恋人‼︎
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幸子が何か隠しているのは明白だった。
長い付き合いだ。彼女の様子がおかしい事くらいすぐに気がつく。…まさか引っ越し話を隠しているとは思いもよらなかったが。
黒尾は目の前で泣きじゃくる幸子を茫然と眺めていた。
(ワケ分かんねえ。宮城ってなんだよ)
起きている事象が晴天の霹靂すぎてうまく処理しきれない。
だが混乱した頭でも、幸子が宮城に行くのを嫌がり自分と一緒に音駒に通いたいと願っているのは理解した。
気づかないフリをしてはぐらかし、曖昧なまま先伸ばしにしていたもの。
――変えるのは今なのかもしれない。
幸子が嗚咽を洩らしたのを合図に黒尾は一歩踏み出した。2人の距離が一気に縮まる。
「幸子―――結婚するぞ」
唐突に発された言葉は、幸子の思考と涙を止めるのに覿面(てきめん)だった。
「あ……っ」
聞こえてきた言葉に耳を疑った。
思わず覆っていた両手を退けて顔を上げれば、思ったよりずっと近くに黒尾の顔があった。
いつになく真剣な、その表情。
「で、でも…私達、まだ15だから…」
「今すぐって訳じゃねぇ。将来的にだ」
動揺しまくった返答をすれば、さすがに恥ずかしかったのか、黒尾は寝癖のついた髪をがしがしと掻いて続けた。
「将来俺達が結婚すんならお前がウチに同居しててもおかしくねぇだろ」
「…えっ?!」
「お前は東京に残ってウチから音駒に通う。俺と一緒に」
「クロ……?!」
「その呼び方もヤメロ。幸子もいずれ「黒尾」になんだからな」
「……っ!?」
心臓の音がドキドキとうるさい。
鏡で確認しなくとも顔は真っ赤だと確信する。まさかこんな展開が待っていようとは。
さっきまで暗闇の中をさ迷っているようだったのに…力強い腕が幸子を陽の下に救い上げてくれた。
「ありがとう。…っ、鉄、朗…っ」
「――~っ」
黒尾が一瞬押し黙った。その頬が僅かに赤い。
その刹那の静寂の後、黒尾は照れたようにまたガシガシとトサカヘッドを掻いた。
「言わせといて何だけどさ、結構破壊力あるな」
「えっ…?!」
「その呼び方」
「――っ?!!」
今度は幸子が頬を染める番だった。
湯気が出るんじゃないかと思うくらい真っ赤な顔を見て黒尾は愉快そうに笑っている。
いつも幸子を安心させてくれる、その笑顔。
「もう泣くな」
「うんっ!」
幼いあの日のように、幸子は大きく頷いた。
長い付き合いだ。彼女の様子がおかしい事くらいすぐに気がつく。…まさか引っ越し話を隠しているとは思いもよらなかったが。
黒尾は目の前で泣きじゃくる幸子を茫然と眺めていた。
(ワケ分かんねえ。宮城ってなんだよ)
起きている事象が晴天の霹靂すぎてうまく処理しきれない。
だが混乱した頭でも、幸子が宮城に行くのを嫌がり自分と一緒に音駒に通いたいと願っているのは理解した。
気づかないフリをしてはぐらかし、曖昧なまま先伸ばしにしていたもの。
――変えるのは今なのかもしれない。
幸子が嗚咽を洩らしたのを合図に黒尾は一歩踏み出した。2人の距離が一気に縮まる。
「幸子―――結婚するぞ」
唐突に発された言葉は、幸子の思考と涙を止めるのに覿面(てきめん)だった。
「あ……っ」
聞こえてきた言葉に耳を疑った。
思わず覆っていた両手を退けて顔を上げれば、思ったよりずっと近くに黒尾の顔があった。
いつになく真剣な、その表情。
「で、でも…私達、まだ15だから…」
「今すぐって訳じゃねぇ。将来的にだ」
動揺しまくった返答をすれば、さすがに恥ずかしかったのか、黒尾は寝癖のついた髪をがしがしと掻いて続けた。
「将来俺達が結婚すんならお前がウチに同居しててもおかしくねぇだろ」
「…えっ?!」
「お前は東京に残ってウチから音駒に通う。俺と一緒に」
「クロ……?!」
「その呼び方もヤメロ。幸子もいずれ「黒尾」になんだからな」
「……っ!?」
心臓の音がドキドキとうるさい。
鏡で確認しなくとも顔は真っ赤だと確信する。まさかこんな展開が待っていようとは。
さっきまで暗闇の中をさ迷っているようだったのに…力強い腕が幸子を陽の下に救い上げてくれた。
「ありがとう。…っ、鉄、朗…っ」
「――~っ」
黒尾が一瞬押し黙った。その頬が僅かに赤い。
その刹那の静寂の後、黒尾は照れたようにまたガシガシとトサカヘッドを掻いた。
「言わせといて何だけどさ、結構破壊力あるな」
「えっ…?!」
「その呼び方」
「――っ?!!」
今度は幸子が頬を染める番だった。
湯気が出るんじゃないかと思うくらい真っ赤な顔を見て黒尾は愉快そうに笑っている。
いつも幸子を安心させてくれる、その笑顔。
「もう泣くな」
「うんっ!」
幼いあの日のように、幸子は大きく頷いた。