短編集


 私は、和葉。
 就労継続支援B型作業所『ラヴィ』の一員だ。
 私は二年前に適応障害と診断され、美大卒業後就職したイラスト制作の一般企業を離職した。
 そして、此処に通い始めて、半年になる。
 『ラヴィ』でも私はイラストを描いているが、上手くいかない時も多々ある。

 私は、タブレット端末の四角い枠組みに必死にイラストを描いていく。
 しかし、今、描いては消してを繰り返している。
 どうも、上手くいかないのだ。

「どうしたの?和葉ちゃん」

 休憩時間。
 無意識に唸っていた私に支援員さんが声をかけてくれた。

「それが、どうも筆が乗らなくて……」
「う~ん、じゃあ、タオル検品とかして気分転換する?」
「はい……」

 私はその休憩の後、タオル検品作業に加わった。
 他の利用者さんも、心安く歓迎してくれる。
 私はそれで少し安心した。
 やっぱり、領域ってあると思うから、いつもは違う仕事をしている私が入っても大丈夫なのかと言う心配はあったのだ。

 支援員さんが丁寧に指導してくれて、私はもたもたしながらもなんとかタオル製品の検品をこなすことができた。
 そして、ある一人の利用者さんの手さばきに、圧倒される。
 彼女は天音さん。私より少し年下だったような気がする。
 彼女はてきぱきとタオル製品についたゴミを取って、破れの検品もして、一糸乱れぬ手さばきでタオルを畳んでいく。
 その姿に、私は感動した。

 お昼休憩。
 私は天音さんに話しかけてみることにした。

「天音さん」

 天音さんは突然話しかけてきた私に驚いたのか、きょとんとしていた。
 その表情が年相応で可愛い。

「和葉さん。どうしたんですか?」
「天音さんをモデルにイラスト描いていい?」
「え?!」

 私は、必死に説明した。
 天音さんの検品の姿に感動したと。
 貴方をモデルにイラストを描いてみたい。と。
 天音さんは少し悩んだようだった。

「私は、いいですけど、支援員さんの許可は?」
「これから取る!」
「ええ……」

 私の勢いに少し圧倒されたのか、天音さんは眉をハの字にする。
 しかし、次第に笑顔になる天音さん。

「よかったです」
「うん?」
「和葉さんがやる気出てよかった。そのきっかけが私なのが嬉しい」

 私たちは笑い合い、昼食を食べ終わってから支援員さんに事情を話した。
 結果、天音さんはSNSとかの掲載許可はしているし、そういうのもいいかもね、と言う話になり、午後の作業から天音さんをモデルにイラストを描き始めた。

 あんなにスランプだった私は、久しぶりに凄く楽しくイラストが描けた。

 背景は何色にしよう?
 そんな話を天音さんとしたら、「私は空色がいい」と言ってくれたので、私は背景いっぱいに空色を塗った。

—end—
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