LONG STORY
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寝息が聞こえ皆が寝静まったころ、リリーはベットに潜ると杖明かりを頼りにアブソレムから貰った未来の羊皮紙を恐る恐る広げた。
箒に乗っているリリーが描かれていた
羊皮紙の中でスイスイと気持ち良さそうに飛んでいる。
そうか明日の授業は飛行訓練だ。
しかし描かれていた未来は断片的過ぎて良く分からなかった。先の方を見るとハリー、ロン、ハーマイオニー、リリーが何かを見て驚いている。さらに先を広げると、3つの頭がついた犬がこちらに向かって吠えていた。大きなトロールがこん棒で辺りの描かれた物を破壊している。リリーはとても恐ろしくなり、急いで羊皮紙を閉じてベット下のバックにしまい込んで目をつぶった。
今日はグリフィンドールとスリザリンの合同飛行訓練の授業が控えていた。初めての飛行の者が多く、そのせいが皆どこかソワソワしてるしていて、パンジーは事前に練習はしたが周りに木のクッションが無いと落下してしまうと恐れていた。
「ママと練習はしてみたけど無理よ…全然真っ直ぐ飛べないんだもの。リリーは練習した?」
「ううん、庭を飛ぶくらいだからそんなに」
リリー達は朝食を取りに大広間へ移動する。そこではドラコ家のワシミミズクが運んで来た大量にママ特製のお菓子をテーブルに広げていた。
「まあ!ドラコすごいわね!」
「まあね、母上はお菓子作りが趣味なんだ僕だけじゃ食べきれないから食べてくれよ。…多分母上もそのつもりで持たせたんだ」
クラッブとゴイルはもうその色とりどりのお菓子に手を伸ばして食べていた。もちろん朝食はたっぷり食べて。
ドラコに差し出されたジャムがサンドしてあるクッキーをパンジーとリリーは手に取り口に運んだ。…バターの香りのサクサクなクッキーと甘酸っぱいジャムが相まって美味しい。
「んん~…美味しい!流石ドラコのママね!」
パンジーが目を輝かせて美味しそうにクッキーを食べた。
「ジャムも手作りなの?」
「ああ、そのジャムはブルーベリーじゃなくてルバーブなんだ。酸味が強いけど甘いクッキーと合うんだ。母上はルバーブが大好きでね」
「とても美味しかったとお母様に伝えて!」
「もちろん」
ひとつひとつのお菓子に愛情が込められているような感じがした。ルバーブのジャムをドラコの母が丁寧に作っているシーンまで想像出来る。ドラコがとても愛されて育った事がこのお菓子からも伝わってきた。
「…おはよう」
「セオ!おはよう、遅かったわね」
「…途中でブレーズの取り巻きに巻き込まれた」
セオドールは明らかにムスッとしていてとても朝食をとる気分じゃないらしい。よく見るとローブのあちこちがシワになったりホコリを被っていた。すすめられるドラコのお菓子を一瞥するだけでブレーズはリリーの隣に座りトーストを何も付けずに齧った。
「大変だったみたいね…その人気者の彼はどこかしら?」
「ここだよ」
いつの間にかブレーズはリリーの背後に立ち、爽やかな笑顔で登場した。ボロボロなブレーズと違いシワやホコリは被ってなかったが、シャツのボタンは開きすぎていて女物の香水がキツかった。
「その趣味の悪い女にちゃんと言った方がいいわよ、そのキツい体臭は香水じゃ隠せないってね…」
パンジーもその匂いに気づいて振り返った。せっかくドラコに貰ったお菓子でいい気分だったのに、香りで邪魔されたせいでパンジーの言葉の上には皮肉たっぷりだった。可愛いお顔なのにブルドッグのように顔を歪ませた。
「ちゃんと伝えておくさ。ちょっと束縛がキツい子でね。さっきブレーズにも手伝ってもらっちゃったよ」
ブレーズはセオドールにウインクすると、口にコーンフレークとミルクを含んでいたセオドールは吐き出しそうになっていた。セオドールもブレーズを睨みつけた。
