かけがえのない時間
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待ち遠しい週末はあっという間にやって来た。
土曜日の部活帰り。並んで歩く2人の前方を進む猫背は見間違えるはずもない。
「研磨!」
「……クロと幸子」
ゲーム機を手に振り返った孤爪が、音駒の赤いジャージ姿の2人を認め歩みを止めた。
黒尾と幸子が追いつくと、今度は3人並んで歩き出す。
「研磨が休みの日に外出なんて珍しいね」
「ゲームの発売日だったから…」
ゲーム機にチラリと視線を投げながら孤爪がボソりと応えた。どうやら家に着くまで待ちきれずに新作ゲームを始めてしまったらしい。
「バレー部はどうだ?」
「順調だよ。相変わらず、みんな楽しそうに部活してる」
卒業してまだ半年も経っていないのに、中学の頃の部活動が随分懐かしく感じられる。それ程までに中学と高校では練習の質と目的が違っていた。
「研磨、絶対音駒に来いよ。今度は試合で一人時間差決めるぞ」
「分かってる。だからちゃんと受験勉強してるよ」
中学を卒業する2週間前。
放課後。部活を訪れた黒尾は後輩部員達の前で孤爪と一人時間差を披露した。
幼いあの日。
テレビ観戦して以来見よう見真似で練習していた攻撃技が、とうとう完成したのだ。
立ち合った幸子も言い知れぬ感動に包まれたのをよく覚えている。
「あの時の鉄朗と研磨、すごくかっこよかったな」
ぽそっと呟けば、不意に黒尾の口角が歪んだ。
「あの時だけ? 今は?」
「なっ…?!!」
突然何を言い出すのだ、この男は。
赤面する幸子をニヤニヤと眺めながら黒尾はもう一押し。
「ホラ。答えろ、幸子」
「っ、今も……かっこいい…」
なんという公開罰ゲーム。
幼馴染みの前で恋人をのろけるなんて。…穴があったら入りたい。
満足そうに肩を揺らして笑う黒尾と真っ赤になって俯く幸子を見比べ、孤爪は、はー…と長い溜め息を吐いた。ちょっと呆れたのかもしれない。
「それより研磨、ウチに来ねぇか? 久しぶりに3人で遊ぼーぜ」
「うん、それいいね。研磨もおいでよ」
「……いい、やめとく」
名案と思ったが、孤爪はあっさりと辞退した。
「えーっ、なんで?!」
「このゲーム早くクリアしたいし、それに…クロと幸子の邪魔する気ないから」
「っ?!!!」
その気遣いが嬉しくもあり……だがやはり羞恥の方が何百倍も勝っていた。
土曜日の部活帰り。並んで歩く2人の前方を進む猫背は見間違えるはずもない。
「研磨!」
「……クロと幸子」
ゲーム機を手に振り返った孤爪が、音駒の赤いジャージ姿の2人を認め歩みを止めた。
黒尾と幸子が追いつくと、今度は3人並んで歩き出す。
「研磨が休みの日に外出なんて珍しいね」
「ゲームの発売日だったから…」
ゲーム機にチラリと視線を投げながら孤爪がボソりと応えた。どうやら家に着くまで待ちきれずに新作ゲームを始めてしまったらしい。
「バレー部はどうだ?」
「順調だよ。相変わらず、みんな楽しそうに部活してる」
卒業してまだ半年も経っていないのに、中学の頃の部活動が随分懐かしく感じられる。それ程までに中学と高校では練習の質と目的が違っていた。
「研磨、絶対音駒に来いよ。今度は試合で一人時間差決めるぞ」
「分かってる。だからちゃんと受験勉強してるよ」
中学を卒業する2週間前。
放課後。部活を訪れた黒尾は後輩部員達の前で孤爪と一人時間差を披露した。
幼いあの日。
テレビ観戦して以来見よう見真似で練習していた攻撃技が、とうとう完成したのだ。
立ち合った幸子も言い知れぬ感動に包まれたのをよく覚えている。
「あの時の鉄朗と研磨、すごくかっこよかったな」
ぽそっと呟けば、不意に黒尾の口角が歪んだ。
「あの時だけ? 今は?」
「なっ…?!!」
突然何を言い出すのだ、この男は。
赤面する幸子をニヤニヤと眺めながら黒尾はもう一押し。
「ホラ。答えろ、幸子」
「っ、今も……かっこいい…」
なんという公開罰ゲーム。
幼馴染みの前で恋人をのろけるなんて。…穴があったら入りたい。
満足そうに肩を揺らして笑う黒尾と真っ赤になって俯く幸子を見比べ、孤爪は、はー…と長い溜め息を吐いた。ちょっと呆れたのかもしれない。
「それより研磨、ウチに来ねぇか? 久しぶりに3人で遊ぼーぜ」
「うん、それいいね。研磨もおいでよ」
「……いい、やめとく」
名案と思ったが、孤爪はあっさりと辞退した。
「えーっ、なんで?!」
「このゲーム早くクリアしたいし、それに…クロと幸子の邪魔する気ないから」
「っ?!!!」
その気遣いが嬉しくもあり……だがやはり羞恥の方が何百倍も勝っていた。