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短編集

ユンギヒョンはよく俺を馬鹿にしてくる。


練習がハードで少し壁にもたれ掛かって休憩していた時。

「何、お前このぐらいでへばってんの?」

「ヒョンは、元気ですね。」

「まあな、誰かさんと違って運動してるしなぁ?触るか?」

「筋肉はジョングクだけで十分です。」

「あれは次元が違う。」

「はは、筋肉にも次元があるんですかww」

「おう、あいつの筋肉もお前の頭と同じで四次元だよ。」

「…もう!ヒョン!」

「wwwほら練習戻るぞ。」



口の周りにご飯が付いてた時。

「(じー…)」

「な、なんですか?」

「美味しいものでも食べてきたのか?ww」

「へ?」

ゆっくりと指を頬に持っていかれる。

「どんな食べ方したらここに付くわけ?ww」

「分かんないよ!」

「相変わらずガキだなあ。」

「ガキじゃない!!!」


1番酷かったのは、有難いことに俺の顔が世界で認められた時だった。


朝起きてから俺の顔を見て

「お!世界一の顔は朝から輝いてんなあ。」

ご飯食べてる時も

「顔が良すぎて飯が負けてんなあ。」

ただ水を飲んでる時でさえ

「お前が飲むと水も高級に見えるな。」


なんて一日中からかってきた。


もうここまで来ると俺のこと好きなんじゃないの?なんて思うようになった。いつもからかわれてる仕返しにそう聞いてやろう、なんて思いながらユンギヒョンの部屋の前に着くと、中から話し声が聞こえてきた。



「もー、本当に好きなんだね〜。」

「すげぇ好きです。」

「まあ、愛情表現の仕方がユンギらしいけどね。」

「…分かりますか?」

「うん。面白いぐらいにわかるよ。」

「気付いてないのは本人だけってことか。」

「そんなとこも好きなんでしょ?」

「そりゃあ勿論。」

「…あーやだやだ、そんなユンギの顔ヒョンは見たくないでーす。早くいつもみたいに『あ"?何見てんだ、殺すぞ。』っていう目付きに戻ってくださーい。目からハートが溢れてまーす。」

「……はぁ?」

「それそれ、それでこそユンギだよね!
という事でヒョンは寝るね!おやすみ!」

「…まだ5時ですけど。」


そっと部屋の前から離れて、自分の部屋のベットに寝っ転がった。ユンギヒョン好きな人居るんだ、それを聞いた途端何故か心にポッカリと穴が空いたような感じだった。そうか、ユンギヒョンが俺を好きなんじゃなくて、俺がユンギヒョンを好きだったんだ。気付いた瞬間に失恋って可哀想じゃない?俺。なんて1人で考え込んでいると、コンコンとドアが叩かれた。

「テヒョンア、居るか?」

今1番会いたくない人の声がした。
そのまま居留守を決め込んで黙っていると、「居ねぇのか。」と言って離れていった。それを確認してから、自然と止まっていた呼吸を再開させた。そう言えばユンギヒョンの好きな人って誰なんだろう。ホソクヒョン?ジミナ?ジョングク?なんて色々考えているうちに疲れて眠ってしまった。



