貫く愛
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鍵のかかっていないドアは呆気なく開いた。
家の中は薄暗く、シンと静まり返っている。本当に櫂は戻っているのかと訝しげに思いながら、幸子は靴を脱いで玄関を上がった。
「トシキ…?」
リビングを覗きながら遠慮がちに声をかけてみる。薄暗い部屋から返ってくる声はやはりなかった。
「(部屋で寝てるのかな?)…っ、きゃあ!!」
「何処へ行っていた?」
突然背後から抱きすくめられ、身構えていなかった幸子は小さな叫び声をあげてしまった。しかし耳許で発された聞き覚えのある声に、彼がこの家の主である自分の恋人だと気づく。
「俺はここで待てと言ったはずだ」
咎めるような声音がまた耳許で響き、抱きしめる腕に力が籠った。
「トシキ……っ、ん…!!」
体を束縛されている為、自由になる頭だけで彼を振り向いた途端、顎を捕らえられ深く口づけられた。
「ん、う……、や…っ!」
貪るような激しい口づけから逃れるように、懸命に体を捩り櫂の腕から抜け出した。
その反動で床に尻餅をついた幸子は、荒い息を吐きながら今まで深い口づけを交わしていた男を見上げる。
思いもよらぬ抵抗を受け、驚いた様子の赤い光を帯びた翡翠が、彼女を見下ろしていた。
「…何処へ行っていた?」
濡れた櫂の唇が先程と同じ質問を紡ぐ。
幸子は櫂から距離を取って立ち上がった。
「トシキこそ何処へ行っていたの?」
「……お前が知る必要はない」
「言えないところ?」
「……」
櫂は答えない。その沈黙が辛い。
だが幸子は、あえて自らの身を切るような質問を更に浴びせた。
「各地のファイター達をリバースさせたのはトシキなの…?」
「!?……」
「ねえ、そうなの?」
「…だったらどうした?」
否定をしないのが肯定の意――その事実に胸が締め付けられる。
「話はそれだけか」
「っ…」
「幸子」
「いや…っ」
伸ばされる手を拒否し、幸子は数歩後退った。
「幸子、お前は俺の事だけ考えていればいいんだ」
「考えてる…。トシキの事だけ」
怖い。悲しい。苦しい。
様々な負の感情に負けそうになる。
しかし目の前の男を守りたい一心で気持ちを奮い立たせた。
無意識にコートのポケットに入れた手が固いものに触れる。幸子はそれをぎゅっと握りしめた。
「何をする気だ?」
幸子の行動に気づいた櫂が、伸ばしていた手を引きながら尋ねた。
「ファイトで勝てば、リバースから解き放たれる――だよね」
「……」
「それなら私が あなたを元に戻す!」
ポケットから出した手…握りしめていたデッキケースを櫂に突きつけた。
「櫂トシキ、あなたにファイトを申し込みます!!」
家の中は薄暗く、シンと静まり返っている。本当に櫂は戻っているのかと訝しげに思いながら、幸子は靴を脱いで玄関を上がった。
「トシキ…?」
リビングを覗きながら遠慮がちに声をかけてみる。薄暗い部屋から返ってくる声はやはりなかった。
「(部屋で寝てるのかな?)…っ、きゃあ!!」
「何処へ行っていた?」
突然背後から抱きすくめられ、身構えていなかった幸子は小さな叫び声をあげてしまった。しかし耳許で発された聞き覚えのある声に、彼がこの家の主である自分の恋人だと気づく。
「俺はここで待てと言ったはずだ」
咎めるような声音がまた耳許で響き、抱きしめる腕に力が籠った。
「トシキ……っ、ん…!!」
体を束縛されている為、自由になる頭だけで彼を振り向いた途端、顎を捕らえられ深く口づけられた。
「ん、う……、や…っ!」
貪るような激しい口づけから逃れるように、懸命に体を捩り櫂の腕から抜け出した。
その反動で床に尻餅をついた幸子は、荒い息を吐きながら今まで深い口づけを交わしていた男を見上げる。
思いもよらぬ抵抗を受け、驚いた様子の赤い光を帯びた翡翠が、彼女を見下ろしていた。
「…何処へ行っていた?」
濡れた櫂の唇が先程と同じ質問を紡ぐ。
幸子は櫂から距離を取って立ち上がった。
「トシキこそ何処へ行っていたの?」
「……お前が知る必要はない」
「言えないところ?」
「……」
櫂は答えない。その沈黙が辛い。
だが幸子は、あえて自らの身を切るような質問を更に浴びせた。
「各地のファイター達をリバースさせたのはトシキなの…?」
「!?……」
「ねえ、そうなの?」
「…だったらどうした?」
否定をしないのが肯定の意――その事実に胸が締め付けられる。
「話はそれだけか」
「っ…」
「幸子」
「いや…っ」
伸ばされる手を拒否し、幸子は数歩後退った。
「幸子、お前は俺の事だけ考えていればいいんだ」
「考えてる…。トシキの事だけ」
怖い。悲しい。苦しい。
様々な負の感情に負けそうになる。
しかし目の前の男を守りたい一心で気持ちを奮い立たせた。
無意識にコートのポケットに入れた手が固いものに触れる。幸子はそれをぎゅっと握りしめた。
「何をする気だ?」
幸子の行動に気づいた櫂が、伸ばしていた手を引きながら尋ねた。
「ファイトで勝てば、リバースから解き放たれる――だよね」
「……」
「それなら私が あなたを元に戻す!」
ポケットから出した手…握りしめていたデッキケースを櫂に突きつけた。
「櫂トシキ、あなたにファイトを申し込みます!!」