恋人‼︎
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同日。幸子は母親に連れられ宮城県に来ていた。
目的は引っ越し先の物件探しだ。
目ぼしい物件を不動産屋と何軒か回った後、幸子は母親に勧められ一人学校見学へ向かった。
宮城県立烏野高校。
それが幸子の転校予定の高校だ。
引っ越しや転校に納得した訳ではないが、幸子の意思とは関係ない所で話はどんどん進んでいる。
(クロ…助けて……!!)
このまま流されてしまうのかという恐怖と不安。それに寂しさ。
何とも言えぬ気持ちが混ざり合い、麻のように乱れた幸子の心は悲鳴を上げていた。
「すみません!」
校舎周りをうろつき そろそろ宿泊先のホテルに帰ろうと校門を出た所で背後からかけられた声。振り返ると同時にボールがトンと足下にあたった。
拾い上げるとそれは――馴染みあるボール。
「怪我ありませんか?」
近づいてくる声の方を見れば、ジャージ姿の黒短髪の男子がこちらへ走ってくる所であった。
同い年くらい…だろうか。
「怪我、してません」
「良かった。ボールありがとうございます」
ボールを手渡しながら思わず開いた口。
「ボール…」
「えっ?」
「…バレーの」
「ああ、これですか」
抱えたボールを手のひらに乗せ高々と掲げる男子。
「もしかしてバレーやってるんですか?」
「ヘタクソだから選手じゃありません。でもバレーボールは好きだからマネージャーをしてます」
黒尾が示してくれた道。
「技術は関係ないでしょ。バレー好きならそれだけで選手の資格は充分あると思うけど」
「ふふ…ありがとうございます。でも私、サポート出来るの嬉しいんです。だからマネージャー業務って割りと好きで、楽しくやらせてもらってます」
「縁の下の力持ちってヤツだな」
ニカッと笑う温かい笑顔に釣られて幸子の顔にも自然と笑顔が広がった。
こうして笑うの…なんだか久しぶりに感じる。
「ここから出てきたって事は、高校生?」
「違います。見学に来ただけ。4月から高校生」
「じゃ、俺と同じだな」
同い年と知ってか、男子の口調が打ち解けたようなそれに変化した。
「烏野入るの?」
「あっ、えっと…」
「俺はね、4月から烏野に入学するんだ。君も烏野なら一緒にバレー出来るな」
「――?!!」
途端に脳裏に浮かぶ姿と声。
『幸子。また一緒にバレーできるな』
黒尾は……幸子と一緒にバレーする事を望んでくれている。やっぱり私は――。
「実は東京から来たの」
「そうだったのか。東京のなんて――」
「澤村!」
続けようとした言葉は彼の友人に遮られた。
澤村と呼ばれた男子は友人を「池尻」と呼び軽く手を挙げ応え、幸子を振り返った。
「もう行かないと。君も気をつけて帰ってくれよ」
「ありがとう」
「高校でもバレー部に入部する?」
「うん、そのつもりだよ」
「じゃあさ、また全国大会で逢えるな」
「ふふ、そうだね。楽しみにしてる」
友人の元に駆けていく澤村に手を振り、幸子は歩き出した。
気持ちの良い男子だ。バレー部でもきっと重要なポジションを担っているのだろう。
チームの要。
それはまるで――‥
(やっぱり私――クロと一緒に音駒に行きたい!)
今度澤村と逢う時には自分は音駒のマネージャーとして全国に行きたいと――そう強く願った。
目的は引っ越し先の物件探しだ。
目ぼしい物件を不動産屋と何軒か回った後、幸子は母親に勧められ一人学校見学へ向かった。
宮城県立烏野高校。
それが幸子の転校予定の高校だ。
引っ越しや転校に納得した訳ではないが、幸子の意思とは関係ない所で話はどんどん進んでいる。
(クロ…助けて……!!)
このまま流されてしまうのかという恐怖と不安。それに寂しさ。
何とも言えぬ気持ちが混ざり合い、麻のように乱れた幸子の心は悲鳴を上げていた。
「すみません!」
校舎周りをうろつき そろそろ宿泊先のホテルに帰ろうと校門を出た所で背後からかけられた声。振り返ると同時にボールがトンと足下にあたった。
拾い上げるとそれは――馴染みあるボール。
「怪我ありませんか?」
近づいてくる声の方を見れば、ジャージ姿の黒短髪の男子がこちらへ走ってくる所であった。
同い年くらい…だろうか。
「怪我、してません」
「良かった。ボールありがとうございます」
ボールを手渡しながら思わず開いた口。
「ボール…」
「えっ?」
「…バレーの」
「ああ、これですか」
抱えたボールを手のひらに乗せ高々と掲げる男子。
「もしかしてバレーやってるんですか?」
「ヘタクソだから選手じゃありません。でもバレーボールは好きだからマネージャーをしてます」
黒尾が示してくれた道。
「技術は関係ないでしょ。バレー好きならそれだけで選手の資格は充分あると思うけど」
「ふふ…ありがとうございます。でも私、サポート出来るの嬉しいんです。だからマネージャー業務って割りと好きで、楽しくやらせてもらってます」
「縁の下の力持ちってヤツだな」
ニカッと笑う温かい笑顔に釣られて幸子の顔にも自然と笑顔が広がった。
こうして笑うの…なんだか久しぶりに感じる。
「ここから出てきたって事は、高校生?」
「違います。見学に来ただけ。4月から高校生」
「じゃ、俺と同じだな」
同い年と知ってか、男子の口調が打ち解けたようなそれに変化した。
「烏野入るの?」
「あっ、えっと…」
「俺はね、4月から烏野に入学するんだ。君も烏野なら一緒にバレー出来るな」
「――?!!」
途端に脳裏に浮かぶ姿と声。
『幸子。また一緒にバレーできるな』
黒尾は……幸子と一緒にバレーする事を望んでくれている。やっぱり私は――。
「実は東京から来たの」
「そうだったのか。東京のなんて――」
「澤村!」
続けようとした言葉は彼の友人に遮られた。
澤村と呼ばれた男子は友人を「池尻」と呼び軽く手を挙げ応え、幸子を振り返った。
「もう行かないと。君も気をつけて帰ってくれよ」
「ありがとう」
「高校でもバレー部に入部する?」
「うん、そのつもりだよ」
「じゃあさ、また全国大会で逢えるな」
「ふふ、そうだね。楽しみにしてる」
友人の元に駆けていく澤村に手を振り、幸子は歩き出した。
気持ちの良い男子だ。バレー部でもきっと重要なポジションを担っているのだろう。
チームの要。
それはまるで――‥
(やっぱり私――クロと一緒に音駒に行きたい!)
今度澤村と逢う時には自分は音駒のマネージャーとして全国に行きたいと――そう強く願った。