SHORT STORY
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ささやかな休日にリリーはセブルスの家で夕食を振舞う事になった。今まで何だかんだ2人とも食事は簡単に済ませたり外食が多かったのでちょっぴりリリーは緊張した。
前日の夜2人は本が沢山ある書斎の暖炉の前にソファーを運んできて2人で毛布に包まりながらココアを飲むことが日課になっていた。セブルスが作ってくれるココアはちょっぴり甘めで寝る前には丁度良い。
運んできたココアのカップを受け取ると湯気と一緒に甘いココアとミルクの香りが広がった。
ソファーの端に身体を寄せてセブルスが座りやすいように空けると、いつも通りに座って毛布に包まる。キッチンは冷えていたようで、セブルスは足先を擦り合わせた。
パチパチと暖炉から心地よい炎の音が静かに部屋に響く。
炎の暖かさと火の柔らかい明かりが仕事後の事もあってこのまま寝てしまいそうだった。2人は会話をしなくても、そのゆったりした時間をココアを飲みながら一緒に過ごすのがたまらなく好きだった。
気持ちの良い睡魔が一緒にやってきて瞼がだんだん重くなってくる。この時眠れるのがどんなに幸せなことか。
おっと…うっかり寝てしまう前に聞いておかなくては。
いつの間にかリリーは心地良さに負けて寝てしまう所だった。前々からセブルスの食事の好みを聞き出して、セブルスを明日の料理で喜ばそうとリリーは計画していた。
「セブルス明日は何が食べたい?」
「…なんでもいい…それが食べれるなら」
「食べれるわよ!失礼ね…何が好きな料理は?…ほらアップルパイとか家庭料理」
「……記憶にない」
「…?」
セブルスはリリーをチラりと見ると、手の中にあるココアのカップへ視線を落とした。1度口を開きかけたがまだ閉じ何か話すのを躊躇していたがゆっくり話はじめた。
「ー…私の両親は仲が悪かったし、他の生徒が言うちゃんとした家庭料理というのを口にしたのはホグワーツ入学後で私は食事どころか、身体を清潔に保つ方法さえ身に付けること無く入学した」
その事に気付くのにずいぶん時間がかかってしまったと淡々と話した。セブルスは暖炉の炎を見ているはずなのにもっと遠くの方を見ているようだった。黒い瞳に炎のオレンジが反射し話すトーンに対して輝いているように見えた。…普段ならこんな事はセブルスからは話すこと無かったのに。
「……ごめんなさい…私そんなつもりじゃ…」
「……私が話したかっただけだ。気にするな」
(……ああ…)
セブルスはあまり自分の事を話したがらない。無理に聞く事は今までしなかった。少しずつセブルスは自分を明かしてくれるようになってきたのか。
「こんな話はすんもんじゃないな」
「ううん、話してくれてありがとう」
セブルスはリリーと目が合うと少し苦笑いをした。
リリーは手を伸ばしてセブルスの手を握ると慰めるような淡いキスをした。セブルスも答えるように唇を絡ませた。
「…リリーが今まで食べてきて美味しかったものが食べたい」
「……セブルスが好きじゃないものかもよ?」
「……それでいい」
「そっか。セブルスが好みなら良いんだけどな」
リリーはうーんと悩みながら笑って、飲み終わったココアを近くのテーブルに置くとセブルスを包むように抱きしめた。