大所帯でワイワイと雀ヶ森お気に入りの店に移動中の事だった。
「?!……」
最初に異変に気づいたのは新城。立ち止まり何かを見上げている。彼の視線の先を辿ると、それは目の前のビルに向けられていた。
「どうしたんです、テツ」
「…いや、なにか様子がおかしいと感じてな」
眉を潜めて新城は呟いた。
ビルの側面に設置された大型ディスプレイはニュースが映し出されていたが、時折ノイズのように砂嵐が走っていたのだ。
「故障してるのかな？」
「それにしては…周りの反応が薄すぎる」
確かに新城の言う通りだ。
ニュースを観ているビジネスマンもちらほら存在するが、ノイズを不快に思っているような素振りはない。
「みんなノイズには気づいてないみたいですね」
その瞬間 街頭ビジョンの映像がパッと切り替わった。
画面に映し出されたのは立凪タクト。どうやら彼の姿が見えているのは自分達だけ。つまりヴァンガードファイターだけのようだ。
幸子の横にいたスイコが小さく「タクト」と叫ぶのを聞いた。
そういえばスイコと会うのはあの日以来だ。
あの日――幸子がタクトを訪ねて立凪財閥のビルへ行った時、スイコから禍々しい雰囲気を感じたが、今はそれがない。
普段の彼女に戻った背景には雀ヶ森が関係しているとなぜか思えた。
緊迫した空気が流れる中、邪悪な笑みを浮かべたタクトが告げるは驚愕の事実。
『今なおリバースファイターは増え続けている。彼らの増加に従ってゲートは広がっていきます。そしてこれらが地球を覆った時――この星は虚無の闇に覆われて全ての命は闇に堕ちる』
それは幸子やレン達だけではない。
全世界のファイターへと届けられていた。
『どうか皆さん、残り少ない平和な日々を絶望と共にお過ごしください。リンクジョーカーが支配する世界にはそんな絶望がふさわしいですから』
気に障るような厭らしい高笑いを残し、タクトの姿は街頭ビジョンから消えた。
同時に街にはまたいつもの色が戻る。