SHORT STORY
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恋人に先立たれ、なかなか立ち直れないでいた。彼が無くなってから私の時はそこで止まっている。
「…セブルス…」
リリーはセブルスの書斎に居た。
夕日が沈みかけて窓からオレンジの光が流れ込んでくる。今も彼の物が整理出来ずそのままになっていた。こんなにも本がたくさんあるのに彼の衣類は少ない。
(ーー少しでも貴方に会えたら…)
叶わないと知っていても祈っていた。本をパラパラ捲り、折れている所を開けると授業の事が走り書きしてあった。…彼の字って女性のように穏やかな字を書く。彼の残した痕跡に胸がまた傷んだ。
「……貴方に会いたい…会いたいっ…」
止まらない想いに鼻の奥がツンっと痛くなって、じわじわと瞳から温かい涙が頬を伝ってこぼれ落ちた。リリーは泣いてばかりだった。
「……セブ…」
「……リリー」
「……?」
振り返ると窓際の夕日に照らされる人物がいた。逆光で暗がりになって顔まで分からなかった。その人物はリリーの方に近づいてくる。誰だか声で分かる。でも幻想なのだろうか
「…セブ、セブルス…」
待ちきれずにその人物の方へ駆け寄って抱きしめた。触れた。セブルスの匂いだ。
「………あぁ、あああーーー!!」
「ただいま」
「…本当なのね、ここに居るのね…!っう…うう…」
夢なのか分からないがリリーはセブルスを強く抱き締めて、大泣きした。確かに居た。セブルスが帰ってきた。
どれくらい泣いたのか分からない。その間にも彼はずっと抱きしめたまま窓際に腰掛けて、2人で毛布に包まっていた。
「………あなた幽霊なの?」
「……多分、君の強い想いが呼び寄せたんだ。どうやって来れたのかは分からない。でも、私も会いたかった」
「…うん、」
「…君がずっと泣いてるのを窓の外から見ていた」
セブルスの包む腕に力が入った。
彼の身体は冷たくて、彼は寒そうにしていた。
「……ここは寒くて…それにひどいな」
「……何?」
「ポストの手紙が入り切らずにグチャグチャだったぞ。請求書だらけだ…それくらいは払ったらどうなんだ?…裏口の鍵も閉まってなかったし頭にくる」
あまりにもいつものセブルスにリリーはいつの間にか笑っていた。あんなに泣いていたのに、彼が帰ってきたおかげでこんなにも笑えるなんて。
「わかった、閉めるわ、閉めるから…」
リリーは立ち上がって裏口に行こうとするが、セブルスが窓際に居るのが信じられなくて、嬉しくて笑ってしまう。こんなに自分は笑うことが出来たのか。
急いで裏口の鍵を閉めて、書斎に戻れば彼は毛布に包まったまま窓際に立って夜空を眺めていた。セブルスの方へ駆け寄って抱きしめる。
「ベットで寝ましょう。ソファーじゃなくて」
「……ああ」
ベットに腰掛け毛布で2人を包み込む。こんなことがまた出来るなんて夢にも思わなかった。セブルスは口元に手を当てて息をフーフーと吹きかけた。
「…何してるの?」
「…キスをするには唇が冷たいから温めてるんだ」
愛おしくて狂おしい
そんな気持ちが押し寄せてリリーはセブルスにキスをした。セブルスが温めた唇はそれでも冷たかったが彼の気持ちが暖かかった。心地よかった。
「……大好きよセブルス、大好き」
「…私もだ、リリー」
「ずっと居れるの?」
「…もちろん…君が良ければ居るよ」
「嬉しいわ…」
セブルスに抱きしめられて、眠くなってきた。もっとセブルスを見ていたいのに、瞼が重くて開かなくなってきた。その気持ちよさに任せて、久しぶりにリリーは深く眠れた気がした。