「木梨！」
風呂に行く途中でコーチの直井に出会った。
どうやら猫又を始めとする監督コーチ陣と居酒屋に繰り出す前らしい。
足早に近づいてきた直井は何かのプリントを差し出してきた。
「コレを黒尾に渡しといてくれるか？ 明日の打ち上げに関するものだ」
「はい、分かりました」
「頼んだぞ。俺達は出掛けてくるが…あんまり夜更かししないよう、言っといてくれ」
「分かりました。直井さんも監督が飲みすぎないよう注意して下さいね」
「分かった。…頑張ってみる」
「ふふ。ご苦労さまです。行ってらっしゃい」
直井は足早に去った。
先にプリントを届けてしまおうかと考えながら振り返ると、梟谷マネ２人組と目があった。
どうやら風呂に行くのを待っていてくれたらしい。
「それ、黒尾君に届けるの？」
「うん。そう、だけど」
「じゃあさ、お風呂行く前に届けちゃおうよ～」
心なしか楽しそうにニヤリと笑う白福。
「大丈夫。先にお風呂行っちゃおう。これは後で部屋まで届けてくるから」
誰の目も気にしない所で渡して…ついでにちょっとだけでも黒尾と話したい。
そう思っていたのだが、
「でも…黒尾君来たみたいだよ？」