1章
ぴりり、と空気がひりついた。
俺と火の国の女王は互いに視線をそらさぬまま、間合いをはかった。女とはいえ、先ほどの矢の射掛け方を見るに、相当な使い手であることは確かだ。油断はならない。
先に動いたのは向こうだった。
「…っ!」
斬りかかってきた向こうの刀を剣で跳ね返し、そのまま斬りかけようとしたが、さすがに素早く身をかわされた。その崩れた体勢のまま向こうが再び斬りかかってきて、そのまま鍔迫り合いになった。
「くっ…」
女の力で、男と互角に鍔迫り合いをするとはとんでもない筋力・体力である。ましてみたところ、こんな力が秘められているとは思えないほどかなりの細身だ。埒が明かないので、一瞬体の力を緩めて隙を作った。さすがに向こうも体勢を崩したが、すぐさま立て直し、片手に持つ刀とは違うきらめきが彼女のもう片方の手に見えた。
「…!」
今の隙を使い彼女は反対の手に短めの刀を手にしていた。
流石に戦闘部族をまとめ上げるだけの力量を持つやつは、たとえ女であっても侮ってはならない、ということか。しかし、大したじゃじゃ馬だ…。
バチバチィッ!
「!」
念のため仕込んでおいた小爆竹が効いたらしい。さすがに向こうも驚いて大きく体勢を崩した。いまだ!これで…
「なに!」
彼女は体勢を崩した勢いのまま、片手で後転しそのまま片足を高々と蹴り上げた。彼女が履いている短靴のつま先から鋭い刃が飛び出し、危うく切りつけられるところだった。
「はっ、まるで歩く武器庫だな。女がそんなに武装しては可愛げがないぞ?」
表情は面をつけているため読み取れないが、気に障ったか、すごい勢いで斬りかかってきた。こうなれば…
「はっ!」
身をかがめ、向かってきた彼女の太ももに素早く切りつけた。
「!」
流石にうずくまったが、向こうも鍛えられた戦士である。そのまま俺の利き手を深く切りつけた。
「くっ…!」
気にしている場合ではない。俺はそのまま剣を捨て、腰に身に着けた予備の短刀を反対の手で、深々と向こうの腹部に突き刺した。
「っ…」
「詰み、だな。」
「!」
火の国の女王はまだ立ち上がろうとしたが、流石に刀で体を支えるのが精一杯のようだ。
「おい、あんたたちの女王を早く手当してやれ。」
「旦那!」
「とどめを刺してやりたいところだが、俺の腕もこんな調子だ。やりすぎて皇帝から文句が来てもめんどくさい。今日のところはこんなところだな。」
「陛下!」
見ると火の国の女王が震えながらまだ俺に斬りかかろうとしていたが、刀にもたれかかり支えるのもやっと、といった風情で、ミンシャンが支えていた。
「おいおいやめておけ、俺のさっきの短刀には毒が仕込んである。お前が俺の腕を切りつけた刀もそうだろうけどな。その毒で死ぬこたあないだろうが、長く放っておいたらいいことはないだろうぜ。ま、とりあえず今日は痛み分け、ってことにしとこうじゃないか。いくぞ、レイ。シンフウたちにも退却の命令だ。」
「は、はいっ!」
レイはまだ不服げだったが、俺について戻ってきた。兵士たちも同じく引き上げた。
僥倖だった。もう少しタイミングが違ったら間違いなくやられていた…。だが面白い。男でもシンフウを除けば俺をここまで追い詰めた奴はいない。ましてや相手は女だ。これは俄然興味が湧いてきた。これだけ骨のあるやつが相手の方が倒しがいがあるってもんだ。
俺と火の国の女王は互いに視線をそらさぬまま、間合いをはかった。女とはいえ、先ほどの矢の射掛け方を見るに、相当な使い手であることは確かだ。油断はならない。
先に動いたのは向こうだった。
「…っ!」
斬りかかってきた向こうの刀を剣で跳ね返し、そのまま斬りかけようとしたが、さすがに素早く身をかわされた。その崩れた体勢のまま向こうが再び斬りかかってきて、そのまま鍔迫り合いになった。
「くっ…」
女の力で、男と互角に鍔迫り合いをするとはとんでもない筋力・体力である。ましてみたところ、こんな力が秘められているとは思えないほどかなりの細身だ。埒が明かないので、一瞬体の力を緩めて隙を作った。さすがに向こうも体勢を崩したが、すぐさま立て直し、片手に持つ刀とは違うきらめきが彼女のもう片方の手に見えた。
「…!」
今の隙を使い彼女は反対の手に短めの刀を手にしていた。
流石に戦闘部族をまとめ上げるだけの力量を持つやつは、たとえ女であっても侮ってはならない、ということか。しかし、大したじゃじゃ馬だ…。
バチバチィッ!
「!」
念のため仕込んでおいた小爆竹が効いたらしい。さすがに向こうも驚いて大きく体勢を崩した。いまだ!これで…
「なに!」
彼女は体勢を崩した勢いのまま、片手で後転しそのまま片足を高々と蹴り上げた。彼女が履いている短靴のつま先から鋭い刃が飛び出し、危うく切りつけられるところだった。
「はっ、まるで歩く武器庫だな。女がそんなに武装しては可愛げがないぞ?」
表情は面をつけているため読み取れないが、気に障ったか、すごい勢いで斬りかかってきた。こうなれば…
「はっ!」
身をかがめ、向かってきた彼女の太ももに素早く切りつけた。
「!」
流石にうずくまったが、向こうも鍛えられた戦士である。そのまま俺の利き手を深く切りつけた。
「くっ…!」
気にしている場合ではない。俺はそのまま剣を捨て、腰に身に着けた予備の短刀を反対の手で、深々と向こうの腹部に突き刺した。
「っ…」
「詰み、だな。」
「!」
火の国の女王はまだ立ち上がろうとしたが、流石に刀で体を支えるのが精一杯のようだ。
「おい、あんたたちの女王を早く手当してやれ。」
「旦那!」
「とどめを刺してやりたいところだが、俺の腕もこんな調子だ。やりすぎて皇帝から文句が来てもめんどくさい。今日のところはこんなところだな。」
「陛下!」
見ると火の国の女王が震えながらまだ俺に斬りかかろうとしていたが、刀にもたれかかり支えるのもやっと、といった風情で、ミンシャンが支えていた。
「おいおいやめておけ、俺のさっきの短刀には毒が仕込んである。お前が俺の腕を切りつけた刀もそうだろうけどな。その毒で死ぬこたあないだろうが、長く放っておいたらいいことはないだろうぜ。ま、とりあえず今日は痛み分け、ってことにしとこうじゃないか。いくぞ、レイ。シンフウたちにも退却の命令だ。」
「は、はいっ!」
レイはまだ不服げだったが、俺について戻ってきた。兵士たちも同じく引き上げた。
僥倖だった。もう少しタイミングが違ったら間違いなくやられていた…。だが面白い。男でもシンフウを除けば俺をここまで追い詰めた奴はいない。ましてや相手は女だ。これは俄然興味が湧いてきた。これだけ骨のあるやつが相手の方が倒しがいがあるってもんだ。
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