IH予選2日目 午後
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猫又、直井と明日からの練習の打ち合わせをしている黒尾を待ちながら、幸子はぼんやりと暮れかけている夕空を見上げた。
繋ぐバレーをモットーにしたみんならしい最高のプレーだった。
…でも負けてしまった。その事実が幸子の胸を痛くする。
泣いてはいけないと思いつつ堪えていたものが徐々に表に現れ、目にじわりと涙の膜が張った。
「幸子…?」
遠慮がちに声をかけられ顔を上げると、部室に忘れ物を取りにいっていた孤爪が戻っていた。
「忘れ物あった?」
「うん…」
と孤爪は頷いてから、幸子の潤む瞳をチラリと確認した。
「……幸子、何かあったの?」
幼馴染みの孤爪はひとつ年下ではあるが、昔からよく相談相手になってくれた。
そんな孤爪に指摘された為か、幸子の涙は引っ込む処か逆に表に出てこようとして。
「研磨、私…悔しいよ。みんな全国目指してたくさん練習重ねてきたのに。あんなに……頑張ってきたのに」
重ねてきた練習がムダになったとは一切思わない。
東京都ベスト8のみんなを誇りに思う。
だが、その血の滲むような努力が目標を叶える前に潰(つい)えてしまったのが単純に悔しい。
悔しくて、苦しい。
マネージャーである幸子は、そんな部員達を一番近くでずっと見てきたから。
「うーん…まあ、そういう時もあるよ。格闘ゲームだって、同じ相手と対戦したって勝つ時も負ける時もあるし」
孤爪が決して自分達が対戦相手に劣っていただなどと思っていないのが嬉しい。幸子は目頭を指先で拭った。
「ごめん…。私、研磨に甘えちゃってるね」
「別にいいけど……でも幸子。それ、俺よりもクロの前で吐き出した方がいいんじゃない」
「…っ。できないよ、そんなの」
首を横に振る。
「だって…きっと鉄朗が一番悔しい思いをしてる」
試合後。消沈する部員達の中で黒尾は誰よりも明るく前向きに振る舞っていた。…本音を隠して。
主将という立場がそうさせているのだろう。
そんな黒尾を前にしてコートに立ってもいない自分が泣き言など言えるはずもない。
「幸子! 研磨!」
不意に背後で聞こえた黒尾の声に会話は自然と中断した。
2人の傍まで足早にやって来た黒尾は妙な空気に一瞬片眉を上げたが、特に追及せず体の前にあった鞄を後ろに追いやった。
「待たせたな。帰るぞ」
繋ぐバレーをモットーにしたみんならしい最高のプレーだった。
…でも負けてしまった。その事実が幸子の胸を痛くする。
泣いてはいけないと思いつつ堪えていたものが徐々に表に現れ、目にじわりと涙の膜が張った。
「幸子…?」
遠慮がちに声をかけられ顔を上げると、部室に忘れ物を取りにいっていた孤爪が戻っていた。
「忘れ物あった?」
「うん…」
と孤爪は頷いてから、幸子の潤む瞳をチラリと確認した。
「……幸子、何かあったの?」
幼馴染みの孤爪はひとつ年下ではあるが、昔からよく相談相手になってくれた。
そんな孤爪に指摘された為か、幸子の涙は引っ込む処か逆に表に出てこようとして。
「研磨、私…悔しいよ。みんな全国目指してたくさん練習重ねてきたのに。あんなに……頑張ってきたのに」
重ねてきた練習がムダになったとは一切思わない。
東京都ベスト8のみんなを誇りに思う。
だが、その血の滲むような努力が目標を叶える前に潰(つい)えてしまったのが単純に悔しい。
悔しくて、苦しい。
マネージャーである幸子は、そんな部員達を一番近くでずっと見てきたから。
「うーん…まあ、そういう時もあるよ。格闘ゲームだって、同じ相手と対戦したって勝つ時も負ける時もあるし」
孤爪が決して自分達が対戦相手に劣っていただなどと思っていないのが嬉しい。幸子は目頭を指先で拭った。
「ごめん…。私、研磨に甘えちゃってるね」
「別にいいけど……でも幸子。それ、俺よりもクロの前で吐き出した方がいいんじゃない」
「…っ。できないよ、そんなの」
首を横に振る。
「だって…きっと鉄朗が一番悔しい思いをしてる」
試合後。消沈する部員達の中で黒尾は誰よりも明るく前向きに振る舞っていた。…本音を隠して。
主将という立場がそうさせているのだろう。
そんな黒尾を前にしてコートに立ってもいない自分が泣き言など言えるはずもない。
「幸子! 研磨!」
不意に背後で聞こえた黒尾の声に会話は自然と中断した。
2人の傍まで足早にやって来た黒尾は妙な空気に一瞬片眉を上げたが、特に追及せず体の前にあった鞄を後ろに追いやった。
「待たせたな。帰るぞ」