雨と姫
「桜子はさ、蒼依くんのこと、どう思ってんの?」
急に、放課後女子会するよ!!て蓮華さんにいわれて着いてきたカフェで、私はそんな追究を受けるなんて思ってなかった。
蓮華さんはコーヒーフロートを飲みながら、ニコニコしている。
蘭香さんはメロンソーダ、椿姫さんはオレンジジュース、私はコーラフロートを注文してあるけど、その質問を聞いてアイスで喉を詰まらせるという珍行動を起こしてしまった。
「お二人はとてもお似合いだと思うのです」
う、眩しい!蘭香さんの可憐な笑みが眩しい!
そして、珍行動を起こした私を変に思うことなく、三人は口々に蒼依くんの話をしてくる。
「正直、嫌になってない?蒼依くんの愛重いでしょ?」
「……桜子さんへの好きの気持ちが溢れてますよね」
まあ、好きな人間じゃなかったら数十万もするギター買ってくれてないよねとも思うし、あれこれ貢ごうとしたり、最近の蒼依くんの私への寵愛はちょっと重い気もするけど、悪い気はしないんだよなぁ。って言ったら、蓮華さんがニヤァと悪戯に笑った。
「いつから好きなの?」
「……」
初めて『レイン』のライブに行ったあの日。
ファンを煽りながら楽しそうに歌い、ギターを愛でる彼に、とても言い表せない感情を感じたのが、始まりだった。
でも、私はファンの一人だから、って諦めてた。
そしたら、学園長が私を見つけてくれた。蒼依くんと引き合わせてくれた。
あの日、初めて対面した日に、私は確実に恋に落ちた。
彼がくれる愛情が愛おしくて、狂おしい程嬉しくて。
「でも、私でいいのかなって、思うんです」
私は、平々凡々な一般庶民。
みんなみたいな輝かしい軌跡なんてないし、裕福でもない。
「蒼依くんの株を落とさないか、それだけをずっと考えてるんです」
すると、蓮華さんは、困ったように眉を顰めた。
「桜子、あんたが蒼依くんの株気にしてどうすんの?あんたがなにしようと、蒼依くんはあんたが好きで傍にいたいんだろうから、素直に傍にいてやんな」
「……そうです、好きなら、尚更」
「わたくしもそう思うのです!」
私は素敵な優しい仲間に背中を押され、せめて『姫』としての役割をこなそうと、誓った。
私の薬指に桜の刻印のリングはない。
まだ、ない。
でも、それは蒼依くんの采配でもらえるか決まるもの。
だからせめて、私は他人から見て恥ずかしくない人間になろう。
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