SHORT STORY
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「…また学校行けないの?」
「安静にしてればまた行けるわ」
窓から覗く空が寒々しい曇り空で、重く、どんよりとしていた。空も私のよう。
いつものように優しく母親になだめられてリリーは目をゆっくり閉じた。身体が弱く病気にかかりやすく、このままではまた休学になってしまう。
「…大丈夫よ」
そう言って母親はリリーの布団を掛け直したり、顔にかかる髪をかきあげると静かに部屋を出ていった。
リリーは空想の世界で夢を叶える。
リリーはベットから窓辺へと歩き窓を開けると、空から漂うように飛び降りた。庭に咲いてる甘く香る花たちを眺め、手足で触って草花を感じた。深呼吸をして外気の冷たさを感じた。
空想の世界ではリリーは自由に息が切れるまで走り回れる。庭裏近くの川で水遊びも出来る。ラビリンスの世界だって魔法だって可能だ。
指を鳴らせばマカロンや軽食とティーセットが飛び出し、パジャマからあっという間に華やかなワンピースへとドレスアップされる。近くでその様子を見ていた野うさぎとを友達として迎え入れよう。
「うさぎさん、紅茶は何がいいかしら?」
すると風が強く吹き込んだ。あまりの強さにリリーは目を閉じる。再び目を開けると野うさぎは突然飛ばされてしまったのか居なくなっていた。
「どうして…」
空想のはずなのに夢のように制御出来なくなってきた。空は沈み、星が瞬きはじめる。風はさらに強くなってきて遊べる状況ではない。リリーは怖くなり立ち上がると暗い空の向こうから何がが飛んでくる。……コウモリ?…そう思ったがその姿はどんどん大きくなって人間くらいの大きさでリリーの前に舞い降りると視界が完全に黒く埋め尽くされた。
見上げると血相の悪い鉤鼻の男がリリーを見下ろしていた。見たことないその姿にリリーは驚いて腰を抜かしそうになった。身体が震えそうになりながら口を開いた。
「……怖いわ…あなたは…」
リリーは空想の世界から目を覚まそうとしたが既に夢なのか制御不能だった。目の前の男は見下ろすばかりで何も言わない。
「誰なの、」
「……空想の世界では自由なのだな」
「……どういうこと、?」
まるで今までの私を知ってるかのような口ぶりだった。コウモリの様な男は夜空の瞬く星々に向かって杖を振ると星々はいくつかこちらへ落ちてきて、男が引き抜いた草花降りかかると、いつの間にか白い薔薇の花束に変化した。男はゆっくりリリーに渡す。恐る恐る受け取った白い花束は夜空の下で不思議と光っているように見えた。
「……空想の世界のお姫様へ」
男の手がリリーの頬へと触れられる。
美しい白い薔薇の花束からもう一度男を見上げようと瞬きした時、そこはもう天井になっていてリリーは驚いて起き上がった。
「はぁ、…はあ……、わあ……」
受け取った白い美しい花束はしっかりと
手の中に握られたままだった。