
「はぁ、はぁ、」
必死に酸素を取り込む俺に、ハッとして正気に戻ったのか思い切り抱きしめられた。
「…っ、」
「テヒョンア、好きだ。好きなんだよ。」
「ごめんな、俺なんかがお前を愛してしまって、」
そう呟いてぎゅうと抱きしめてくる。苦しいのはこっちなのに、なんでヒョンが泣きそうなの。でもやり方は酷いけど、きっとこれがこの人なりの愛情表現なんだ。そう思うと不器用にしか愛せないこの人が、愛おしく無意識に手を伸ばし頭を撫でていた。
「…っ、んだよ、」
「俺も、愛してるよ。」
「ヒョンと恋人同士になったあの日から、俺の心はヒョンのものなんだよ。」
「苦しめられようが、傷つけられようが、俺はヒョンが好きだし、愛してる。だから、ヒョンは何も心配しなくていいんだよ。」
「…お前は馬鹿だな、」
「こんなやつ、捨てて逃げればいいのに、」
「そんなこと出来るわけないでしょ?」
「…俺はこれからも嫉妬して、お前に酷いことをすると思う。それでもいいのか?」
「全部受け止めるよ。」
「…なんで、」
「ヒョンを愛してるから。」
「…っ、」
「それが全てだよヒョン。」
*****
「あっ、んん、」
「痛くねえか?」
「んっ、だいじょぶ、んぁ、」
あの後部屋に移動して、冷めきっていた体に再び熱を持たせて、ユンギヒョンとひとつになった。ゆっくりだった動きが段々と早くなり、激しく腰を打ち付けられ、お互い限界に近づく。
「はぁ、テヒョンア、愛してるっ、」
「俺も、愛してる、よ、」
そう言って二人同時に果てた。
そのまま俺の上に倒れ込んで来たヒョンをぎゅうと抱きしめた。
「俺は絶対にヒョンから離れないよ。」
「…後悔しても知らねぇぞ。」
「しないよ、絶対。」
そう言って愛おしい人に、口付けをした。
fin.