引いたのはドラゴニック・オーバーロード。
トリガーは――なし。
この瞬間、幸子の敗北が決定した。
インフィニットゼロ・ドラゴンの攻撃を受けたドラゴニック・オーバーロードの姿が悲しげな咆哮と共に砂塵のように消えていく…。
同時に空間が暗転し、元の櫂の自宅に戻った。
敗者である幸子に待っているのはリバースの洗礼。
「ああっ……!!」
幸子はがくりと両膝をついた。
心が黒く塗りつぶされていくような不快感に襲われ、思わず両肩を抱きしめる。
「あ、あ……」
その場にしゃがみ込んだまま顔をあげると、幸子の使用していたカード…ドラゴニック・オーバーロードを手に取る櫂が目に入った。
カードを一瞥し、彼はすぐに幸子へと視線を移す。
「トシ…キ……」
鼻の奥がツンとして、櫂の姿がボヤける。
櫂を――取り戻せなかった…。
その現実が幸子の胸に突き刺さり、不快感と共に心を深く抉った。
「ト…シ…キ……」
滲んだ櫂の姿に向けて震える手を伸ばす。伸ばした手を赤黒いオーラが包んでいく…。
やがてそれは全身に広がり――全ての光を奪いさった時、幸子の瞳から涙が一筋零れた。