雨と姫
桜子が春姫になり一週間が経ったが、俺は益々桜子を愛するようになった。
俺は愛情表現が少し重い、というか大げさらしいが、桜子は何も言わず受け取ってくれている。
それだけで、俺は天にも昇る勢いだった。
ある日、『レイン』だけで男子会しようと白斗が言い出して、仕方なく参加した俺だが。というか、俺の家で開催すると言うから参加せざるを得なかった。
しかし、早々に参加を後悔することになる。
「いやぁ、蒼依氏、寵愛が止まりませんなぁ」
「それを嫌がらず受け入れる桜子すげぇよな!」
「蒼依の愛は重いけどなぁ」
いや、お前ら言いたい放題だな?
しかし、桜子の気持ちは俺はまだ分からない。
もし、桜子が『恋人』という立ち位置が嫌だった場合、俺は酷な事をしていることになる。
「……好いた男以外に好かれても嬉しくないんだろうか。アイツは、無理してるんだろうか……」
そういって俺が呟くと、幼馴染の三人はそれぞれ顔を見合わせ、深い深い溜息を吐いた。
いや、そんな呆れられても困るんだが。
こちとら真剣に悩んでるんだぞ。
「いや、蒼ってさ」
「うん?」
「見かけによらず繊細ぞな、蒼依氏って」
「わがままプーなのにな」
いや、玄師と白斗、待ちなさい。
いや、繊細はまあまあ分かるけど、わがままプーは言いすぎだからな?
「俺はわがままプーじゃない」
「いや、プーだろ。どうせ意見も聞かずに『俺とお揃いな!』ってギブソンプレゼントしたんだろ」
「い、いや、意見は聞いた!レスポールタイプがいいって言ったから」
その言葉に、炎也が「まあ、桜子を気に入る気持ちはわかるけどなぁ」と俺の桜子寵愛を肯定してくれた。
その中に、炎也が桜子を好きだという疑問は浮かばなかった。
炎也は蓮華を愛し、寵愛しているからだ。
「正直さ、」
「うん?なんだよ白斗」
「お前は桜子ちゃんのこと好きなの?」
途端、俺の顔は、耳まで真っ赤に染まった。
「「「図星~」」」
「うるさい。好きだから姫にしたんだろうが」
「あんなに近づいてくる女の子を切り捨て続けてた蒼依氏がねぇ」
いや、語弊がとてもある。
桜子以外の女は何かを企んでるのが見え見えだったんだ。
玉の輿とか、そういうのを企んでる奴らばっかだから、誘いを断り続けた。
でも、桜子は違うんだ。
純粋に、音楽が好きでいるような女の子だから、俺は惹かれたんだ。
「ピックは渡したのか?」
「ああ」
「指輪は?」
「……」
問題は、そこだった。
『姫』にはなったが、『恋人』になったのか、と言われれば、否となる。
他の『帝』は、『姫』とそれぞれのモチーフを刻印したピックやスティックと指輪をペアで持っている。
炎也は蓮の花、白斗は蘭の花、玄師は椿の花だ。
『姫』の名前がその季節の花の名前を使っていて、運命だと思った、と意外にロマンティストな玄師は言ってた。
丁度、俺の『姫』も春を代表する桜を使った名前で、運命を感じているが、正直に言うと、まだ桜子の気持ちがよく分からない。
俺に好意を抱いてくれているのは分かるが、それが恋愛感情なのか友情なのか、イマイチ分からない。
「まあ、ゆっくり行けばいいんじゃねぇの?お前らのペースはあるだろうし」
「白斗……」
白斗は揶揄ってくるときはすっごい鬱陶しいけど、頼りになる兄貴なんだよな。
俺らの中で一番誕生日早いって言うのも関係してるのかな。
俺には頼りになる幼馴染がいる。そして、愛おしい姫も。
俺は、俺たちはゆっくりのペースで行こう、そう決めた。
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