LONG STORY
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キングズ・クロス駅に付いたのは10時だった。トランクをカートに押し込みしばらく歩くと、時計台の下にセオドールが待っている。プラットフォームには魔法使いらしい、ちぐはぐな服装な人親子がチラホラ歩いていた。
「セオ!結構混んでるね」
「…混みすぎて気持ち悪い。早く乗りたい」
セオドールは慣れない人混みに既に疲れているようだった。2人でカートを押しながら9と3/4番線を目指して歩く。目的地に着くとホグワーツ特急に向かう魔法使い達がぞろぞろ柵を通り抜けて行った。リリーの番になり、どう見たって頑丈そうな柵はリリーがカートを押し込むと溶け込むようにしてアーチを潜った。紅色のホグワーツ特急がもくもくと煙を出して待っていた。後ろからセオドールも続く。人々でごった返し、機関車の窓から身を乗り出して家族と話したり、お別れに涙しているお母さんも見られた。
リリー達は空いているコンパートメントの席を探した。3両目はまだ余裕がありそうだった。トランクを押し上げ、しばらく歩くとちょうど2人分座れそうな客室を見つけた。すでに女の子と男の子が1人ずつ座っている。
「…ここ、2人座ってもいいかしら?」
「ええ、どうぞ。空いてるわ」
女の子は読んでいた分厚い本を少しだけ下ろして、空いている席を指差した。女の子はもう新調のホグワーツ・ローブに着替えている。栗色の髪がフサフサしていて、ちょっとだけ威張った話し方をする。その話し方にちょっとパンジーが浮かんだ。
隣に座っている男の子はちょっとふっくらしているてトランクをひっくり返してカエルが居ないか丸めた靴下の中まで見ていた。
「ネビル、そこには居ないんじゃない?」
「…どうしよ~…あ!ごめんなさい、」
カエル探しに夢中になってたネビルは顔を上げて散らばった衣類や雑貨をかき集めてトランクに詰め込んだ。リリー達が座ると女の子がじっと2人を見つめる。
「はじめまして、私はハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は双子?兄妹?」
「従兄弟なの。私はリリー・エヴァンス。隣はセオドール・ノットよ、よろしくね。」
「……」
「僕はネビル・ロングボトム!よろしくね。」
2人ともこちらに手を伸ばして軽い握手を交わした。セオドールにも2人は握手を求めたが、セオドールが一向に手を出さないので、ハーマイオニーが何か言いそうに口を開くと、丁度赤毛の長身の双子が笑いながらコンパートメントの廊下を歩いている所だった。
「本物のハリーポッターだったなあ」
双子の1人がちょんちょんと額を指差す。
「すーげぇーよなあ、迫力あったな!」
ガヤガヤ話しながら通り過ぎると、それを聞いていた。ハーマイオニーの目が輝いた。
「やっぱり今年入学するのね!すごいわ!参考書の通りかしら。私、参考書を2、3冊読んでみたの!実際見てみたいわ…後で見に行って見ようかしら…そうだネビル、一緒に探すついでに見に行ってみない?」
ハーマイオニーは興奮気味に一気に言いかけて、ネビルは全部聞き切れていないのか曖昧にいいよ!と返事をした。
「その基本呪文集も教科書も全部暗記したわ…面白いわよね!」
リリーの隣で基本呪文集を読み始めていたセオドールにもハーマイオニーは興味を示した。
「私も練習のつもりでいくつか簡単な呪文を試したことあるけどみんな上手くいったわ。私の家族に魔法族は誰も居ないの。」
そう言いかけた瞬間、セオドールの肩がピクリと動いた。読んでいた呪文集からハーマイオニーに視線を移すと一瞬だけ冷たい空気が張り詰めた感じがした。……私達の親はみんな純血を気にする。同族以外は入学させるべきではないと当たり前のように教育される場合もある。その差に子供たちは戸惑いが隠せない。
「……へぇ…」
セオドールは一言だけそう言うと呪文集にまた目目線を戻した。
「……?」
「セオドールはちょっとシャイなのよ。ハーマイオニーすごいわね!教科書全部覚えちゃうなんて!」
そう言うとハーマイオニーはパァっと明るくなって一番面白かった本やホグワーツに行ったら確認したいことがたくさんあると目を輝かせながら話した。ネビルと一緒に楽しく聞いた。丁度昼時で車内販売のおばさんがニコニコ顔で現れてドルーブルの風船ガムと、かぼちゃパイ等少しずつ買ってセオドールと分けて食べた。
「そろそろヒキガエルを探しに行きましょネビル、」
「うん!分かった」
ネビルは杖型甘草雨を舐めながらコンパートメントを出るとハーマイオニーと女の子が丁度ぶつかる。ハーマイオニーは謝ったが、ぶつかった女の子は一瞥するだけで何も言わなかった。パンジーだった。
「探したわよリリー!…ちょっとさっき知らない子にぶつかっちゃった、マグルかしら?」
パッパとぶつかった肩を払いながらパンジーは話した
「…どうだろう、分からない。」
リリーは曖昧に答えるとハーマイオニーとネビルが行っている間にローブに着替えようと思った。丁度セオドールも着替えるらしい。
「……まぁ、いいわ!私今からハリーポッター見に行く所なの!また後でね!」
パンジーはそう言ってコンパートメントの戸を閉めて車両の後ろへ歩いて行った。
「……どうして嘘付いたの?」
あまり口数の少ないセオドールがハーマイオニーとネビルが居なくなったところではじめてローブに袖を通しながら呟く。普段なら軽い嘘も流すセオドールなのに何故か聞いてきた。
「…いいじゃない。子は親を選べないもの。」
そう言って長い髪をローブの外に出しながら呟く。それを聞いたセオドールはそれ以上何も言わなかった。汽車の外は深い紫色の空の下で森が見える。徐々に速度を落とし始めているので間もなく着くようだ。