暁短編
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貴方の人形になりたい
「え、うそ…。今度個展開くんだ」
朝の鬱陶しい満員電車の中で開いたインスタのストーリーに小さく日時と場所が書かれていた。それは一週間後の丁度自分がお休みの日。思わず出た言動で後ろに居たおじさんに見られ、気まずそうにスマホに視線を戻す。確かにそう書いてある。その作家さんは更新頻度も少ないため、ストーリーの更新に歓喜した。その方のページに飛ぶと新しい投稿はされていない。まさか個展をやるのに24時間で消えしまうストーリー機能だけの通知だけで告知は終わってしまうのだろうか。急いでその日時のページを保存し、告知の投稿を待つことにした。だが幻かと思うくらいその個展の当日になっても告知の投稿はないままだった。もしかしたら違うサイトでも告知はしているのかもしれない。
その方は球体関節人形の作家さんで、友達から薦められ様々な作家さんをフォローしているうちにその作家さんへと行き着いた。その方の投稿を見た瞬間に心奪われ、フォローしたのは2年くらい前だったがその間にも投稿されたのはたったの数枚。その数枚でももし人形展があったら行ってみたいと思っていた。実際にその美しい人形を見てみたかった。生身の人間のような生々しさがその手で作られているそのサソリさんにお話を聞いてみたい。手土産とか持って行っても引かれないだろうか、荷物になってしまうかも。そもそも話せるのだろうかというあーだこーだ考えているうちにあっという間に当日を迎えてしまった。
個展が開かれている会場の住所はここで合っていると思うが…周りは民家で人通りも少なかった。一見道路沿いに面しているアンティークショップのような外観だが看板も何もない。木製の扉に駆け寄ると、硝子張りの窓から中見える。薄暗い中の奥に赤髪の小柄な後ろ姿が見えた。その人以外人は居なかったのでもう終わってしまったと思いながらおそるおそるドアを開けるとドアにかかっていたベルが静かに鳴り響く。
「…あの、ここで個展をやっていると見て、」
振り返った姿に驚いた。その作家さんは女性だと思っていたが青年だった。綺麗な赤髪と人形の様な美しい姿に目を奪われる。綺麗な人形の様な青年はゆっくりと口を開いた。
『ああ、…そうだけど』
「サソリさんですよね…すみません、無理を言ってもう閉まっていたら、」
思わず見惚れてしまったとはっと顔を下に向けが、サソリは構わずどうぞと声がかかった。ゆっくりと展示されている空間に踏み入れると、薄暗くひんやりとした空気が包み込む。日常の世界から切り離された世界を感じた。写真出みた人形の数々が実際に展示され、実際見てみると人形達はどこか生々しく生きているかの様に椅子に腰掛けている。正直リリーは作品よりサソリに意識がいってしまい全然集中出来なかった。あの美しい顔が脳裏に焼き付いて離れないのだ。
『…どう?実際みてみて』
「とても綺麗です…まるで生きているみたいで」
『生きているよ』
「えっ…?」
振り向くとサソリはにっこりと微笑む。気配もなく後ろに立っていて、それは冗談なのか本当なのか分からない口振りだった。リリーの反応を見て何か更に言おうとして、どこか楽しげな表情でリリーを見つめた。触られて居ないはずなのに身体が動かなかった。緊張からかと思ったが違うようだ。金縛りのように身体が重くなった。
「あ……」
『力入れると痛いぞ』
「……え?」
サソリはリリーの肩に触れ指を滑らす様にして胸元のボタンを片手で器用に外すと、汗ばんだ肌にひんやりとした手が伸ばした。下着のレースを引っ張り胸の膨らみをゆっくりと触っていく。リリーはこの状況に脳が追い付けず身体が動かずパニックになり、ろくに言葉を出すことも出来ず心臓の音が脳内で鳴り響いていた。
「うっ…ん」
『………』
サソリの舌が胸の突起を啄むと肩が揺れた。こんな状態なのに身体が反応しているのが恥ずかしくて顔が一瞬で熱くなる。力を入れても動けず、ただサソリが与える高揚させる刺激を受け入れるしか無かった。外観から小さいと思っていた個展内は案外広く、夕暮れに差し掛かりドアの窓から差し込む夕日がとても遠く感じた。
『縛られて気持ちよくなっているのか?』
「違う…そんなんじゃ、」
『はは…なんだ、もう濡れているじゃねぇか』
ワンピースの裾をたくし上げ下着をずらして指を入れこまれた。自分では感じることが出来ない気持ち良さが下から腰や背骨を伝って脳内が掻き回される刺激で震えた。展示されている人形が嘘だとしても生きていると聞いてから何故か人形の視線が気になった。何体もの人形達に見られながら犯されている。
「はぁ…んっ…あああ」
壁に身体を押し付けられ体重をかけるようにしてサソリの勃ち上がったものを入れられた時に頭の中で火花が散ったように目がチカチカした。臓器の圧迫感と、引き抜かれるもどかしさの繰り返しで、いつの間にか拒んでいた身体がサソリの身体を受け入れるようにして抱き締めていた。日常では味わう事の出来ない刺激が欲しかったのだろうか。退屈から逃げるようにしてここに自ら迷い込んだのか、本能から求めていた感じがした。
気持ち良さで頭が真っ白になるのと同時にサソリがリリーの中で果てると、透き通った瞳に引き込まれるようにしてキスをした。キスの良さや仕方なんてろくに分からなかったはずなのに、柔らかい桃に齧り付くようにしてリリーからキスを求めると、サソリは楽しそうに応じる。サソリの舌からは甘く感じて舌が痺れたがその時にはもう瞼が重く異常な眠気があり、毒を飲まされたと気付いた時には意識が遠くなっていた。サソリの嬉しそうな笑い声と共にリリーはそのまま意識を手放した。
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