「…ア、テヒョンア」

揺すりながら名前を呼ばれる。
ん〜、と唸りながら、薄らと目を開けるとジョングクがいた。

「また呼び捨て…」

「もう慣れたでしょ?」

「まあね、」

「ご飯できてるって。早く行こ?」

「…ん、」

「あ、ちょ、危なっ、」


差し出された手を掴んで起き上がろうとすると、バランスを崩してしまい、俺の上にジョングクが覆いかぶさるような形に倒れてしまった。


「わ、ごめ、」

「やだなぁ、誘ってるの?」

「ち、違うし!!」

「ふふふ、分かってるよ。
早く行こ?俺おなかすいた。」

「…ん、ごめん、」

おでこにチュッとキスをして、次は転ばないようにと抱きかかえられた。そのまま引きずられるようにしてリビングに行くと、ユンギヒョン以外のメンバーが揃っていた。

「あれ?ユンギヒョンは??」

ジョングクが聞くと、2人を迎えに行ったよ〜。とジミンが答えた。

「え?居なかったよ?」

「あれ?すれ違いかな?」

「おお、もう来てたのか。」

後ろからユンギヒョンの声が聞こえて、思わずジョングクを抱きしめてる手に力が入った。

「ユンギヒョンどこ行ってたんですか?」

「あぁ、トイレだよ。」

「なんだ、俺の勘違いか!」

「みんな揃った?食べようか。」

ジンヒョンの一言で席につく。
いつもならユンギヒョンの隣に座るけど、今日はなんだか近くにいたくなくて、ジョングクにぴったりとくっ付いていると、隣のホソクヒョンが「なに?今日はジョングクの気分なの?」と笑いながら譲ってくれたため、有難く隣に座った。


そのまま食事を終え、ソファでゲームをしているジョングクにぴったりと引っ付いていると、「テヒョンア。」と呼ばれた。さすがに聞こえないふりをするなんてできずに、ゆっくりと振り返ると、こっちこいと言うジェスチャーをされる。どうしようか迷っていると、ゲームをしていたはずのジョングクから腕を掴まれる。


「…グガ?」

「…行くの?」

「…行かなきゃ、」

「そう、何かあったらすぐに言ってね。」

元気がなかった俺を心配してくれているのだろう。「ありがとう。」と返してユンギヒョンの元へ向かった。


「…なんですか、」

「…話がある。」


そう言って手を引かれ、滅多に入ることの出来ない作業室へと連れてこられた。暫く沈黙が続く中、ようやくユンギヒョンが口を開いた。


「…お前グガと付き合ってんの?」

「…え?」

「さっき部屋で抱き合っただろ。」

「…あ、」

「そういう事なの?」

「ヒョンの話しってそれ?」

「…あぁ。」

「…もし付き合ってるって言ったらどうする?」

「…応援、出来ねぇかな。」

「………え?」

「俺も好きなんだよ。」

「ジョングガを…?」

「なんでだよ。お前の事だよ。」

「あ、はは、何?またいつもの冗談?」

「冗談でこんなこと伝えるやついるかよ。」

「ユンギヒョンならやりかねないでしょ?
いつも俺のことからかってばっかりでさ、」


「…それは、その、なんて言うかさ、」

「…照れくさくて。」


「…へ?」

「っ、あー、くそ。」


そう言って頭をガシガシと掻くユンギヒョンの顔は真っ赤になっていた。俺のこと、本当に好きなの?改めて実感すると、こっちまで顔が熱くなってきた。


「で、付き合ってんの?」

「………い、」

「ん?」

「付き合って、ないよ。」

「そっか。」

「あとね、俺も、ヒョンの事好き。」

「…え?」

「さっきジンヒョンと部屋で話してたでしょ?それ聞いて俺、なんかショック受けてね、何でかなって思った結果、あぁ、俺ユンギヒョンのこと好きだったんだって思ったの。」

「…聞いてたのか?」

「うん。」

「あーまじかよ…」

「“すげぇ好き“って俺のこと?」

「他に誰がいんだよ。
あー、くそ、なんでよりによってお前が聞いてんだよ。」

「ふふ、珍しくユンギヒョンが焦ってるね。」

「お前限定だよ、馬鹿。」

「っ!!」

「ふは、可愛いな。」


そう言ってぎゅうと抱きしめられる。


「テヒョンア、俺と付き合ってくれるか?」

「っ、喜んで!」


その時嬉しそうに笑ったユンギヒョンの顔は、一生忘れられないぐらい、幸せそうな顔をしていた。


「愛してるよ、テヒョンア。」


「っ!俺も!」


そう言って嬉しそうに笑うテヒョンを見て、たまには素直になるのも悪くないな、そう思ったユンギだった。



fin.
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