1章
ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
はは、と乾いた笑いが出る。
まるで今の自分みたいだ、と。
お陰でさっきまで頬を伝っていた涙が誤魔化せそうだ。なんて、馬鹿みたいなことを考える。
「テヒョンア…」
雨にかき消されながら、愛おしい彼の名前を呟いた。
テヒョンside
[テヒョンア]
[話したいことがある]
[いつものあの場所に来て?]
ドキリとした。
ジョングクがあの場所を訪れるのは、決まって大事な事がある時だった。
しかも全部自分に関することなのだ。
幼稚園生の時はシロツメクサで作られた指輪を渡され、「大きくなったら、結婚しようね」とプロポーズをされた。
小学生のときは大きくなったら何になりたい?と言う作文に、[テヒョンアの旦那さん]と書かれた所謂ラブレターを渡された。
中学生では「俺以外の奴と付き合ったら、相手のやつ殺すから。テヒョンアは俺だけを見てて。」と言われた。
そして高校生になった今、小学生の時の作文にもあった[18歳になったら、ちゃんとプロポーズします。]その18歳になってしまったのだ。
ここまでされては、流石に鈍感だと言われる俺でも気付いてしまう。
「プロポーズだ、」
「なんか言った?」
「い、いや!なんでもないよ!」
丁度遊びに来ていたジミンが、ボソリと呟いた俺の言葉に反応した。
「てか、携帯めっちゃ鳴ってたけど大丈夫?」
「あー、ググからだから…」
「そうなの?早く言ってよ!」
ジミンは唯一、俺がジョングクのことを好きなのを知っている。
しかも応援してくれているのだ。
本当にいい親友を持ったな。としみじみ思う。
「だってせっかく来て貰ってるのに、そんなこと言えないじゃん。」
「いーのいーの!また来ればいい話だろ?
ほら、一緒に降りよう?」
手を引かれるまま降りると、丁度グクのママが遊びに来ているようだった。
ジミンが一言かけようかと近づこうとすると、中から聞こえてくる会話に足が止まった。
「うちのグガ、あまりにもテヒョン君のこと好きすぎじゃないかしら?」
ちらりと俺の事を見るジミン。
そのまま立ち尽くしていると、今度は俺の親が口を開いた。
「そう〜?仲が悪いよりいいじゃない〜?」
なんて呑気な返事が聞こえてきて、ほっとして再び足を動かそうとすると
「いずれ子育てとかで大変になったら、やっぱり助け合えるじゃない?今の私達みたいに。ね?」
そこでハッとする。
子育て、そうだ。俺とグクが結婚なんてしたら、子供なんてできるわけが無い。
グクの親も、うちの親も、女手一つでここまで育ててくれたのに、その恩を仇で返す事になってしまう。
「テヒョンア…?」
心配そうに俺の名前を呼ぶジミンの声に、再びハッとする。大丈夫、の意味を込めてニコリと笑い、そのまま足を進めると母さんたちが俺らに気づいたようで、話し掛けてくる。
「あら?ジミン君もう帰るの?」
「あ、はい!お邪魔しました!」
「俺、コンビニでお菓子買ってくる。」
「はいはい。2人とも気をつけてね。」
バタン。と玄関のドアを閉めた瞬間、ぎゅうっと抱きしめられる。
「えっ?ジミナ?」
「…………め?」
「え?聞こえないよ?」
「俺じゃダメ?」
「はは、ジミナ冗談やめてよ〜?」
「…………のに、」
「ん?」
「…なんだよ〜!ちょっとは焦ってくれなきゃ面白くないじゃん!」
「はは、ごめんごめん。」
ジミナなりの気遣いなのだろう。
優しい親友にありがとうの代わりにぎゅうと力強く抱きつき返す。
何も言わずに俺の頭を撫でるジミン。
「ジミナ、俺今から役者になってくる。」
「ん?」
「俺はジョングクの事なんて好きじゃない。」
「…。」
「俺とジョングクはただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもない。」
「…それで、いいの?」
「…うん。」
「…そっか。」
「上手く演じれたら、新人賞お祝いしてくれる?」
「…ああ、盛大に祝ってやるよ。」
「ふふ、ありがとジミナ。大好き。」
「っ、はいはい。分かったから早く行ってこい。待たせてんだろ?」
「うん、行ってきます。」
じゃあまた後で、とジミナと言葉を交わし、約束の場所へ向かう。
どう伝えたらいいのだろうか、果たしてちゃんと断れるだろうか、なんて考えていたらいつの間にか約束の場所へ着いてしまったようだ。
俺に気づいたジョングクが振り返り、ニコッと笑顔を向けてくる。
ああ、やっぱり大好きだなあ、
受け入れていいんじゃないか?
なんて思っていると、再びピコンと携帯から音が鳴った。
[コンビニ行くなら牛乳も買ってきて〜!]
