1章
ガタンッと揺れた音で目覚めた。
周りを見回し、俺は今日どこで眠っていたのかを把握しようと試みる。
国王であり、皇帝の皇子である俺ともなれば例え水の国の宮殿の自分の部屋であろうと、略奪船の中であろうと、娼館の寝室であろうと、どこで眠っても同じ目覚めを周りが保証する。庶民のための娼館であろうと、俺のためなら最上級クラスのベッドが用意され、戦場に向かう船の中であっても伽の女が用意される。現に今も、俺の隣には裸の女が爆睡していた。
ゆったりとした定期的な揺れが体を襲う。それでようやくここが略奪船の中、火の国への航程の途中であることを思い出した。
「旦那、お目覚めですか?もうすぐで火の国に着きますぜ」
おもむろに外につながる簾を巻き上げ、面長な顔の男が顔を出した。
「兄貴、声がけもせずに中に入っちゃ…」
顔は見えないが、とうもろこし色の小さな頭が見えた。
「レイ、構わん。シンフウ、様子はどうだ?」
上裸にガウンをまとい外を覗くと、隣で眠っていた女がおもむろにきゃっと悲鳴を上げた。
「ちょっと!いきなり入ってくるなんてどういうつもり?」
「もう朝だ。さっさと起きろ。それに男に裸を見せるのがお前の仕事だろ?」
ギャーギャーわめく女を無視し、甲板の方へと赴いた。
「あの女、大分静まりそうにありませんよ?」
シンフウと呼ばれた面長な顔の男が困り果てたように言った。
「構わん、放っておけ。騒いだってあの女にはどうにもならん。
あまりうるさいようなら着ていた服と一緒に小舟にほっぽりだせ。」
「了解」
大真面目な顔でシンフウが言って出ていくのと入れ替わりに、とうもろこし色の髪を持つレイが望遠鏡を片手に駆け寄ってきた。
「旦那、どうぞ。さすがに守りは堅そうっす。」
差し出された望遠鏡を手に取り覗いた。
「思った通りだ。見ろ、あの門の大砲。常に最新の武器を帝国に献上せよ、といっているのに、あの大砲なんかはどう見たって我が国どころか帝国にもない最新式の技術で作られている。武器商人からだってあんな大砲は手に入るまい。
この武器の略奪ができればそれだけでも今回はかなり収穫だ。」
「よっしゃあ、腕が鳴るぜ!
火の国め、レオンの旦那にたてつこうなんて生意気なことを考えたらどんな目にあうか思い知らせてやる!」
レイが文字通り飛び上がった。
「おい、油断するな。相手はただの弱小国家じゃない。戦闘部族だ。」
後ろからシンフウがげんこつを軽くレイに当てた。
「旦那、さっきの女、仰せのとおり着ていた服と一緒に小船にほっぽり出しました」
「ほんとにやったのか・・・」
「まずかったっすか?」
「いや、お前のそういうところがいいと思ってる。」
シンフウが白い歯を出して二カッと笑った。
「殿下、間もなく火の国との戦闘線に入ります。用意はできております。ご指示を。」
別な部下が俺に声をかけてきた。俺を「旦那」と呼ぶのはシンフウとレイの兄弟だけだ。
じいのエイシンなどはそれを聞くと怒り出すが、唯一心を許すこの2人にだけはそう呼ぶことを俺が許している。
「わかった、すぐ行く。あと一つ。」
「はっ。」
「俺のことは陛下と呼べ。俺は水の国の王、レオンだ。そしてやがてはカリンカの皇帝となる男だ。
並みの皇子として扱うな。」
「はっ…失礼、いたしました…。」
「わかればいい。だが二度目はないと思え。」
周りを見回し、俺は今日どこで眠っていたのかを把握しようと試みる。
国王であり、皇帝の皇子である俺ともなれば例え水の国の宮殿の自分の部屋であろうと、略奪船の中であろうと、娼館の寝室であろうと、どこで眠っても同じ目覚めを周りが保証する。庶民のための娼館であろうと、俺のためなら最上級クラスのベッドが用意され、戦場に向かう船の中であっても伽の女が用意される。現に今も、俺の隣には裸の女が爆睡していた。
ゆったりとした定期的な揺れが体を襲う。それでようやくここが略奪船の中、火の国への航程の途中であることを思い出した。
「旦那、お目覚めですか?もうすぐで火の国に着きますぜ」
おもむろに外につながる簾を巻き上げ、面長な顔の男が顔を出した。
「兄貴、声がけもせずに中に入っちゃ…」
顔は見えないが、とうもろこし色の小さな頭が見えた。
「レイ、構わん。シンフウ、様子はどうだ?」
上裸にガウンをまとい外を覗くと、隣で眠っていた女がおもむろにきゃっと悲鳴を上げた。
「ちょっと!いきなり入ってくるなんてどういうつもり?」
「もう朝だ。さっさと起きろ。それに男に裸を見せるのがお前の仕事だろ?」
ギャーギャーわめく女を無視し、甲板の方へと赴いた。
「あの女、大分静まりそうにありませんよ?」
シンフウと呼ばれた面長な顔の男が困り果てたように言った。
「構わん、放っておけ。騒いだってあの女にはどうにもならん。
あまりうるさいようなら着ていた服と一緒に小舟にほっぽりだせ。」
「了解」
大真面目な顔でシンフウが言って出ていくのと入れ替わりに、とうもろこし色の髪を持つレイが望遠鏡を片手に駆け寄ってきた。
「旦那、どうぞ。さすがに守りは堅そうっす。」
差し出された望遠鏡を手に取り覗いた。
「思った通りだ。見ろ、あの門の大砲。常に最新の武器を帝国に献上せよ、といっているのに、あの大砲なんかはどう見たって我が国どころか帝国にもない最新式の技術で作られている。武器商人からだってあんな大砲は手に入るまい。
この武器の略奪ができればそれだけでも今回はかなり収穫だ。」
「よっしゃあ、腕が鳴るぜ!
火の国め、レオンの旦那にたてつこうなんて生意気なことを考えたらどんな目にあうか思い知らせてやる!」
レイが文字通り飛び上がった。
「おい、油断するな。相手はただの弱小国家じゃない。戦闘部族だ。」
後ろからシンフウがげんこつを軽くレイに当てた。
「旦那、さっきの女、仰せのとおり着ていた服と一緒に小船にほっぽり出しました」
「ほんとにやったのか・・・」
「まずかったっすか?」
「いや、お前のそういうところがいいと思ってる。」
シンフウが白い歯を出して二カッと笑った。
「殿下、間もなく火の国との戦闘線に入ります。用意はできております。ご指示を。」
別な部下が俺に声をかけてきた。俺を「旦那」と呼ぶのはシンフウとレイの兄弟だけだ。
じいのエイシンなどはそれを聞くと怒り出すが、唯一心を許すこの2人にだけはそう呼ぶことを俺が許している。
「わかった、すぐ行く。あと一つ。」
「はっ。」
「俺のことは陛下と呼べ。俺は水の国の王、レオンだ。そしてやがてはカリンカの皇帝となる男だ。
並みの皇子として扱うな。」
「はっ…失礼、いたしました…。」
「わかればいい。だが二度目はないと思え。」