LONG STORY
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金曜日の朝リリーは朝食を早めに済ませ、足早に大広間を出ることにした。荷物をまとめて椅子から滑り立つとパンジーがデザートはあ?!なんて間延びした声が響いたが、お腹が痛いだの適当に理由を付けて巻いた。次の授業の魔法薬学の教室へ一足先に向かうためだ。
地下牢の教室の扉は解放されていて、生徒は誰も居ない。ノックもせずに入るとスネイプ先生はリリーには背を向いて授業の準備をしていたため、こちらに気付いているのか居ないのかも分からなかった。
「ーお久しぶりです…"先生"?」
「その声は……エヴァンスか…朝食はどうした?…母上は元気かね?」
「…死にました」
スネイプは授業の下準備に手にしていたフラスコ同士が当たり、割れそうな音が響いた。ゆっくり振り向いたスネイプは目を見開き少し驚きを隠せない表情でリリーを捉える。しばらく流れた沈黙に口を開いたのはスネイプだった。
「……そうか、知らずに聞いてすまなかった。」
「…ええ、私も"先生"になっていたなんて…知りませんでした」
「先程から毒のある言い方をするなエヴァンス…」
「エヴァンスと呼ばれる仲でしたか」
そう言うとスネイプは先程より暗い表情になった。言いずらそうに何かを言いかけてまた閉じた。
「……君の父とは仲が良かった。…しかし10年前の話をしてどうする?リリー…。君ともあれ以降殆ど会ってなかった」
「…ずいぶん冷たい言い方なさるんですね」
「…君はどうしたい?何が言いたいのだ?」
「……それは…、」
「先生~~、次の授業この教室で合ってましたっけ?」
振り向くとブレーズが扉に寄りかかりスネイプの返答を待っていた…いつからそこに居たのだろう?
「……左様…この教室で合っている」
「そうですか、良かった」
ブレーズは適当に席を見つけ座った。立ち尽くすリリーと目が会うとニッコリと笑う。
「先生、体調良くないので今回は休ませて下さい」
「…よかろう、顔色が悪い。医務室に行くが良い」
スネイプがそう言い切る前にリリーは教室を飛び出した。
医務室には行かず、城を出て校庭を横切り湖の近くにあるブナの木の下まで行くと乱れた呼吸を整えた。
(……馬鹿だ。あんな言い方して自分らしくない…)
木の下の芝生に座って手帳を開く。一番後のポケットに古びた写真が何枚か入っていた。引っ張り出して見てみると、赤ちゃんの頃のリリーとそれを抱えている今より少しシワの少ないスネイプが居た。私はその時の記憶は無いが、ママが友達だって言ってママが撮ったものだった。リリーはセブルスだと泣かなかったのってこの写真を見るたびに思い出して笑っていた。
「………ママ、…」
授業もサボってしまったし、スネイプ先生にもあんなこと言うつもりもなかったのに感情に任せて発言してしまった。恥ずかしくて芝生の上に寝転がって少し目を瞑った。
「…リリー、起きて」
「……ん…、」
いつの間にか寝てしまったらしい。ゆっくり目を開けるとブレーズがリリーの横に寝転がって眺めていた。
「……っなにを」
「もうお昼だよ?昼食たべないの?」
「……要らない。ほっといて」
リリーは冷たくあしらってもブレーズは動じない
それどころかくつろぎはじめて、リリーに先程の魔法薬学の授業内容を話し始めた。あの後スネイプ先生がイラついていて、ハリーにしつこく質問攻めにしたりグリフィンドールの子達に結構酷く当たって減点したし、ネビルって子は薬をかぶって医務室送りだと言うことだった。それを聞いたリリーはハリー達に後で謝らなくては…と思った。
「あの可愛いおかっぱ頭の子も心配してるよ?」
「…パンジーの事言ってるの?」
その子しかおかっぱ頭は居ないよと言ってフレーズは笑う。笑っていたと思えばゆっくり近づいてリリーに覆い被さった。大胆な出来事にリリーが呆気に取られていると、フレーズはリリーの首元に顔を近づけた。ブレーズから甘い香水の様な香りが漂う。
「……シガーの香りだ…リリー、真面目そうに見えて結構悪い子なんだね」
「……シガー?…まさかそんな…」
「プンプンさ。その"素敵"な匂いが誰かにバレたら大変だから次からは消した方がいいよ」
ニヤリとブレーズは怪しく笑うと、秘密にするから俺にも今度分けてよと言って城の方へ行ってしまった。
(……どうして…)
リリーは起き上がり制服の匂いを嗅ぐと確かにシガーの香りがした。ママが亡くなる前によく吸ってた匂い。何故?…周りを見渡すと近くの草むらから煙っていた。さっきまで誰か近くで吸って居たのだろうか。煙ってる草むらをよく見るとなにか動いているような……草木の揺れだろうか?
「…エヴァンス…結局医務室には行かなかったのかね?」
その声に振り返ると、スネイプ先生が立っていた。
「何故ここに?」
「君の寮監なのでね。マダム・ポンフリーに聞けばリリーは医務室に来ていないと言っていた。先程すれ違ったザビニはブナの木の近くに居ると……」
会話を止めスネイプはリリーに近づき顔を突然近づけた。あまりの急な出来事にリリーは座りながら後ずさりをする。
「…エヴァンス…この香りはなんだね?」
「…さあ、知りません」
スネイプは3m離れた距離からシガーの香りに気付いたのだろうか?素早く嗅ぎつけた。自分が原因じゃないとしてもこのまま上手く説明しても面倒な事になった…。
「君から匂うぞエヴァンス…まさかとは思うが…」
「…知りません」
「手を貸せ」
「……いやっ!!!」
ーーバシッ…!
反抗的な態度にスネイプはリリーの手を取り鼻を近づけた。突然の行動にリリーは驚いて手を振り払うつもりが誤ってスネイプの頬を叩いてしまった。
「……はぁ…はぁ……」
「……もうよい、好きにしろ」
「……ごめんなさい、私っ…」
リリーは立ち上がったが、スネイプはすでに城の方へ足早に行ってしまった。
「……ごめんなさい……」
リリーはその場に立ち尽くした。どうする事も出来ずに座り込む。煙っていた草むらをもう一度見るとそこには太った手のひら大の大きな青虫が水タバコを吸ってこちらを眺めていた。