たにんだいじに
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※山崎視点
「あ、藤堂さんだ。お誕生日おめでとうございま〜す」
「え」
「甘いものお好きでしたよね。どうぞどうぞ」
三木ちゃんはいつもの笑顔で、藤堂隊長のお盆に小さなケーキを乗せた。それを見た周りの連中がおめでとー、よかったなー、と口々に祝いの言葉をのべる。そうか、今日この人誕生日だったのか。隊長本人も忘れていたらしく、感動のあまり涙目になっている。女の子に誕生日をお祝いしてもらったことも、手作りのケーキを貰うことも初めてだったに違いない。真選組にいる野郎のほとんどは艶っぽいことにとんと縁がない。かくいう俺もそうだった。
忘れもしない半年前。その日誕生日だった俺はいつものように食堂の列に並び、いつものように三木ちゃんの笑顔に今日一日働く活力を貰おうとしていた。可愛い子の笑顔って見てるだけで幸せになれるよな。加えて三木ちゃんはむさい芋侍の俺たちにも優しくて、いや三木ちゃんは誰にでも何にでも優しかったんだけど、その差別のない当たり前然とした優しさに俺たちはすっかりヤラれてしまった。最初来たときはちょっとギャルっぽくて、イマドキっぽくて不安もあったけど、今ではすっかり骨抜きだった。
いつものようにおはようと挨拶すると、三木ちゃんはおはようございま〜すと間延びした声で返してくれた。は〜、今日もかわいい、頑張ろう、と嚙みしめる俺のお盆に、そっと小さいケーキが添えられた。
え?と顔をあげると、三木ちゃんはいつもと変わりない笑顔のまま、俺を見ていた。
「山崎さん、今日お誕生日ですよね〜。おめでとうございます」
「え?…え!?」
「えー!?なにそれ!」
「ずりー!ずりーよ三木ちゃん!」
放心する俺の周り四方八方からブーイングが飛ぶ。好き勝手に小突かれるがその時俺はケーキしか眼中になかった。
騒ぐ奴らに三木ちゃんは少し心外そうに言い返した。
「山崎さんだけじゃないですよ。皆さんにも用意しますもん。でも今日は、山崎さんが誕生日じゃないですか〜」
ねー、と振られて、こくこくこくと首を縦にふる。なんかもう嬉しさがとめどなかった。
「皆さんの名前と誕生日覚えるのに半年かかってしまいました。ポンコツなりに頑張ったんで、もう忘れないですよ。はい、終わり〜。次の方お味噌汁どうぞ〜」
自分たちも貰えると知り、童貞達は高らかに雄叫びをあげた。よかったな!と色んな奴らにばしばし背中を叩かれて、俺は思わず泣いた。母ちゃん以外の女の人に誕生日を祝ってもらうなんて、もうないと思っていたからその喜びもひとしおだった。ハタチを越えてから美容室のDMでしか祝われることのなかった誕生日に、終止符が打たれたのだ!
三木ちゃんは泣く俺を見てぎょっとして、あわあわと狼狽した。
「ご、ごめんなさい!嫌でした?余計でした?すみません、確認すべきでしたね、山崎さん、ごめんなさい、泣かないで〜!」
「ち、ちが…違くて…う、嬉しくて〜うう〜」
謝る三木ちゃんにそうじゃないことを伝えたくても、次から次へと押し寄せる涙に嗚咽が止まらない。
俺のあまりの童貞力の高さに感化された奴らが、よかったなぁ、よかったなぁと鼻をすすりながら俺の背中をさするので更に泣けてきた。
「なんでィ、贅沢なやつだなー山崎は。三木さん、俺はいりやすぜ。ちゃんと用意してくれよな。山崎はいらないらしいですが」
背後から割り込んできた沖田隊長が事も無げにいうので、俺は必死に腕でケーキをかばった。
「いりますっ、いりますよっ!」
鼻声で精いっぱい感謝を伝えると、三木ちゃんは心底安心したように笑った。
その日から、宣言したとおり三木ちゃんは隊士達の誕生日を覚えていて、一人一人にケーキをくれた。甘いものが嫌いな人には甘くないケークサレを用意して、副長の誕生日にはマヨネーズケーキをこしらえた。副長が夢が叶った、と目頭を押さえるのを見て、この人のマヨネーズへの執着にマジでドン引きした。三木ちゃんもちょっと引いていた。
けどそれを決して口には出さず、俺たちに優しくする三木ちゃんは、もしかしてひょっとすると、俺たちのことが大好きなんじゃないか?と童貞っぽくも考えてしまう。そうだったらいいよなあ、絶対そうだよなあ、と口々に確かめ合うのが俺たちの最近の日課になってしまっている。
