SHORT STORY
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「…コウモリさん、次はいつ来てくれるの?」
「さあ?いつかな…」
コウモリさんはなかなか名乗ろうとしない。
いつも去り際はリリーを触れるか触れないか程度に頭を優しく撫でて闇の中へ消えてしまう。その瞬間が寂しくてたまらなくなっていた。
週に1度程度コウモリさんはやってきて小さなプレゼントを渡してリリーは目を覚ますを繰り返した。
花やキャラメル等のささやかなプレゼントはリリーを喜ばせた。それとは反対になかなか体調が良くならず苦しい日々が続く。もはやコウモリさんとの時間がリリーの生きる糧だった。
「コウモリさんが私をどこかへ連れて行ってくれたらいいのに」
ふと思った事がそのまま口から出てしまった。
すると突然草原で寝転んでいた視界が歪んで目が覚める。夜の窓辺に目を向けるその姿は近くのリンゴの木の上に佇んでいた。現実の世界で会うのははじめてだったリリーは驚きながらも急いで起き上がって窓から飛び出すように開けた。
「…っ、…名前を教えて」
「セブルス」
「…セブルス…さん、連れてってくれるの?」
「…君の名前はリリーだろう?」
「知ってるのね」
黒いマントから伸ばされた腕を掴み、2階の窓から跨るとセブルスに身体を預けた。自然と腕が伸び、セブルスの首に手を回して抱きしめていた。
「会いたかった」
「…そうか」
大胆な行動でもコウモリさんだと何故か思わなかった。この世界では自由も効かずセブルスに夢中になるのに時間はかからなかった。
「…ここは現実?…幻想?」
「…さあ…?」
セブルスは皮肉に笑いリリーをエスコートするように手を引くとそのまま立っていた木の枝から空中へとセブルスはリリーと一緒に背中から身を預けた。
リリーはゆっくり目を開けると天地がぐるりと回転し満天の星空が地球を覆い尽くす絨毯のように広がっていた。空中に浮かび足は天を向いている。無重力か繊細な重力が天に働いているような不思議な感覚だった。見上げると草原が天井のように風に吹かれてなびいている。
「…すごいわ、そしてとても怖い」
「大丈夫だ。私の手を離さなければ」
そう言ってセブルスはわざと手を離そうとしてリリーが怖がるのを楽しんだ。
2人は天地がびっくり返った世界をしばらく満喫して、風の流れに任せて空中を漂った。
「何故こんな魔法が使えるの?」
「…そういう世界がある」
「知らなかった、そんな素敵な世界」
「…素敵?……それはどうかな」
セブルスは目を閉じてベットに寝転ぶ様に空中にゆっくり倒れ込む。リリーもセブルスの手を離さないように空中に寝転んだ。
「…私は知って良かったの?」
「…空想と幻想の世界、すべて夢のせいにすればいい」
その言葉が頭の中に響いてリリーはゆっくり瞬きをした。目を開ける頃には隣にいたセブルスの代わりにいつもの寂しい寝室がリリーを迎え入れていた。握っていた手には花とシーツが握られていた。