目の前に広がるのは青い海に白い砂浜。そして頭上に燦々と輝く太陽。
「楽しいバカンスになりそうですね」
「はい、レン様。思いっきり満喫しましょう♪」
顔の前に手を充て陽射しを遮りながら あちこちを忙しなく眺めて ほわーんと笑う雀ヶ森。そんな彼に両手を握り合わせた鳴海も嬉々として同意する。
立凪財閥の招待により南の島 リゾートアイランドへやって来たNAL4。
これはVFサーキットソウルステージで見事勝利を収めたご褒美とも言えるのだ。
「来て良かったですねー、櫂。たくさん遊びましょう!!」
「……勝手にしろ」
「と、トシキ…！そんな言い方は…!!」
ノリノリな雀ヶ森の言葉に対し櫂はいつもの如く無愛想に応えた。その受け答えに何となく幸子の方がヤキモキしてしまい、小声で軽くたしなめた。
「いいんですよ、幸子。気にしてませんから。それより――ノリの悪い櫂なんて放っておいて、僕達はバカンスを楽しみましょうね。幸子」
「ちょ…レン君!!?」
雀ヶ森が無邪気な笑顔でさりげなく幸子の肩を抱いた。
「レン様ー!!!」
「触るな！」
鳴海の金切り声と櫂の怒りを含んだ声が重なる。
独占欲の強い恋人の手により、幸子はすぐに雀ヶ森から引き剥がされた。
「いいじゃないですかスキンシップくらい」
「人を選んでしろ」
「幸子に触っちゃダメなんですか？」
「当たり前だ！ それに気安く呼ぶな」
「はいはい。じゃあユッキーならいいですか？」
「………フン」
心外そうに鼻を鳴らす櫂。
悪びれた様子もない雀ヶ森は、こういった普段垣間見ない櫂の一面を思いっきり楽しんでいるように見えるのは気のせいではないだろう。
「ちょっと櫂トシキ！レン様にその態度は何なの!?」
「あの、ごめんなさい。アサカさん。トシキも決して悪気があるわけじゃ…」
こと雀ヶ森となるとムキになってしまう鳴海に フォローを入れようとするも、逆にキッと睨まれてしまった。
「木梨幸子！調子に乗るんじゃないわよ!!」
「ええーっ!!?」
どうやら幸子に対する雀ヶ森のスキンシップが酷くお気に召さなかったらしい。
「それくらいにしておけ。そろそろ行くぞ」
やれやれと首を横に振りながら新城テツが言った。