恋人‼︎
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黒尾家と木梨家はお向かいさんである。
普段なら自宅に鞄を置きに帰る所だが、なぜか今日に限って黒尾はそれを許さなかった。
自宅に避難させたら何だかんだ理由をつけて幸子が出てこないと直感したのかもしれない。
「今 飲み物と菓子持ってくっから先に部屋行ってろ」
「うん…」
黒尾の祖父母は出掛けているらしく、家の中は静まり返っている。
キッチンに入っていった黒尾を見届け、幸子は階段を上がってよく知る彼の部屋へと向かった。
読みかけの雑誌(月刊バリボー)が無造作に置かれていたり、男子らしく適度に散らかった黒尾の部屋。彼と同じ匂いのする室内はいつだって幸子をとても安心させた。
フローリングの床に転がっていたバレーのボールを手にする。使い込まれたそれは3人でバレーの練習をした時に大活躍したボールだ。
(一人時間差……もうすぐ完成しそうなんだよね)
幼い頃の必殺技特訓が思い出される。
孤爪は面倒だと言いながらもきちんと練習に付き合ってくれていた。
幸子は黒尾と孤爪が練習し易いようにと一生懸命サポートをした。
そんな幼馴染み2人の横で黒尾はいつも笑っていた。
「……っ」
目頭が熱くなる。
ダメだ。離れる覚悟がまだ全然出来てない。
もっと3人でバレーをしたい。春高に行きたい。
冗談を言って思いきり笑いあいたい。それが当たり前な日常生活を送りたい。
黒尾の傍にいたい。
離れるなんて考えられない――!!
「幸子?」
不意に名前を呼ばれ振り返ると、トレーに乗せた飲み物を片手に、もう一方に菓子袋を抱えた黒尾が戸口に立っていた。
黒尾は戸惑った様子で幸子の濡れた頬を見つめている。
「お前……なんで泣いてんだよ?!」
「………ないの」
「…は?」
「音駒に…っ、行け、ない……のっ」
幸子はもう涙を堪えきれずにしゃくりあげながらそう言った。
理由は分からないが深刻な事態だと察した黒尾は、勉強机にトレーと菓子袋を置いて幸子と向かい合う。
「行けないって、合格したろ? 一緒に合格発表見に行ったじゃねえか」
幸子はヒクッとしゃくりあげた。
「ひ、引っ越すの…っ、私……み、宮城、に」
「なんだよ、それ?!」
「烏野に、か、通うんだって…、私……っ」
「?!!」
「私、ここに残りたい。宮城なんて行きたくない!クロと一緒に音駒に通いたいよ!」
目を見開いた黒尾の前で感情を吐露するように、幸子は両手で顔を覆いながら声をあげて泣いた。
普段なら自宅に鞄を置きに帰る所だが、なぜか今日に限って黒尾はそれを許さなかった。
自宅に避難させたら何だかんだ理由をつけて幸子が出てこないと直感したのかもしれない。
「今 飲み物と菓子持ってくっから先に部屋行ってろ」
「うん…」
黒尾の祖父母は出掛けているらしく、家の中は静まり返っている。
キッチンに入っていった黒尾を見届け、幸子は階段を上がってよく知る彼の部屋へと向かった。
読みかけの雑誌(月刊バリボー)が無造作に置かれていたり、男子らしく適度に散らかった黒尾の部屋。彼と同じ匂いのする室内はいつだって幸子をとても安心させた。
フローリングの床に転がっていたバレーのボールを手にする。使い込まれたそれは3人でバレーの練習をした時に大活躍したボールだ。
(一人時間差……もうすぐ完成しそうなんだよね)
幼い頃の必殺技特訓が思い出される。
孤爪は面倒だと言いながらもきちんと練習に付き合ってくれていた。
幸子は黒尾と孤爪が練習し易いようにと一生懸命サポートをした。
そんな幼馴染み2人の横で黒尾はいつも笑っていた。
「……っ」
目頭が熱くなる。
ダメだ。離れる覚悟がまだ全然出来てない。
もっと3人でバレーをしたい。春高に行きたい。
冗談を言って思いきり笑いあいたい。それが当たり前な日常生活を送りたい。
黒尾の傍にいたい。
離れるなんて考えられない――!!
「幸子?」
不意に名前を呼ばれ振り返ると、トレーに乗せた飲み物を片手に、もう一方に菓子袋を抱えた黒尾が戸口に立っていた。
黒尾は戸惑った様子で幸子の濡れた頬を見つめている。
「お前……なんで泣いてんだよ?!」
「………ないの」
「…は?」
「音駒に…っ、行け、ない……のっ」
幸子はもう涙を堪えきれずにしゃくりあげながらそう言った。
理由は分からないが深刻な事態だと察した黒尾は、勉強机にトレーと菓子袋を置いて幸子と向かい合う。
「行けないって、合格したろ? 一緒に合格発表見に行ったじゃねえか」
幸子はヒクッとしゃくりあげた。
「ひ、引っ越すの…っ、私……み、宮城、に」
「なんだよ、それ?!」
「烏野に、か、通うんだって…、私……っ」
「?!!」
「私、ここに残りたい。宮城なんて行きたくない!クロと一緒に音駒に通いたいよ!」
目を見開いた黒尾の前で感情を吐露するように、幸子は両手で顔を覆いながら声をあげて泣いた。