MiR
皆の前で自己紹介を終えたキムテヒョンは、誰も座りたがらない俺の隣の席に座り、ねえと声を掛けてきた。
「ん?」
「名前聞いてもいい?」
「ジミン。パクジミンだよ。」
「ふふ、やっと聞けた。」
「…。」
また俺の苦手な微笑みを向けられ、どうすればいいか分からず、ふいっと窓の外へ視線を移す。
そんな俺の様子を特に気にしてないのか、反対側の隣の奴から話しかけられているのを窓越しに見つめた。
それから始業式だのなんだの面倒な行事が終わり、帰る支度をしていると、隣の席にわらわらと人が集まってきた。
「テヒョンア!今日遊び行かね?」
「え?」
「皆でカラオケでも行こうよ!」
「…皆、で?」
「そうそう!」
そんな会話を聞きながら、バックを肩にかけて席から離れようとすると、
「あれ?ジミナは帰るの?」
そう声を掛けられ、一瞬で空気が固まる。
「うん、そういうの嫌いだから。」
にっこりと笑って返す。
しーん、と静寂が訪れる中、テヒョンはそっか、と呟いた。その次に呟かれた言葉に驚いて振り返ると、テヒョンもまた俺と同じようににっこりと笑っていた。
「じゃあ俺も行かない。」
「なんで行かなかったの?」
「だって俺、ジミナと仲良くなりたいんだもん!」
皆からの誘いを断ったテヒョンは、人の輪をするりと抜けて、帰ろうとしていた俺の隣に並び、俺の苦手な顔で一緒に帰ろうと誘われ、断れず今に至る。
「でもごめん、迷惑だったかな?」
「別に?」
「へへ、良かった。」
「変なやつ。」
「それよく言われる。」
「だろうね。」
「あー!酷い!」
落ち込んだり、喜んだり怒ったり、コロコロ表情が変わるこいつが面白くて、くすくすと笑うと、驚いたように俺を見てきた。
「何?」
「ううん、やっと笑ってくれた。」
「あ、」
「俺ジミナの笑った顔好きかも。」
「なんだそれ。」
何だか恥ずかしくて顔を逸らすと、「照れてるの?」なんて言いながらくすくすとテヒョンが笑う声がした。
「ジミナって面白いね。」
「…うるさい。」
少し赤く染った頬を夕日のせいにして、たわいもない会話をしながら2人で歩いた。
こんなに夕日が綺麗だと思ったのは初めてだった。
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