LONG STORY
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今年は大変な年になりそうだ。ハリーポッターが入学する年がついに来てしまった。
入学名簿に目を通した時にその名が入ってきて思わず震えた。頭の片端で取り返しのつかない恐怖の記憶が脳裏の映像として呼び起こされる。自分の代償が子供になって迫って来たのだ。
スネイプは教員室のデスクで以前マクゴナガル先生から配られた新入生の名簿に目を通しながら考えていた。その先の名簿にある人物が目に入る。
(…リリー・エヴァンス……)
同級生の子供たちの入学もなんだか変な感じがするが混じって死喰い人の子供も当たり前だが入学する事に対して、違和感を覚える。年月の月日は経つのがとても早い。
いつから平和ボケしてしまったのかと思う。ヴォルデモートがこの世から消えてから10年。毎日左腕に残された闇の印が疼くことは無かった。この名簿を見た時少しだけ左腕が疼いた気がして思わず腕を摩った。
「…リリー・エヴァンスか…母上は元気かね?」
「……死にました」
(………死んだ?……)
" 死んだ "
そのワードが頭の中に大きく響いた。後ろに立つリリーはどんな顔してその言葉を発したのだろう。リリーの表情は幼さに対して、大分大人びた冷え冷えとした表情だった。その表情に少なからず恐怖を抱く。闇に落ちた者はその子供さえ報われない…この子はその冷えきった様なアイスブルーの瞳でどんな世界を見てきたのだろう。
リリーの母はスネイプの数少ない友人だった。出会いは死喰い人の夫の妻。明るく、それでいて家庭を愛している人だった。赤子のをリリーはじめてその時抱っこさせてもらった。
「…抱いてみる?」
「抱っこしたことない…」
「大丈夫よ。意外としっかりしてるんだから」
スネイプの戸惑いをスルーして抱えたリリーをスネイプの腕の中に渡した。スネイプは不安でいっぱいだったが、暖かいミルクの香りがする赤子のリリーをこの胸に抱かせて貰った時そう感じた。
今は信じて貰えなくとも報われる時が必ず訪れると。
スネイプの人差し指を赤子にしては力強い手で包む小さなリリーを見た時、今まで味わったことの無い幸せな時間がスネイプの胸の中にゆっくり流れた。輝くアイスブルーはスネイプの顔を見ると朗らかに笑いかける。リリーの母は大喜びしてそれを写真に収めた。
小さな小さなリリー…強く抱いたら壊れてしまいそうなそんなリリーにスネイプは大きな希望を感じた。
死喰い人こそ真に優れた魔法使い
闇の魔術に没頭していたスネイプは信じて疑わなかった。愛した人さえも天下を取れば帰ってくると淡い確信もあったはずだ…その人が死ぬまで。…何故私の前から大切な人ばかりこの世を去って行くのだろう。不条理だ。
リリーが出て行った件があってからの授業は思うように行かなかった。ポッターの瞳を見た時も。何が責められている様な気分に勝手なっていた。新入生の初回の授業にしてはスネイプの目から見てもめちゃくちゃだった。
授業が終わり医務室へ向かうと、マダムポンフリーはリリーはここには来ていないと言った。おかしい。談話室か図書室へ行っているのだろうか…?
ちょうど近くを通ったザビニに聞けばリリーは禁じられた森の近くで休んでいるという。さっきもこいつは、少し早すぎる授業前に登場し、リリーの言葉を遮った奴だ。聞けば今は行かない方がいいと言って通り過ぎて行った。
彼の言葉は無視してリリーの元へと向かう。彼の言葉通り彼女は木下の木陰に座っていた。
「……エヴァンス」
「何故ここに…?」
「私は君の寮監なのでね、マダム・ポンフリーに聞けば君は医務室には居ないと…」
シガーの香りがする。
スネイプは言葉を詰まらせた。リリーはこの幼い年でシガーを吸っているのか?スネイプはシガーの香りに動揺してリリーの腕を取り鼻を近づけると、その瞬間リリーに頬を叩かれた。拒絶反応の様な早さだった。有無も言わさず手を取ってしまったから当たり前と言えばそうだがスネイプはショックを受けていた。
「……もう良い、好きにしろ」
「……っごめんなさい…」
その声が聞こえたがすでにスネイプは鍔を翻し城の方に足を進めていた。…リリーはもう覚えてないだろうか。抱き上げた日を。
「……覚えているわけないか」
ポケットに手を入れ取り出すと、そこには若い頃のスネイプと赤子のリリーが映っていた。