暁短編
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解毒薬
意外とアジトに居ても生身のサソリに会うことは滅多にない。普段サソリはヒルコの中に居て行動してるからだ。リリーが暁に入ってしばらくして赤髪の幼い少年が居た時はびっくりした。目がクリクリでまつ毛が長い。どちらかといえば可愛らしい顔立ちをしているし、こんな少年が必要ならば殺しが出来るのかと…実際は一国を破滅させる力を持っていて殺しに躊躇するような人物ではないと知る。ツーマンセルで一緒に行動するデイダラですら生身のサソリをあまり見たことが無いという。
サソリはいつもの作業部屋に篭っているため、サソリに頼まれ里で買った薬草を届けようと部屋の扉をのノックした。
「サソリ…居る?」
『あぁ、…入ってくれ』
「……」
サソリの作業部屋に入ったのははじめてだった。いつもは分かったとか、返事さえ無かった事が多かったはずなのに。
扉をゆっくり開けると中は薄暗く、1つ2つ蝋燭が灯っているだけでそこにサソリが居るのか目を凝らさないと分からない。暗闇に目が慣れて来るとようやく辺りの物や器具が見えてきた。扉の近くに背中が開いた空のヒルコが置かれ、随分掃除してなかったのか物置のように埃が被っている物や天井には蜘蛛の巣が張っている。壁には傀儡や武器が掛けられ、3代目風影の傀儡が台の上に乗っていた。ヒルコじゃないサソリがこちらを見ること無く傀儡の胸の部分を開き何やら作業を続けている。
『…薬草はそこのテーブルの上に置いといてくれ。道具箱のの上に必要なリストをメモしておいたから、悪いが少し手伝ってくれないか』
「ええ、」
指示されたメモを取り、書いてある必要な機材を探していく。物が乱雑に置かれているかと思ったが分類分けをされていて少々手間取ったが探し出せた。作業をしているサソリの後ろのワゴンにそれを置いていく。
『…生きていない傀儡でもメンテナンスはしなきゃならん。動作に支障が出たら意味無いからな』
後ろから覗くと傀儡から固まった砂鉄や砂を取り除いていた。サソリが所有している傀儡の数を考えると任務が無い限り作業場に篭もりっきりになるのも頷ける。
『そこの器具取ってくれ、右から2番目』
「はい、」
『肺部分を開いて押さえる、そこに器具を差し込め』
サソリの指示通りに作業を進めていく。
お互い黙々と作業に取り掛かっていたがふとサソリがリリーの方へ顔を向けた。
『おい、傀儡の中に汗を垂らすなよ』
「っと…ごめんなさい」
リリー外套の袖で汗を拭った。
『生身の人間には暑いのか?この部屋は閉め切っているから無理もないか…』
確かに言われてみれば暑かったので最初から外套を脱いで作業をすれば良かった。リリー作業台から少し離れた所で外套を脱ぎ戻るとサソリはじっとリリーを見たかと思えば手を伸ばして頬に触れそして唇を拭った。
『お前…綺麗な顔立ちしてるし傀儡にしたらもっと良いんじゃねぇか?…クク…これ以上老けない。やっちまうなら早い方がいい』
「?!」
サソリに触れられた唇が痺れた。突然脚が震え全身の力が抜けて天地が逆さまになる。リリーは動こうとしたが床に仰向けで突っ伏したまま身動きが出来ない。口内と手足の痺れ、話そうにも声が出せなかった。ただ蜘蛛の巣だらけの天井を見つめるしか出来ない。
『……20秒か、まぁまぁだな』
サソリはリリーを跨いで見下ろし冷たい表情のまま語りかけた。
『1つ忠告してやるよ新人、暁の奴らを仲間だと思って接するとそのうち痛い目に会う。俺たちは利害が一致したビジネスパートナーにしか過ぎないんだ、分かるか?こうやって八方美人に振舞ってるとな』
「はぁ…ぁ…う…」
『…ちなみにその毒を摂取するとだいたい2日と持たない…この解毒薬が欲しいか?まぁ症状を見てからだが』
サソリは近くにあった紙とペンを手に取りリリーに出た症状を書き出した。こうしている間にも状態が悪くなっていくとても効き目の早い神経毒だった。今度は服を捲りあげ直接肌に触れ触診し始めるサソリをうつろな目で見上げた。
『メンバーが欲情してるのも頷けるな…クク…任務中デイダラはお前の話で持ち切りだ。お前みたいなのが好きなんだろうなデイダラは』
「うぅ…あ…」
『神が作り上げた肉体、美しい曲線美だ。これこそ芸術…さて、声も出せないか?…そのままにすれば声も出せないし耳も聞こえなくなるだろう。欲しいなら瞬きをゆっくり2回しろ』
リリーはゆっくり瞬きを2回した。油汗が止まらないのに同時に寒気が起こりとても息苦しい。サソリは背後の薬品棚にあるいくつかの解毒薬をカプセルに入れ水と一緒に口に含み、身体が動かないリリーを少し起こして口移しで飲ませた。
「んんっ……はぁ…」
『…俺が忠告したこと忘れるなよ…また痛い目に会いたく無かったら、だが…』
顔が少し離れ怪しく微笑むサソリを最後にリリーは意識を手放した。
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