短い話
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「マキ、また血を吐いたでしょ」
「何のことですか?」
「コートに血がついてるわ」
ほら、とリナリーの白い指が指した先には時間が経って黒ずんだ血痕がありありと残っていたので僕はしらばっくれるのをやめた。ゴメンナサイと素直に謝るとリナリーが「もうっ」とほっぺたを膨らませるのが可愛いなと思ったので「リナリーは可愛いですね」とそのまま伝えると「誤魔化さないで!」と余計に怒られてしまった。
「体調にはなんら問題ないですよ」
「そういうことじゃなくて、マキは隠すから… 」
「活動に支障をきたすレベルの怪我なら報告します」
「怪我の大小じゃないのに」
リナリーは僕の胃弱体質を知っている数少ない人間だった。僕も彼女も幼少時に教団に連れて来られてそのままとんとん拍子で教団育ちのエリートエクソシストになったクチなのでお互いの過去は割となんでも知っている。だから今更彼女に対して吐血や嘔吐のひとつやふたつ、隠すことではないんだろうけど報告するたびに悲しい顔をして心配されるのが申し訳なくて隠すようになってしまった。本当に、彼女が危惧するほど大したことではないんだけど。
「マキって、どうしてそう淡白なの?もし神田やアレンくんが怪我したこと隠してたらどう思う?」
「心配になります」
「ほら!」
「でも神田もアレンくんも僕じゃないので」
人それぞれではないですか、と言うとリナリーは複雑そうな顔をした。この間リーバーさんにも同じような顔をされたことを思い出した。僕は僕であって他の誰かじゃない。それは他の人にとっても同様なので、もし僕が誰かだったらとか、もし誰かが僕だったらとか、他の人の立場に立って考える意味が僕にはいまいち理解できない、というようなことを伝えると皆そろって同じ顔をするよな。こういう考え方は淡白らしいってことは薄々勘付いてはいるけど間違ってるか?と言われるとそうではないと思う。人はそれぞれ元々特別なオンリーワンであり世界で一つだけの花なんだから、感じ方や接し方だって千差万別のはずじゃないの…?
「そういう、マキの定規で引いたみたいな考え方、たまにちょっと冷たいなって思う」
「え…ごめんなさい…」
リナリーはたまにストレートで感情を伝えてくるのでその度に僕は申し訳ない気持ちになってしまう。そんな悲しい顔させてごめん…リナリーは笑った顔が一番可愛いのに空気読めないこと言ってごめん…。僕は僕の考えが間違ってるとは思わないけど女の子の気分をどんよりさせてる時点で悪いのは僕であるということは分かるので、ああまたやっちまったな…と反省するのである。
「リナリー、僕はリナリー達の負担になりたくないんです。知らなくても差し支えない程度の怪我なら知らずにいてほしいんです」
「そういう…感情が芽生え始めたロボットみたいなこと言うよねマキって…」
リナリーを含めこの教団の人はたびたび僕のことをこのように例えるけどそれってどういう意味なの…?人間始めて20年選手の僕の人格ってロボット寄りなの?それってちょっと引くんだけど…自分で自分に引く…異端でごめん…。
反省。
2016.5.29