SHORT STORY
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……オブリビエイト(忘れよ)」
リリーは船を導く星の様だ。
まわりの人より輝いて見える
輝く瞳もしなやかな身体も甘い匂いも
その星に手を伸ばし自分の物にし閉じ込めたい。
いつも物陰から隠れてセブルスはリリーを見ていた。
声をかけようなんてもっと無理だった。
半年程前にリリーがハンカチを落として拾って渡そうとしていた時さえもセブルスは通りかかった生徒に笑われていた。きっと普段グリフィンドールの奴らがいじめるからこうなるんだ…何たる辱め…惨めだ。
それでもリリーはセブルスを見ると笑うこと無く白い手を伸ばしてハンカチを持つセブルスの手に触れた。
「ありがとう、セブルス」
この瞬間、セブルスは何かが弾けたような感じがした。普通の手が無理なら、違う手でこの子を手に入れば良いと。
そんな事無理だと分かってる。
身勝手な理由でそんなことは出来ない。
しかし闇の魔術の虜になっていたセブルスはそんな事までも可能なのではないかと思い始めていた。ずっと閉じ込められなくとも数日…数時間なら。
可哀想な記憶なら消せばいいのだ。
なんて身勝手な理由だろうと分かっていた。
それでもリリーを見る度に狂おしくてしょうがなかった。
リリーを見かける度にセブルスは見とれてしまい何もかもおぼつかなかった。闇の魔術以外にも虜になってしまった。
同じ寮だったリリーは呼び出す事はそんなに大変じゃなかった。それでもセブルスはリリーやまわりから敬遠されているため、先生が呼んでいると言えばいい。セブルスは通りかかったリリーに素早く話し掛けた。
「……リリー、スラグホーン先生が授業終わりに薬品庫の隣の部屋に来いって」
「……あら、何かしら……分かったわ」
「…うん、それだけ」
そう言うとセブルスは足早にその場を去った。
前々からずっと計画していた。単にリリーに近付くだけなのにセブルスは何から何まで警戒していた。好きな人にだけには嫌われたくない。今までそう試みては繰り返し失敗していた。今度こそリリーの前で失敗したくない。
誰も使っていない資材だらけの部屋にリリーを呼び出す。
リリーは時間通りにその部屋にやってきた。
「……先生?」
「インカーセラス(縛れ)…オブスクーロ(目隠し)」
「きゃっ!!」
部屋の暗闇にセブルスは待ち受けていた。突然の出来事にリリーは防御する手立ても無く、後ろ手を縛られ目隠しされて倒れ込んだ。
「……っ!……は…セブルス…?」
「……」
「…離してちょうだい。私はセブルスに何もしてないじゃない」
埃っぽい床にリリーは座りながら後ずさりした。リリーは不安と恐怖で震えていた。セブルスはリリーの方まで座り込み近付くと、リリーの肩に顔を乗せる形で抱きしめた。びくっとリリーの身体が跳ねる。リリーの後頭部に手を回すとサラサラの髪が触れた。息を吸い込むと肺いっぱいに甘いリリーの香りがする。この香りが理性を簡単に失わせるんだ。甘くて…花のような微かにミルクのような甘い香り。
「……ふぅ……ふう…」
「………やめて…」
「……じっとしてて」
頬にキスを落とし、手の甲や首筋の他にも色々なところに小さなキスを幾つもした。セブルスは普通に告白をして…なんて通常な事がまかり通るはずがないと思い込み、一方的なやり方でリリーを愛していた。
「……セブルス…」
「……ああ…リリー…好きだよ」
ちゅっ…ちぅ…とリリーの口元にキスをする度に身体が跳ねるのが可愛らしい。たったそれだけの事なのにここまでする必要があったのだろうか。セブルスにも分からない。
…ただ、嫌われるのが嫌なだけ。
この1回だけならきっと成功するだろう。
最後に忘却術を掛ければ成功だった。
「……オブリビエイト(忘れよ)」
ローブから取り出した杖をリリーに向けようとしたその時、セブルスが魔術にかかってしまった。
すでにリリーがセブルスに忘却術を掛けていたからだった。
「……セブルス…貴方は同じ事を繰り返すのよ。ずっとね…私を襲い続けるの」
縛ってあったであろう手を解き目隠しを外すと、目の前のセブルスに噛み付くようなキスをした。忘却術をかけられたセブルスはうわの空でリリーの舌を受け入れた。唾液がセブルスの口元から溢れだし顎に滴った。
「静かに部屋を出なさい」
そう話し掛けるとセブルスは立ち上がりおぼつかない足取りで部屋を出て行った。
(これで何回目だろう…)
セブルスの行為は半年前から行われていて、今回の忘却術をかける前からリリーを襲っていった。はじめはキスで終わったが、2回…3回と回数が増えるたびにセブルスはだんだん行為がエスカレートしていった。…その行為をされてはじめは恐怖心で身体が拒絶していたが、心のどこかで好きな気持ちが芽生えていた。歪んではいるものの、こんなに必死になって求めてくるセブルスを好きになっていた。
セブルスに何度も忘却術はかけられれはしたが、リリーの記憶は微かに残っていて、いつの間にか行為の途中に縛られた縄を解いていつでも術をかける準備は出来ていた。
しかしエスカレートする度に、セブルスは私を飽きてしまうのではないかと思い始めていた…こんなに楽しいこと他にはない。
セブルスははじめて監禁するための声を毎回かけるのだ。初初しいセブルスが襲ってくる度にリリーはセブルスに忘却術を掛けていた。襲われる度にまだ歪んだ愛に愛されているという安心感があったからだ。リリーもまたセブルスと同じでどこか歪んでいた。