LONG STORY
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何が起きているのだろう。
でっかい青虫はこちらを見るだけで何も言わない。
「…お前は誰だ…?」
「……えっ…」
「お前は誰かと聞いている愚かな娘よ」
フゥーっと青虫が息を吐き出すとモクモクとしたシガーの香りが風と一緒流れて鼻を掠める。目を瞑れば目の前にママが笑って居るようだった。自然と涙が出てくる。目を開けてもう一度その青虫を見つめた。
「…リリーよ。青虫さん」
「…アブソレムだ」
「…アブソレム?」
「…私がアブソレム。見せてもらおう」
「何を?自分が誰かなことくらい知ってるつもりよ」
「もちろんだ。自分のことは知っておくべきだ。愚かな娘よ。」
アブソレムというかでっかい青虫はそう言うと、どこからともなく丸められた羊皮紙がこちらに転がってきた。
手に取り羊皮紙をめくって見ると、今は羊皮紙をめくっているリリーの姿が描かれていた。上を見ると今までの半生が印されている。リリーは羊皮紙わ持つ手が震えた。下に行けば未来らしい。リリーがやった事ない事がそこには描かれていた。リリーは怖くなって後ずさりをした。
「……こんなの私じゃないわ」
「…ほとんど違う。」
「…どういう…」
「……お前は誰だ?」
「…私はリリーだけどこれとは違う。」
「…どうしてそうだとわかる?」
「あなたがそう聞いたんじゃない」
「私はほとんど違うリリーと言ったんだ。でも今は近くなっている。ほとんどリリーだ」
「………分からないわ」
全く会話が成り立たないように感じた。まぁ、虫と話していること自体おかしな話なんだけれど。こんな所誰かに見られたら全く変な子扱いだ。アブソレムに渡された羊皮紙にもう一度目を落とすとハリーとロンの顔がインクにフワフワと浮き出ている。
周りを見渡すと禁じられた森の端にあるハグリッドの木の小屋にハリーとロンが向かっていた。アブソレムの方にもう一度視線を戻すと、もう既に居なくなっていた。
「………2人に関われってこと?」
リリーの質問に答える者は居ない。残るのは手の中にある未来の羊皮紙とシガーの香りだけだった。咄嗟に未来が描かれていた羊皮紙は手帳の中に仕舞いこみ、立ち上がって2人の姿を追いかけた。
「……こんなところで何しているの?」
その声にハリーとロンは振り返ってリリーを見る。
ロンはちょっと照れくさそうにリリーを見つめ、何か顔に煤が付いてないか確かめるように鼻を擦った。
「…やぁ、リリー。寮分かれちゃったね」
ハリーが少し残念そうにリリーを見つめた。
「寮が分かれちゃったらもう仲良くしてくれないの…?」
「そんなことないよ!…なあ、ロン?」
「もちろんさ!君が良ければ…」
ロンはもにょもにょ喋り最後はよく分からなかった。どうやらブレーズから聞いた先程のスリザリン贔屓の魔法薬学の授業で2人は相当参ったらしい。
「これからハグリッドに会いに行くんだ一緒に来る?」
「…いいの?ありがとう!」
ノックをすると、中から戸を引っ掻く音と唸る音が数回聞こえてきた。
「待て!下がれファング!」
戸が少し開いて、隙間からハグリッドが現れた。巨大な黒いボアーハウンド犬の首輪を抑えながらハリー達を招き入れた。
中は一部屋だけで、ハムやキジ鳥が天井からぶら下がり、焚き火にかけられた銅のヤカンでお湯が沸いている。部屋の隅にはとてつもなく大きなベットがあり、パッチワークキルトのカバーがかかっていた。
「くつろいでくれや」
「ロンとリリーだよ」とハリーが紹介した。
ハグリッドは大きなティーポットに熱いお湯を注ぎ、ロックケーキを皿に乗せた。
「ウィーズリーの家の子かい?お前さんの双子の兄貴達を森から追い払うのに俺の人生の半分を費やしてるようなもんだ、へへ…そっちはスリザリンこ子か?珍しいな…初めてだこの小屋にスリザリン来たのは」
「突然お邪魔してごめんなさい、迷惑だったら帰ります」
そう言うとハグリッドはマズいと思ったのか慌てて大きな手を振り乱した。
「そんなことねぇ!俺はただ、あんまり交流がないだけだ。ゆっくりしてってくれ」
ロックケーキは歯が折れるくらい固かったけど、3人とも美味しそうな顔をして初めての授業についてハグリッドに話して聞かせた。ハリーはスネイプの授業の事を話した。
「…僕の事本当に憎んでるみたい」
「ばかな。なんで憎まなきゃならん?」
「ねぇリリー、スネイプの授業に居なかったけどどうしたの?
「ちょっと体調悪くて。そんなに酷かったんだね」
リリーは初めてそんなこと聞いたように驚いた。するとスリザリンの子が味方してくれるなんて!というような感じでハリーとロンは大喜びした。
「私、その授業の前にスネイプ先生に強く言って医務室行ったからイライラしてたのかも…ごめんね」
「おっどろきー…リリー、スネイプにそんなこと言えちゃうなんて」
「いいんだ、そんなこと無くてもきっと同じだったよ」
ハリーは少しずつ元気になったようだ。
ハリーがテーブルのティーポットカバーの下から紙切れを見つけると、何か思い出したようにハグリッドを見た。
「ハグリッド!グリンゴッツに侵入があったのは僕の誕生日だ!僕達があそこにいる時に起きたかもしれないよ!」とハリーが半ば叫ぶようにハグリッドに訴えた。
ハグリッドは目をはっきり逸らしてロックケーキをすすめた。
(……グリンゴッツに侵入?)
ハリーが読んでいた記事を横から見ると、金庫が荒らされたがらすでに空だったという。この記事にハリーが異常に反応を示し、ハグリッドはそれを伏せようとするのはどうしてだろう。
夕食に遅れないように3人は城に向かって歩き出した。ハリーは何か考え事をしているようだ。
「今日はありがとう。」
そう言うと2人は嬉しそうにはにかんむ。ハグリッドから断りきれずに貰ったロックケーキがとても重かった。