「まったくお似合いね」
「…ああ、そのままその部屋に篭ってりゃ良かったんだ」
「そんなにしてたらズル剥けちゃうよ」
「…っさいって~~」
パンジーとセオドールが初めて意気投合した瞬間だった。その内容は別としてリリーは微笑ましくなって2人にバレないようにこっそり笑った。
「返してよ」
その声がする方を見るとグリフィンドールのテーブルに食事を済ませたマルフォイが居てネビルに何かしたようだ。
近くに座っていたハリーとロンが立ち上がってマルフォイが持っていた物を返せと言おうとした時マクゴナガル先生が仲裁に入ってきてケンカにはならなかった。
なんだか騒がしい朝食も終わって、授業の為に校庭に向かった。そこは芝生でまわりに木のクッションはないようだ。パンジーの顔が落ち込む姿にいつもの強気がない。
「あーあ…もう汚れそうな雰囲気」
「頑張ろ、案外出来ちゃうかもよ」
鷹の様な瞳のマダムフーチ先生が立っていて生徒は地面に置かれた箒を上がれと指示して掴むとこから始まった。
一斉に生徒の指示で箒が上がる子も居れば全く動きもしない生徒も様々いた。
リリーは上がれと箒に指示をすると数回で手元に収まった。隣にいたパンジーも数回で上がった様で嬉しそうにこちらを見た。ほとんどの生徒が出来るとマダムフーチ先生は跨って合図で浮上するようにと指示をした。
「うわあああああっ」
合図と共に浮上のつもりが力んでしまったネビルが高く高く上がって5mくらいの高さから落下してしまい、先生に連れられネビルは医務室に向かって行った。その間生徒は箒を使うなと言われたがマルフォイはネビルが落としていった思い出し玉を拾い上げてからかうと、パンジーも生き生きとして庇うグリフィンドール生を蔑んだ。
ハリーが怒るとマルフォイは嬉しそうにして箒に跨りハリーも来るようにと煽ると、ハリーは周りに止められたが箒に跨りマルフォイを追いかけた。
ハリーは初めてとは思えない飛びっぷりだった。箒が身体の一部の様に従ってスピードを上げたりUターンしたりとスムーズでマルフォイが投げた思い出し玉をキャッチしたのだった。
歓声で迎えられハリーは嬉しそうだったが、その後すぐにマクゴナガル先生がすっ飛んできてハリーを連れて行ってしまった。
その姿にマルフォイとパンジーは大喜びでリリーはなんだか複雑な気持ちになった。セオドールは無関心。ブレーズはグリフィンドールの子を誑かしていた。
(……こんな気持ちになる私がおかしいのかしら)
授業が終わり、なんだかモヤモヤしたまま廊下を歩いていた。羊皮紙でみた三頭犬とトロールの問題もある。ハリー、ロン、ハーマイオニーと一緒に何がするのだろうか…あんなの私だけじゃ倒せっこない…下を向いていたせいで目の前からきた人物にぶつかってしまった。リリーよろけて尻餅を付いた。
「…あ…すみません、」
見上げるとクィレル先生だった。
クィレル先生はどもりながらリリーに手を差し伸べる。
「リリー君、だ、大丈夫かい?」
「ありがとうございます」
差し伸べられた手を握るとクィレル先生の手はとても冷たかった。それに加え強烈なニンニクと微かに血なまぐさい匂いがしてクラクラした。
(……うぅ、吐きそう)
リリーは気合いで立ち上がりお礼を言ってその場を立ち去った。緊張した飛行訓練もあったせいかなんだかどっと疲れた気がする…よろけた状態で廊下を歩いているとまた誰かに飛び込む様にしてぶつかった。
「うっ……ごめんなさい」
包み込むように大きくて…今度は臭くない。温かくて…なんだか本と薬品の香りが落ち着かせた。両肩を掴まれた反動で顔を上げるとスネイプ先生が少し驚いた表情で見下ろしていた。
「…どうした、また気分が悪いのか?」
「…ちょっとだけ」
何故か、どうしてなのかリリーは意識が遠くなりそうにふらふらしたためスネイプ先生はリリーをしっかり抱き抱えて医務室へと急いだ。