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1章

「テヒョンア、」

優しい声で俺を呼んだかと思うと、ふわりと大好きな香りに包まれた。

「っ、グガ…?」

「俺が、何も言いたいか分かるよね…?」

「…分からない。」

「ふふ。相変わらず素直じゃないな。
まあ、そこも含めて大好きなんだけど。」

「!」


温もりが離れたかと思うと、小さな箱を取り出したジョングク。まさか…

「愛してるよ、テヒョンア。
俺とずっと一緒にいて欲しい。」


そのまさかだった。
箱の中からキラキラと光る指輪がこちらを見つめていた。
今すぐに俺も大好きだよ。愛してるよ。ずっと一緒にいよう。そう言って抱きしめたい。

だけど、ごめん。ジョングク。

何も言わない俺を不思議に思ったのか、「テヒョンア?」と声を掛けられる。

「グガ…」

そう言って俺はその小さな箱に手を伸ばし、パタンと閉じた。


「…え?」

「ごめん、俺そんな目でお前のこと見れない。」

「…テヒョンア?」

「お前にはもっといい人が居るはずだよ。」

「でも、俺は「グガ。俺、他に好きな人がいるんだ。」…え?」

「だから、ごめん。」

「う、そ、他の人って誰?そんな事聞いたことないんだけど。ねえ、テヒョンア嘘だよね?」

「嘘じゃない。」

「ねえ、誰?俺の知ってる人?」

「教えるわけないだろ。」

「もしかして、ジミナ…?」

「…。」

ふいっとジョングクから目をそらす。
ごめんジミナ。今だけは許してくれ。

驚いて固まっているジョングク。


「…ごめんね、グガ。」


そう言って約束の場所を後にした。


ぽつりぽつりと雨が降ってきた。

はは、と笑いが出る。

今の自分みたいだ、と。


「…グガ、大好きだよ、、」


そう言葉にするだけで、涙が溢れてくる。

雨にかき消されるだろう、そう思いながら人目を気にせず涙を流していると、ふと雨が止んだ。


「…?」


不思議に思い顔を上げると、優しい匂いに包まれた。ああ、お前ってやつは…


「…ジミ、ナ、」

「ごめん、、やっぱり心配で。」

親友の優しさにさらに涙が溢れた。

「ジミナ〜、、、」

「…あー泣くな泣くな。
そんな顔じゃ家に帰れないぞ?」

「まだ帰りたくない。」

「…じゃあ俺の家に、来る?」


今日ぐらい甘えても許されるだろう。

そう思い、頷いた。

そんな俺らを急いで追いかけてきたジョングクが見ていたなんて、知る由もなかった。
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