「リンク…ジョーカー？」
全く聞いたことのないクランだ。
口に出すと、さっき感じた嫌な予感が確信に変わるようだった。
「リンクジョーカー…圧倒的な力を持ち合わせた最強のクランだ」
櫂が嬉しそうに説明する。
「俺は最強の力を手に入れた」
「ト、トシキ…」
「これさえあれば…俺はもう 誰にも負けない!!」
櫂の表情が変わった。
まるで禍々しいオーラが彼を呪縛してしまったかのように…。
「トシキどうしたの？何かいつもと違う…」
「違わないさ。だが、そうだな。敢えて言うなら…俺は生まれ変わった」
不気味な笑みを浮かべた櫂は、ソファから立ち上がると幸子を射抜くように見た。
「幸子、俺に逢いたかったんだろ？」
「そ、そう…だけど…」
「なら、なぜそんな所に突っ立っている。早くここへ来て俺の腕に抱かれろ」
この人は一体……
「ちが…う…」
青ざめた顔で首を横に振りながら一歩後退さる。男が一歩こちらに歩み寄った。
「何をそんなに怯えている？」
「や、来ないで…っ、きゃあ!!」
素早い動きで櫂の手が幸子の腕を掴み、引き寄せられたと思った時にはもう、ソファに倒されていた。
「お前は俺のものだ。誰にも渡さない」
のし掛かってくる櫂の表情が彼ではないように見えて怖い。幸子の体を恐怖が蝕む。
「トシキ……やめて…」
「怯える必要はない。お前はただ、俺に委ねていればいいんだ。幸子」
顎を掴まれ荒々しく唇を重ねられた瞬間、幸子の目じりに溜まった涙が零れた。
そんな２人を呪縛するように、リンクジョーカーは禍々しい力を発していた。