夏合宿‼︎ 1日目 夜
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校舎を出た幸子は自主練習が出来そうな場所を探しながら歩いていた。手に抱えているのは第3体育館前に転がっていたボール。
(私も頑張らなくちゃ)
バレー部マネージャーでありながら幸子はバレーボールが致命的に下手だ。
しかし3年生に進級してからは少しでも上達して黒尾と弧爪を驚かせようと、灰羽、犬岡、芝山といった1年生達と密かに自主練習を開始していた。
そしていつか…部員の皆と共に試合前の黒尾の気合い入れをやりたい。
――それが幸子の密かな夢だった。
「ここでいいかな」
体育館裏に辿り着いた幸子は持っていたボールを壁に向かって投げる。
ポーンと跳ね返ってきたボールをオーバーハンドでまた壁へ。それを繰り返していく。自分で言うのも何だが、大分上達した。
「(私がちゃんとボール返せるようになってたら、鉄朗驚くよね)……あっ!!」
その時の黒尾を想像して思わずニヤけた為か、手元が狂ってしまった。
ボールは壁には返らずに幸子の後方へと飛んでいってしまう。
「おっと!」
ボールの行方を追おうと慌てて振り返ると、ちょうど声と共にボールがキャッチされた所だった。
「さ、澤村くん?!」
「大丈夫?」
ボールをキャッチしてくれたのは烏野の主将である澤村であった。サポーターやタオルを持っている所を見ると、自主練習上がりなのだろう。
「はい、ボール」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「自主練終わり?」
「そう。ちょうど第1体育館でね」
ボールを受け取りながら幸子が尋ねると、頷いた澤村が壁を指した。
どうやら幸子が自主練習場所に定めたところは、第1体育館裏だったらしい。
「木梨さんは?」
「私も自主練。ちょっとでもバレーボールが上手くなりたくて」
幸子は悪戯っぽい笑顔を見せた。
「そういえばバレーボール下手って話してたっけ」
「あははっ、そうなの。澤村くん、よく覚えてたね」
高校に上がる前の、まだ互いに名前も知らない時に交わした会話を覚えてくれているなんて、なんだか嬉しい。
「木梨さんさ、練習なら体育館使えば?」
「それは悪いよ。私、選手じゃないもん」
「マネージャーだって立派に部員なんだから、体育館使う権利なんていくらでもあると思うよ。それに…ここは暗いし女子が夜中に一人で自主練する場所として適してるとは思えないけど」
おそらく幸子の身を心配してくれているのだろう。その気持ちが有難い。
「ありがとう。でもね、ここでいいんだ。秘密特訓だから」
「秘密特訓?」
「そっ、秘密特訓」
澤村は悪戯っぽく笑った幸子に対し一瞬考えるような素振りを見せたが、
「じゃあさ、合宿中は俺も秘密特訓に付き合っていいかな」
「えっ、そんなの悪いよ。澤村くんだって自分の練習あるのに…」
「30分だけ。それならお互い負担にならないでしょ」
その好意をこれ以上断わる理由もなかった。
幸子が頷いて了承すると、澤村は手に持っていた荷物を下ろした。
「澤村くん…?」
「練習、今日の分をしないとな」
「!……お願いしますっ」
秘密特訓開始だ。
(私も頑張らなくちゃ)
バレー部マネージャーでありながら幸子はバレーボールが致命的に下手だ。
しかし3年生に進級してからは少しでも上達して黒尾と弧爪を驚かせようと、灰羽、犬岡、芝山といった1年生達と密かに自主練習を開始していた。
そしていつか…部員の皆と共に試合前の黒尾の気合い入れをやりたい。
――それが幸子の密かな夢だった。
「ここでいいかな」
体育館裏に辿り着いた幸子は持っていたボールを壁に向かって投げる。
ポーンと跳ね返ってきたボールをオーバーハンドでまた壁へ。それを繰り返していく。自分で言うのも何だが、大分上達した。
「(私がちゃんとボール返せるようになってたら、鉄朗驚くよね)……あっ!!」
その時の黒尾を想像して思わずニヤけた為か、手元が狂ってしまった。
ボールは壁には返らずに幸子の後方へと飛んでいってしまう。
「おっと!」
ボールの行方を追おうと慌てて振り返ると、ちょうど声と共にボールがキャッチされた所だった。
「さ、澤村くん?!」
「大丈夫?」
ボールをキャッチしてくれたのは烏野の主将である澤村であった。サポーターやタオルを持っている所を見ると、自主練習上がりなのだろう。
「はい、ボール」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「自主練終わり?」
「そう。ちょうど第1体育館でね」
ボールを受け取りながら幸子が尋ねると、頷いた澤村が壁を指した。
どうやら幸子が自主練習場所に定めたところは、第1体育館裏だったらしい。
「木梨さんは?」
「私も自主練。ちょっとでもバレーボールが上手くなりたくて」
幸子は悪戯っぽい笑顔を見せた。
「そういえばバレーボール下手って話してたっけ」
「あははっ、そうなの。澤村くん、よく覚えてたね」
高校に上がる前の、まだ互いに名前も知らない時に交わした会話を覚えてくれているなんて、なんだか嬉しい。
「木梨さんさ、練習なら体育館使えば?」
「それは悪いよ。私、選手じゃないもん」
「マネージャーだって立派に部員なんだから、体育館使う権利なんていくらでもあると思うよ。それに…ここは暗いし女子が夜中に一人で自主練する場所として適してるとは思えないけど」
おそらく幸子の身を心配してくれているのだろう。その気持ちが有難い。
「ありがとう。でもね、ここでいいんだ。秘密特訓だから」
「秘密特訓?」
「そっ、秘密特訓」
澤村は悪戯っぽく笑った幸子に対し一瞬考えるような素振りを見せたが、
「じゃあさ、合宿中は俺も秘密特訓に付き合っていいかな」
「えっ、そんなの悪いよ。澤村くんだって自分の練習あるのに…」
「30分だけ。それならお互い負担にならないでしょ」
その好意をこれ以上断わる理由もなかった。
幸子が頷いて了承すると、澤村は手に持っていた荷物を下ろした。
「澤村くん…?」
「練習、今日の分をしないとな」
「!……お願いしますっ」
秘密特訓開始だ。