いつか本人に直接聞く猛者は現れるのだろうか。
優しさに包まれたい。
2014.7.29
「あ、藤堂さんだ。お誕生日おめでとうございま〜す」
「え」
「甘いものお好きでしたよね。どうぞどうぞ」
三木ちゃんはいつもの笑顔で、藤堂隊長のお盆に小さなケーキを乗せた。それを見た周りの連中がおめでとー、よかったなー、と口々に祝いの言葉をのべる。そうか、今日この人誕生日だったのか。隊長本人も忘れていたらしく、感動のあまり涙目になっている。女の子に誕生日をお祝いしてもらったことも、手作りのケーキを貰うことも初めてだったに違いない。真選組にいる野郎のほとんどは艶っぽいことにとんと縁がない。かくいう俺もそうだった。
忘れもしない半年前。その日誕生日だった俺はいつものように食堂の列に並び、いつものように三木ちゃんの笑顔に今日一日働く活力を貰おうとしていた。可愛い子の笑顔って見てるだけで幸せになれるよな。加えて三木ちゃんはむさい芋侍の俺たちにも優しくて、いや三木ちゃんは誰にでも何にでも優しかったんだけど、その差別のない当たり前然とした優しさに俺たちはすっかりヤラれてしまった。最初来たときはちょっとギャルっぽくて、イマドキっぽくて不安もあったけど、今ではすっかり骨抜きだった。
いつものようにおはようと挨拶すると、三木ちゃんはおはようございま〜すと間延びした声で返してくれた。は〜、今日もかわいい、頑張ろう、と嚙みしめる俺のお盆に、そっと小さいケーキが添えられた。
え?と顔をあげると、三木ちゃんはいつもと変わりない笑顔のまま、俺を見ていた。
「山崎さん、今日お誕生日ですよね〜。おめでとうございます」
「え?…え!?」
「えー!?なにそれ!」
「ずりー!ずりーよ三木ちゃん!」
放心する俺の周り四方八方からブーイングが飛ぶ。好き勝手に小突かれるがその時俺はケーキしか眼中になかった。
騒ぐ奴らに三木ちゃんは少し心外そうに言い返した。
「山崎さんだけじゃないですよ。皆さんにも用意しますもん。でも今日は、山崎さんが誕生日じゃないですか〜」
ねー、と振られて、こくこくこくと首を縦にふる。なんかもう嬉しさがとめどなかった。
「皆さんの名前と誕生日覚えるのに半年かかってしまいました。ポンコツなりに頑張ったんで、もう忘れないですよ。はい、終わり〜。次の方お味噌汁どうぞ〜」
自分たちも貰えると知り、童貞達は高らかに雄叫びをあげた。よかったな!と色んな奴らにばしばし背中を叩かれて、俺は思わず泣いた。母ちゃん以外の女の人に誕生日を祝ってもらうなんて、もうないと思っていたからその喜びもひとしおだった。ハタチを越えてから美容室のDMでしか祝われることのなかった誕生日に、終止符が打たれたのだ!
三木ちゃんは泣く俺を見てぎょっとして、あわあわと狼狽した。
「ご、ごめんなさい!嫌でした?余計でした?すみません、確認すべきでしたね、山崎さん、ごめんなさい、泣かないで〜!」
「ち、ちが…違くて…う、嬉しくて〜うう〜」
謝る三木ちゃんにそうじゃないことを伝えたくても、次から次へと押し寄せる涙に嗚咽が止まらない。
俺のあまりの童貞力の高さに感化された奴らが、よかったなぁ、よかったなぁと鼻をすすりながら俺の背中をさするので更に泣けてきた。
「なんでィ、贅沢なやつだなー山崎は。三木さん、俺はいりやすぜ。ちゃんと用意してくれよな。山崎はいらないらしいですが」
背後から割り込んできた沖田隊長が事も無げにいうので、俺は必死に腕でケーキをかばった。
「いりますっ、いりますよっ!」
鼻声で精いっぱい感謝を伝えると、三木ちゃんは心底安心したように笑った。
その日から、宣言したとおり三木ちゃんは隊士達の誕生日を覚えていて、一人一人にケーキをくれた。甘いものが嫌いな人には甘くないケークサレを用意して、副長の誕生日にはマヨネーズケーキをこしらえた。副長が夢が叶った、と目頭を押さえるのを見て、この人のマヨネーズへの執着にマジでドン引きした。三木ちゃんもちょっと引いていた。
けどそれを決して口には出さず、俺たちに優しくする三木ちゃんは、もしかしてひょっとすると、俺たちのことが大好きなんじゃないか?と童貞っぽくも考えてしまう。そうだったらいいよなあ、絶対そうだよなあ、と口々に確かめ合うのが俺たちの最近の日課になってしまっている。
いつか本人に直接聞く猛者は現れるのだろうか。
優しさに包まれたい。
2014.7.29