母さんからだった。
ふふ、神様はとことん意地悪だなあ
なんて笑ってみせる。
「大丈夫、俺はやれる。」
そう呟いて、愛おしいジョングクの元へ足を進めた。
はは、と乾いた笑いが出る。
まるで今の自分みたいだ、と。
お陰でさっきまで頬を伝っていた涙が誤魔化せそうだ。なんて、馬鹿みたいなことを考える。
「テヒョンア…」
雨にかき消されながら、愛おしい彼の名前を呟いた。
テヒョンside
[テヒョンア]
[話したいことがある]
[いつものあの場所に来て?]
ドキリとした。
ジョングクがあの場所を訪れるのは、決まって大事な事がある時だった。
しかも全部自分に関することなのだ。
幼稚園生の時はシロツメクサで作られた指輪を渡され、「大きくなったら、結婚しようね」とプロポーズをされた。
小学生のときは大きくなったら何になりたい?と言う作文に、[テヒョンアの旦那さん]と書かれた所謂ラブレターを渡された。
中学生では「俺以外の奴と付き合ったら、相手のやつ殺すから。テヒョンアは俺だけを見てて。」と言われた。
そして高校生になった今、小学生の時の作文にもあった[18歳になったら、ちゃんとプロポーズします。]その18歳になってしまったのだ。
ここまでされては、流石に鈍感だと言われる俺でも気付いてしまう。
「プロポーズだ、」
「なんか言った?」
「い、いや!なんでもないよ!」
丁度遊びに来ていたジミンが、ボソリと呟いた俺の言葉に反応した。
「てか、携帯めっちゃ鳴ってたけど大丈夫?」
「あー、ググからだから…」
「そうなの?早く言ってよ!」
ジミンは唯一、俺がジョングクのことを好きなのを知っている。
しかも応援してくれているのだ。
本当にいい親友を持ったな。としみじみ思う。
「だってせっかく来て貰ってるのに、そんなこと言えないじゃん。」
「いーのいーの!また来ればいい話だろ?
ほら、一緒に降りよう?」
手を引かれるまま降りると、丁度グクのママが遊びに来ているようだった。
ジミンが一言かけようかと近づこうとすると、中から聞こえてくる会話に足が止まった。
「うちのグガ、あまりにもテヒョン君のこと好きすぎじゃないかしら?」
ちらりと俺の事を見るジミン。
そのまま立ち尽くしていると、今度は俺の親が口を開いた。
「そう〜?仲が悪いよりいいじゃない〜?」
なんて呑気な返事が聞こえてきて、ほっとして再び足を動かそうとすると
「いずれ子育てとかで大変になったら、やっぱり助け合えるじゃない?今の私達みたいに。ね?」
そこでハッとする。
子育て、そうだ。俺とグクが結婚なんてしたら、子供なんてできるわけが無い。
グクの親も、うちの親も、女手一つでここまで育ててくれたのに、その恩を仇で返す事になってしまう。
「テヒョンア…?」
心配そうに俺の名前を呼ぶジミンの声に、再びハッとする。大丈夫、の意味を込めてニコリと笑い、そのまま足を進めると母さんたちが俺らに気づいたようで、話し掛けてくる。
「あら?ジミン君もう帰るの?」
「あ、はい!お邪魔しました!」
「俺、コンビニでお菓子買ってくる。」
「はいはい。2人とも気をつけてね。」
バタン。と玄関のドアを閉めた瞬間、ぎゅうっと抱きしめられる。
「えっ?ジミナ?」
「…………め?」
「え?聞こえないよ?」
「俺じゃダメ?」
「はは、ジミナ冗談やめてよ〜?」
「…………のに、」
「ん?」
「…なんだよ〜!ちょっとは焦ってくれなきゃ面白くないじゃん!」
「はは、ごめんごめん。」
ジミナなりの気遣いなのだろう。
優しい親友にありがとうの代わりにぎゅうと力強く抱きつき返す。
何も言わずに俺の頭を撫でるジミン。
「ジミナ、俺今から役者になってくる。」
「ん?」
「俺はジョングクの事なんて好きじゃない。」
「…。」
「俺とジョングクはただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもない。」
「…それで、いいの?」
「…うん。」
「…そっか。」
「上手く演じれたら、新人賞お祝いしてくれる?」
「…ああ、盛大に祝ってやるよ。」
「ふふ、ありがとジミナ。大好き。」
「っ、はいはい。分かったから早く行ってこい。待たせてんだろ?」
「うん、行ってきます。」
じゃあまた後で、とジミナと言葉を交わし、約束の場所へ向かう。
どう伝えたらいいのだろうか、果たしてちゃんと断れるだろうか、なんて考えていたらいつの間にか約束の場所へ着いてしまったようだ。
俺に気づいたジョングクが振り返り、ニコッと笑顔を向けてくる。
ああ、やっぱり大好きだなあ、
受け入れていいんじゃないか?
なんて思っていると、再びピコンと携帯から音が鳴った。
[コンビニ行くなら牛乳も買ってきて〜!]
母さんからだった。
ふふ、神様はとことん意地悪だなあ
なんて笑ってみせる。
「大丈夫、俺はやれる。」
そう呟いて、愛おしいジョングクの元へ足を進めた。
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