初合宿〜マネ編
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なんというタイミングの良さ。…いや、悪いのか。とにかく普段なら幸せすぎてにやけてしまう状況だ。
向こうから缶ジュース片手に歩いてくるのは紛れもなく黒尾であった。
しかも黒尾本人も既に幸子に気づいていて、嬉しそうな笑顔で「おう!」と声をかけてきてくれた。
預かったプリントは既に手汗で軽くふにゃりとしている。幸子は平静を装いつつ黒尾に話しかけた。
「く、黒尾くん」
「……は?」
恋人になる前ですら一度も聞いた事のない呼び方に、黒尾の目が点になる。明らかに不審そうだ。
そんな黒尾の表情と態度に気づかないフリをしながら手にしていたプリントを差し出した。
「これ…直井さんが。黒尾くん、にって」
差し出されたプリントを反射的に受け取った黒尾は、訝しげな目でプリントと幸子を交互に見、それから幸子の斜め後ろ2メートルの位置に立つ2人組を確認した。
暫しの沈黙。
次の瞬間、黒尾は愛想良い笑顔を見せた。
「さんきゅー、木梨。確かに受け取ったぜ」
黒尾はこちらも付き合う以前から聞いた事のない苗字で幸子を呼んできた。
もしかして意図を汲んでくれたのだろうか…?!
あの余所行きの愛想笑いは何か嫌な予感がしたが、今回ばかりはその限りではなかったらしい。
「私もう行くね」
名残惜しいが黒尾との仲を勘繰られない為には仕方ない。くるりと踵を返し、待っていてくれた梟谷マネの元へ歩いて行こうとした幸子を、不意に黒尾が呼び止める。
「あっ、そーいや幸子」
「なあに、鉄朗?」
思わずいつもの調子で振り返ってしまった幸子の視界に飛び込んで来たのは――黒尾の黒い笑み。
だがそれは一瞬の事。
直ぐに申し訳なさそうに顔の前に手を挙げた。
「わりぃわりぃ。俺達が将来を誓いあった恋人同士だって、合宿では秘密にしとくんだったっけか」
「――~ッ?!!」
しまった、これは罠だ!
完全に嵌められた!
窮地を乗りきった事で完全に油断していた。
真っ赤になり絶句する幸子に「バレちまったモンは仕方ねーな」と告げた確信犯は満足そうに去っていった。
黒尾が最初から暴露前提でいたのがよく分かる。
茫然とその背中を見送り、そろりと振り向くと梟谷マネは当然幸子を注目していた。
一部始終を完全に目撃されてる系だ。
「うわぁ、幸子ちゃんの彼氏って黒尾君だったんだね!?」
「将来を誓いあったって…それもうほとんど夫婦じゃ~ん」
「……っ」
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる!
「下手に隠す必要なかったのに。ま、木梨ちゃん素直だから全然隠せてなかったけど~」
「……」
…隠せてなかったらしい。
でもこれで話題の中心から外れる。そう思ったのはやはり甘かった。
「これからたっぷり話して貰おうじゃないの。黒尾君とのこと」
「そうそう。夜は長いもんね~」
ああ、解放される頃には顔の熱でどれくらい湯を沸かせているのだろうか。
向こうから缶ジュース片手に歩いてくるのは紛れもなく黒尾であった。
しかも黒尾本人も既に幸子に気づいていて、嬉しそうな笑顔で「おう!」と声をかけてきてくれた。
預かったプリントは既に手汗で軽くふにゃりとしている。幸子は平静を装いつつ黒尾に話しかけた。
「く、黒尾くん」
「……は?」
恋人になる前ですら一度も聞いた事のない呼び方に、黒尾の目が点になる。明らかに不審そうだ。
そんな黒尾の表情と態度に気づかないフリをしながら手にしていたプリントを差し出した。
「これ…直井さんが。黒尾くん、にって」
差し出されたプリントを反射的に受け取った黒尾は、訝しげな目でプリントと幸子を交互に見、それから幸子の斜め後ろ2メートルの位置に立つ2人組を確認した。
暫しの沈黙。
次の瞬間、黒尾は愛想良い笑顔を見せた。
「さんきゅー、木梨。確かに受け取ったぜ」
黒尾はこちらも付き合う以前から聞いた事のない苗字で幸子を呼んできた。
もしかして意図を汲んでくれたのだろうか…?!
あの余所行きの愛想笑いは何か嫌な予感がしたが、今回ばかりはその限りではなかったらしい。
「私もう行くね」
名残惜しいが黒尾との仲を勘繰られない為には仕方ない。くるりと踵を返し、待っていてくれた梟谷マネの元へ歩いて行こうとした幸子を、不意に黒尾が呼び止める。
「あっ、そーいや幸子」
「なあに、鉄朗?」
思わずいつもの調子で振り返ってしまった幸子の視界に飛び込んで来たのは――黒尾の黒い笑み。
だがそれは一瞬の事。
直ぐに申し訳なさそうに顔の前に手を挙げた。
「わりぃわりぃ。俺達が将来を誓いあった恋人同士だって、合宿では秘密にしとくんだったっけか」
「――~ッ?!!」
しまった、これは罠だ!
完全に嵌められた!
窮地を乗りきった事で完全に油断していた。
真っ赤になり絶句する幸子に「バレちまったモンは仕方ねーな」と告げた確信犯は満足そうに去っていった。
黒尾が最初から暴露前提でいたのがよく分かる。
茫然とその背中を見送り、そろりと振り向くと梟谷マネは当然幸子を注目していた。
一部始終を完全に目撃されてる系だ。
「うわぁ、幸子ちゃんの彼氏って黒尾君だったんだね!?」
「将来を誓いあったって…それもうほとんど夫婦じゃ~ん」
「……っ」
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる!
「下手に隠す必要なかったのに。ま、木梨ちゃん素直だから全然隠せてなかったけど~」
「……」
…隠せてなかったらしい。
でもこれで話題の中心から外れる。そう思ったのはやはり甘かった。
「これからたっぷり話して貰おうじゃないの。黒尾君とのこと」
「そうそう。夜は長いもんね~」
ああ、解放される頃には顔の熱でどれくらい湯を沸かせているのだろうか。