雨と姫
蒼依くんから恥ずかしい告白を受けたので、少し頬が赤かったかもしれない。
でも、スタジオに行かなければならないので私たちは並んで道を歩く。
しかし、しっかり蒼依くんが車道側を歩いてくれる辺り、育ちがいいなぁって感じがした。
そういうのをさらっと出来るのが、紳士たるゆえん、好かれる理由なのかな。
「お、待ってたぞ~」
スタジオ内に入ると、そう言って私たちに声をかけてくれたのは『レイン』ギターの五月雨さんだった。明るくて、熱い男って感じがする。
「桜子、ギター買えた?」
フレンドリーに話しかけてくれるのは、『四季姫』ギターの
私は、「蒼依くんが買ってくれて……」と相棒になったギブソンをケースから出して見せる。
「ギブソンか」
「お揃いですのね」
そう言ってニヤニヤしているのは、『レイン』のドラムの秋雨さん。ワイルド&セクシーって感じ。
そして、可憐な微笑みを浮かべているのは、『四季姫』ドラムの
「蒼依氏が押し切ったに一票。ヒヒっ」
「……同じく」
すこし不思議な感じのする『レイン』ベースの氷雨さんと凛としてクールな『四季姫』ベースの
「っていうか、桜子、熱ある?顔赤くない?」
「え!?」
まずい。バレてしまった!!
変な誤解をされないように、と思って言葉を紡ごうとしていたら、それを蒼依くんが自慢げに遮った。
「俺の愛情表現に照れてるんだろ」
いや、待って?
なんでそんな誤解を招くこと言うの?
ほら見ろ、他のメンバー六人全員がニコニコしちゃったじゃないか!!
「へぇ、桜子ちゃん、蒼依になにされたの」
「い、いえ、なにも」
「蒼依氏なにしたの?」
答えようとする蒼依くんを遮って、私がぎゃぁぎゃぁ悲鳴を上げていると、何かを察したのか他の六人はニコニコを辞めないまま、自身の相棒たちのチューニングを始める。
「まぁ、とりあえず、桜子のギターはあとにして、歌だけでも合わせよう」
筒井さんがギターのショルダーを肩にかけ、そう誘ってくれる。
その一言で、竜田さんはスティックを持ちドラムセットへ、宇津田さんはベースのショルダーを肩にかけて準備をする。
『レイン』のメンバー四人はこちら側とガラスで隔てたソファーとレコーディングの機械を置いているスペースに移動して、私たちの初めての音合わせを聴いてくれるみたいだ。
私が歌詞をつけたのは十曲中三曲。
私は、演奏に合わせてマイクに向かって、歌い始める。
私が今できる精一杯の歌唱をすると、不服そうだった蒼依くんが備え付けのソファーに座り満足げに笑みを浮かべていた。
嗚呼、伴奏ありで歌うのって、こんなに楽しいんだ!!
初めての音合わせは大成功で、他のメンバーからの評価も上々。
私は正式に『四季姫』の一員になった。
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