SHORT STORY
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「ばぁっ!」
「もう!パンジーったら!」
「あはは!」
「ブレーズも来たがってたね、ふふ」
「ただ私たちの水着姿見たかっただけでしょ、ドラコには来て欲しかったけど…」
「なんだかんだ監督生って忙しいもんね」
パンジーと監督生用の大浴場消灯時間ギリギリに侵入した。もちろんドラコには(パンジーは誘う理由も有りつつ)許可を取ったものの、保証されてるわけでもなく自己責任だった。
万が一誰に見つかってもすぐ羽織って逃げられるように水着を着ていた。パンジーは黄色のフリルがあしらわれている水着で私は淡い水着のシンプルなチェックの水着だった。わざわざ大浴場で着るくらいしかない水着だったがそれでも良かったのだ。本当はただ着たかっただけなのかもしれない。2人は貸し切りの広い空間を使って有意義に過ごした。
天井が高くて開放的な空間が何とも心地よい。
月明かりがステンドグラスから淡く輝いて、その中に居るマーメイドがフォークの様なもので髪を梳かしている。
泡風呂を楽しみながらそんな様子を眺めているとパンジーがふと思い出したように近くのローブから綺麗な香水瓶を取り出した。
「みて!」
「なあに?これ」
パンジーの手の中で香水瓶は薄いエメラルドグリーンに輝いていた。
「ママがお土産で珍しい薬買ってきてくれたのよ!これをひと振りすると人魚になれるの!」
「失敗して半魚人になったりしない?」
「しないわよ!……たぶん」
「えぇ~~」
「だってしょうがないでしょ!まだ試してないんだから!」
どうやらパンジーはこの日のために楽しみに取っておいたらしい。しかしリリーの不安な声を聞いて断言出来る自信が無くなったようだ。
「……どっちが先に試してみる?」
「そりゃパンジーでしょう!」
「~~もうジャンケンしましょ!ほら!」
パンジーのタイミングでジャンケンすると見事に1発で負けてしまった!確かに試してみたい気もするがもし半魚人になったら人前に出れない。
「さあ!やるわよ!」
「えぇ~」
先にやらないと分かった途端パンジーは早く試してみたいとぐいぐいリリーの脚を掴みサイドに立て掛けた。脚を奪われ溺れそうになるにも構わず…ってちょっと扱いが雑!
「もし半魚人になったらパンジー呪うから~!」
「成功するからノーサンキューよ!」
ポンッとキャップを外しリリーの脚に液体を垂らすらしい。香水瓶を慎重に傾け僅かな一滴が滴った途端、雫は鱗のように煌めいてリリーの脚に沈み込んだ。たちまち辺りが真っ白になるほど脚が光輝いて、クルクルと渦巻くように宙に舞った。目を薄ら開けると目の前には大きなピンクの尾鰭がヒラヒラと床のタイルを蹴った。鱗のが動く度に7色に薄く輝いてとっても綺麗だった。
「わあ…すごい」
「やったあ!成功だわ!リリーー!ちょっと泳いで見せてよ!水中はどうなのかしら?」
パンジーの言われた通り尾鰭で床を蹴って泡風呂に飛び込めば…なんと心地よいのだろう。泡風呂だから視界は良好じゃないがこんなに自由に泳ぎ回れるなんて…最高だ!少し蹴っただけであっという間に端から端まで泳げてしまう素晴らしい気持ちだった。
「最高!パンジーありがとう!」
「だから言ったでしょう!私もやるわ!」
「……とっくに消灯時間は過ぎておりますぞ」
「「…先生!」」
びっくりして振り返ればいつの間にかスネイプ先生が壁際に佇んでいた。いつからそこにいたのだろう。気配も全く感じられなくて、パンジーとリリーはその場に凍りついた。
「スネイプ先生…いつからそこに…」
「消灯時間を過ぎた5分前だ。君達の笑い声が下の階まで届いていると絵画達から連絡があったのでね。…リリー・エヴァンス君は人魚だったのかね?だとしても消灯時間は守って頂きたいものですな」
「すみません…」
「パーキンソン!…その手の中にある薬はなんだね?…没収とまではいかないが今後使用を禁ずる」
「…はい」
ガックリ肩を落とすパンジー。パンジーが使うのを一番楽しみにしていただけあってちょっと可哀想だった。
「……さて、その薬の効果はいつ切れる?」
「海外製なので裏の字は読めませんが、母が購入した時はきっかり1時間と聞いております」
「…ではエヴァンスは少なくともあと1時間は戻らないと?」
「効能時間が合っていればそうなります」
スネイプは深いため息を付くと辺りをパンジーに片付けさせ、リリーに近づいてきた。
「…何を…」
「運ぶのだ、荷物を。それともなんだね?君はその魚の脚で階段を跳ねて移動するのかね?」
「…お、お願いします。」
スネイプはどこからともなくバスタオルを取り出すとリリーの全身をぐるぐる巻にして包み込んだ。ピチピチ尾鰭が出ているがそんなことかまってられない。ぐいっと身体を引き寄せられてお姫様抱っこをした。落ちると怖いのでなるべく身動きは最小限に抑えた。
「…パーキンソン、この荷物を寮まで運ぶ。先に帰ってなさい。他の先生方に見つかっても話は付けておく。行け。」
「はい、先に行ってまってるねリリー」
「うん、荷物ありがとうね」
全身ぐるぐる巻になって手が使えないので尾鰭でぴちぴち振った。スネイプ先生を見上げるとあからさまに怪訝そうにして眉間のシワが強まった。
「全く世話の焼ける生徒だ。いくら時間があっても足りん」
「反省してます」
そう言ったものの、心の中では嬉しくて。
(人魚になって良かったかも)
ぴちぴちと尾鰭が左右に揺れた。